◆桜井啓太・立命館大学准教授(社会福祉学)「生活

保護費は1カ月分を前渡しするのが基本で、福祉事務所には満額を支給せずに翌月以降も預かるという法的根拠もなく、極めて不適切だ。桐生市は、“決定された保護費は本人のものである”という原則を、勘違いしていないか。男性に指導として家計簿を付けさせたことも問題で、生活保護法は“指導を必要最小限にする”と定めており、保護費支給と引き換えに強制できるようなものではない」


安倍晋三政権以降、生活保護や障害年金等の公的扶助に対して、「税金をタダで受け取るのはけしからん」的な論調がSNSを中心に隆盛となっています。それを煽るように、行政も法的な規定も根拠も無いまま支給基準を厳しくしたり、規制をかけたりする事例が多く見られるようになりました。

世界的に見ても、「国家」を強調する人たちは、彼らがあくまでも主観的に「国家の役に立たない≒国家のために働けない(働こうとしない)」と判断した人間は必要ないものたから、「国家の害悪」として排除することが正義だと考えるようです。

でも、近代民主国家は「みんなが互いに支え合い、共によりよい社会をつくっていくため、(その費用を)広く公平に分かち合う」ために、納税の義務を課しているのであり、「(社会的な)公平」と言う以上、より社会的弱者に手厚くなるのは当然なのです。

誰だって病気や怪我、さらに社会的要因等…倒産や失業、株の失敗だってあります…によって、公的扶助が必要な状況に追い込まれてもおかしくないですよね。

不正受給等の犯罪を許してはいけませんが、不当に攻撃することを許してはいけませんよね。もう一度、税について考えてみましょう🙇


『…新たに判明した男性は病気で就労困難となり、5月26日に月額約7万1000円の支給が決まった。しかし、桐生市は金銭管理のため家計簿を付けるよう指導した上で、支給は週に1回1万円程度。6月は約3万1000円、8月は4万1000円など決定額の半分程度にとどまった。…分割支給の根拠をただすと、桐生市は「金銭管理能力が不十分と判断し、口頭で同意を得て分割した」という趣旨の説明をしたという。11月に未払いだった約9万3000円が一括支給された。

 …群馬県は、最初の事例について不適切との見解を示し、桐生市へ改善を求めた。桐生市の福祉課長は、「個別の事情に応じ本人の同意を得て分割支給し、残額を預かる場合もある。県の指摘は真摯(しんし)に受け止める」とコメントした。…』(本文より)



https://www.tokyo-np.co.jp/article/292964?s=09