雑誌記者が小走りに追ってくる。
「ヤマザキさん、ニコさんがこの後お食事でもと」
「先約がありますので」
トオルはホテルの前で客待ちしていたタクシーに乗り込んだ。
「青山まで」
時計を見た。まだ時間がありすぎる。おまけに約束の相手は、いつも遅れて来るのだ。
「お客さん、チョコレート買ったの」
ちゅうねんの運転手が話しかけてくる。
「女の子が用意するんじゃないの」
明日はバレンタインだ。
「最近は逆チョコっていって、男も送らないといけないんだって、うちのカミさんが言うんだけど本当かね」
バカバカしい。菓子屋の陰謀もここまで来るとやり過ぎだ。
「ここでいいよ」
青山のどこかと聞く運転手を振り切って、トオルはタクシーを降りた。風が冷たい。
 
 抱えていたコートを着こむと、目の前の店のショーケースにバレンタイン用のチョコレートがディスプレイされているのが見えた。
(逆チョコね)
店内に入り、チョコレートの箱を取った。
(安く済むか。誕生祝いにしては)
バレンタインの前日が誕生日とは気の毒に。いつもチョコレートで済まされてきたに違いない。それでも喜ぶのだろう。小犬みたいにしっぽ振って。
 
 特設コーナーにたむろしていた女子高生がチラ見する。
「男の人なのにチョコ」
「逆チョコじゃないの」
「あの顔は絶対コレよ」
「さすが腐女子」
お前ら、声でけーよ。田舎で両親と暮らす妹もあのくらいか。何年も会っていないけれど。
 
 会計を済ませて店を後にする。
(ごめん、遅くなって。お詫びにごちそうするよ)
いつもその手だ。自分の誕生日だってのに。道を歩いていると、紙のような雪がかすかに舞ってきた。
 
 
 時期を逸してしまいました。こういうショートショート(か?)をイベントに合わせて投稿できれば一人前(何が)なのですが、終わってから思いつくところはまだまだです。このシリーズのお話はテーマ「妄想」 からどうぞ。
 
 
 2月23日の記事。4月から稼働の、アメブロ新ジャンル予約登録が今日から始まりました。どんなのがあるんだろうと楽しみにしておったのですが、にほんブログ村の真似でした。(断言)