通勤電車のつり革につかまってウトウトしていたのに、目の前の光景に一気に目が覚めました。20代サラリーマン風の男性が、指しゃぶりをしています。5本の指を丁寧になめ終わると、ハンカチでふいてまたやり直しています。こういう時は
「人前で指しゃぶりをしてはいけませんよ」
と注意するのではなく、逃げるのです。
 しかし満員電車の中、思うように動きが取れません。もしこの指しゃぶり男が先に降りることになって、その弾みに自分か自分のバッグにあの指が触れたらと思うと恐ろしく、私が先でありますようにと祈ります。
 この人、会社でも指をしゃぶっているのだろうか、いや、会社ではしないかも、逆に会社のあの人やこの人が電車の中では指をしゃぶっていたりしないだろうなと恐ろしい妄想が渦を巻きます。
 
 昔、会社のおじさんに、指しゃぶりではありませんが、書類をめくる時指をなめる人がいました。それがくせになっているのか、書類などを見ている間ずっと舌を出して豪快にペロペロなめていました。
 電車の指しゃぶり男からは逃げられても会社の人からは逃げられません。その人が散々なめた指で扱った書類を受け取るのも、同じ電話機やパソコンを使うのも嫌でした。
 とうとうその人の上司に頼んで注意してもらいましたが、その人との人間関係は悪くなりました。その上司も私の言い分はわかってくれましたが
「でも年取るとそうなるんだよね」
とやや同情的でした。
 

 当時は死ぬほど気持ち悪くて当然の要求だと思っていましたが、これももしかしたら私に寛容さが足りなかったのかと思い返します。
 気が利かないことなんかよりはるかに犯罪的に見えますが、こういう人たちは案外
「遠い世界にいる人」
ということで許されてしまうのかも知れません。
 
 
 11月6日の記事。Yahooブログでは異文化コミュニケーション論で盛り上がっています。そのうちこちらにも写すことになろうと思いますが、こういう対話ができる人たちとめぐり会えてとてもうれしいです。しかし心の狭い私は指なめおじさんを受容できないのでした。