イブの夜なんてコンビニ客も少ないだろうと思ったらそうでもなかった。毎日お弁当を買いに来る人が、恥ずかしそうにプチケーキを1個、添えていく。そんなイベントと関係なく暮らしている人だって多いのだ。ミユキもその1人だった。
「イブなのにバイト、大変だね」「彼氏は怒らない」
と話しかけてくる人もいる。
「いいえ、そんな人いませんから」
自由時間はほとんどバイトに費やし、サークルにも入っていないから、大学にもあまり親しい友達がいなかった。
この日は他のバイトもあまりシフトに入りたがらないので夜11時までは店長とその奥さんの3人だ。店長は店の前で、サンタクロースの格好をしてケーキを売っている。
夜10時を回り、その日最後の入れ替えの商品が搬入されてきた。店長の奥さんは商品の陳列を始め、ミユキはレジに1人残った。
カウンター裏にケーキの予約票が数枚貼ってある。その中の1人の名は、ヤマザキトオル。昨日受け取りに来る予定だったが、今日になっても来ない。クリスマスケーキは24日の12時を過ぎると価値が半減する。来てくれると思うけど、頼んで予約してもらったようなものだし、今夜はパーティで来たくても来れないかも知れない。
(いつもなら今頃の時間)
顔を上げると入り口の自動ドアが開いた。あの人だ。いつも高そうなコートを着ているのですぐわかる。
「ヤマザキ様、お待ちしていました」
コートの肩で、白いものがうっすら溶けかけている。雪が降り始めたのか。ホワイトクリスマスだ。
「ごめん、遅くなって」
ケーキの赤い箱を奥から持ってくると
「こんなに食べられないな。半分食べてくれない」
と言われた。
「えええ、ろろらろろ」
興奮のあまり呂律が回らない。それはすなわち
「今夜2人だけでクリスマスパーティをしよう」
という意味ではないか。
「あ、あの、バイト11時までで」
「じゃあそれまでにまた来るよ」
まずい、それはまずい、どう見たってこの人遊んでいる風だし、そんなふしだら(死語)な娘に育てた覚えはない、と両親は嘆くに違いない。
トオルと入れ違いに、酔っ払ったカップルが入ってきた。ビール2缶と「お泊り缶」を買って行った。ミユキは隙を見て、自分のためにも「お泊り缶」を買った。今日のためではない、何かの時に必要になるかも知れないし、終電に乗り遅れて友達の家に泊まるとか、女の友達だってば。誰も聞いていないのに、ミユキは妄想の中で言い訳した。30分ほどしてトオルが戻ってきた。
「お待たせ、これ」
先ほど渡した赤い箱が目の前に置かれた。
「半分切ってきたから」
あっそ。そりゃそうよね。
「メリークリスマス」
見た目に似合わずとぼけた男。
「メリークリスマス」
ミユキは精一杯の愛想笑いをした。
ミユキは知らなかった。コンビニの外にはハヤミの乗った高級車が待っていたことを。
(すげえ、外車かな)
サンタ姿の店長は、店内から出てきた男が乗りこみ、去って行くのを見送った。
お泊り缶て昔なかったでしたっけ。検索しても出てこなかったのですが、私の妄想もしくは聞き間違いでしょうか。なお、私はクリスマスイブのコンビニの様子やバイトのシフト状況、商品搬入の時間帯について全く知識がないので実態と著しく異なっているかも知れませんが、ただの妄想なので指摘しないで下さい。
このシリーズのお話はテーマ「妄想」 からどうぞ。
12月21日の記事。イブに近所のコンビニに偵察に行ったら、男子しかいませんでした。
「イブなのにバイト、大変だね」「彼氏は怒らない」
と話しかけてくる人もいる。
「いいえ、そんな人いませんから」
自由時間はほとんどバイトに費やし、サークルにも入っていないから、大学にもあまり親しい友達がいなかった。
この日は他のバイトもあまりシフトに入りたがらないので夜11時までは店長とその奥さんの3人だ。店長は店の前で、サンタクロースの格好をしてケーキを売っている。
夜10時を回り、その日最後の入れ替えの商品が搬入されてきた。店長の奥さんは商品の陳列を始め、ミユキはレジに1人残った。
カウンター裏にケーキの予約票が数枚貼ってある。その中の1人の名は、ヤマザキトオル。昨日受け取りに来る予定だったが、今日になっても来ない。クリスマスケーキは24日の12時を過ぎると価値が半減する。来てくれると思うけど、頼んで予約してもらったようなものだし、今夜はパーティで来たくても来れないかも知れない。
(いつもなら今頃の時間)
顔を上げると入り口の自動ドアが開いた。あの人だ。いつも高そうなコートを着ているのですぐわかる。
「ヤマザキ様、お待ちしていました」
コートの肩で、白いものがうっすら溶けかけている。雪が降り始めたのか。ホワイトクリスマスだ。
「ごめん、遅くなって」
ケーキの赤い箱を奥から持ってくると
「こんなに食べられないな。半分食べてくれない」
と言われた。
「えええ、ろろらろろ」
興奮のあまり呂律が回らない。それはすなわち
「今夜2人だけでクリスマスパーティをしよう」
という意味ではないか。
「あ、あの、バイト11時までで」
「じゃあそれまでにまた来るよ」
まずい、それはまずい、どう見たってこの人遊んでいる風だし、そんなふしだら(死語)な娘に育てた覚えはない、と両親は嘆くに違いない。
トオルと入れ違いに、酔っ払ったカップルが入ってきた。ビール2缶と「お泊り缶」を買って行った。ミユキは隙を見て、自分のためにも「お泊り缶」を買った。今日のためではない、何かの時に必要になるかも知れないし、終電に乗り遅れて友達の家に泊まるとか、女の友達だってば。誰も聞いていないのに、ミユキは妄想の中で言い訳した。30分ほどしてトオルが戻ってきた。
「お待たせ、これ」
先ほど渡した赤い箱が目の前に置かれた。
「半分切ってきたから」
あっそ。そりゃそうよね。
「メリークリスマス」
見た目に似合わずとぼけた男。
「メリークリスマス」
ミユキは精一杯の愛想笑いをした。
ミユキは知らなかった。コンビニの外にはハヤミの乗った高級車が待っていたことを。
(すげえ、外車かな)
サンタ姿の店長は、店内から出てきた男が乗りこみ、去って行くのを見送った。
お泊り缶て昔なかったでしたっけ。検索しても出てこなかったのですが、私の妄想もしくは聞き間違いでしょうか。なお、私はクリスマスイブのコンビニの様子やバイトのシフト状況、商品搬入の時間帯について全く知識がないので実態と著しく異なっているかも知れませんが、ただの妄想なので指摘しないで下さい。
このシリーズのお話はテーマ「妄想」 からどうぞ。
12月21日の記事。イブに近所のコンビニに偵察に行ったら、男子しかいませんでした。