マイコは若干の後悔と、あふれる好奇心を抑えながらイズミと共に、先ほどハヤミを追いかけた通りに入った。
 目立つネオン。名刺を頼りに勇気を出して入って行った。
「いらっしゃいませ」
子供のようなウェイターが深々とお辞儀する。
「ご指名ございますか」
「キョウジさん」
マイコは名刺を棒読みした。
「少々お待ち下さい」
ウェイターは奥に引っこんだ。
 
 入り口のところにホストの写真が名前入りでずらっと並んでいる。ハヤミはこの中にいるのだろうか。いかにもプロが照明をあてて取った写真で、よくわからない。
「来てくれてうれしいよ」
名刺の男が現れた。店内の客の数はまばらだった。この時間帯だとこの店ではまだ早いのかも知れない。
「お友達も一緒か。もう1人呼ぼうか」
「私この子の付き添いなので、見ているだけで結構です」
イズミはきっぱり言った。自分だってノリノリだったくせに、とマイコは少々不満だった。
「お金あまりないんですけど」
「ご予算は」
「万まではいかないくらい」
これは追い出されるだろうか。
「いいよ。カウンターでいいかな。但し1時間」
キョウジは2人をカウンター席に案内した。
 
 マイコを挟む形で、イズミとキョウジが座った。通りかかったボックス席では30歳くらいの女性がホストとベタベタくっついている。
「この仕事始めたばっかりでまだ全然指名の客いないんだよね」
「もしかして新卒?」
「そう。今年大学を卒業したばかりで、仕事にあぶれたクチ」
「私たちもこの春卒業したばかりなの」
「じゃあ同級生だ。就職成功したの。優秀なんだね」
カシャ。と後ろで音がした。イズミが携帯で店内の写真を取っていた。
「写真はやめて。プライバシーの問題もあるから」
キョウジは遠慮がちに注意した。
「あら、ごめんなさい」
イズミは携帯を持ち替えた。
「私はメールしているから、遠慮なくおしゃべりしていてね」
と言ってイズミは本当にメールを始めた。
 
 同年齢ということで、主に就職活動の話で盛り上がった。こういう商売の人なんだからと思っても、キョウジの話は面白かった。会社名を聞かれたが、さすがに言えなかった。まだ姿を見ていないが、ハヤミがキョウジの同僚だとしたら、昼間の勤務先も知っているかも知れない。
 店内のBGMが変わった。照明に動きが出てきて、数組のホストと女性客がボックス席から出てフロアに立った。時計は午後9時。
「ダンスの時間だ。踊らない」
キョウジはマイコをフロアに誘った。
「1時間経った。帰ろう」
イズミが声をかけた。
「もう5千円で延長できるよ」
キョウジは営業をしかけてきたが、イズミは
「帰るよ」
を繰り返した。
 
 店内は混み始めていた。マイコが席を立つと、後ろのボックス席にいた女性の前に、ひときわ目立つ青年が立っていた。
「遅いわよ、ナンバー1」
「申し訳ございません」
マイコはその姿に釘づけになった。
(ハヤミさん)
ミツケタ。やっと見つけた。
「ねえ、あの人」
マイコはキョウジの方を向いた。
「うちの裏ナンバー1のしげるさん」
「裏って、入り口の写真の中にはいなかったわよね」
「新規の客は基本取らない人なんだ。指名料高いし予約でいっぱいだからやめておいた方がいいよ」
「行くよ」
イズミが先に出口に向かった。マイコはバッグを取ってその後を追った。
 
 
 上記の料金システムや店内風景は私が適当に考えたので、実態と著しく違っていても指摘しないで下さい。全て妄想です。月1回のはずが隔週になっていてまずい。で、本日の人生の選択。
1 今日のところは帰る
2 延長してハヤミを指名しツケまみれ
3 カウンターの隅で別な男が飲んでいる。その正体は・・・
4 ハヤミの客がミカ
 
 
 6月16日の記事。なげー。隔週になっていてまずい、と書いてありますが、既に平気で毎週書いていました。まずいです。毎日にならないよう気をつけないと。