寒くなってきた。あれから何時間経っただろうか。
「ただいま」
マンションの玄関から親しげに入ってくる黒髪の女に、男は鎖で手足をつながれている。男は、元カリスマデザイナー、現在は公安の秘密組織SATの調査員、ヤマザキトオル。
「さみしかった? かわいい子犬ちゃん」
女はマユミ。巨大売春組織の幹部と言われているが、正体は不明だった。マユミという名も本名ではないだろう。
「最初はマスコミ関係者かと思ったけど、違うみたいね。警察?」
トオルは返事をしなかった。マユミはヒーターのスイッチを入れた。
「自分がどうなるか知りたいでしょう。社長とまだ連絡取れなくて決まらないのよ。ごめんね」
「あんただまされているよ」
「だまされている、私が、社長にってこと?」
「そうだよ。あいつはあんたたちを見捨てて逃走したんだ」
「そう」
トオルをじっと見て、マユミはくすっと笑った。強がりか、それともこちらの心理作戦などお見通しということか。
「ちょっと早いけど、クリスマスケーキ買ってきたわ。食べない」
マユミはコンビニの袋から箱を取り出した。この女も、逮捕されたら罪に問われるのか。
「コンビニのか」
「ご不満?」
「随分昔、コンビニで買ったよ。クリスマスケーキ。いつも行くコンビニの女の子が勧めてくれて、きっとノルマがあるんだろうなと思ったら断われなかった。俺独り者だってのにホールで買って、どうしようかと思ったよ」
マユミは目の前でケーキを切り分けた。添えられたのはスプーン。フォークだと武器になるからか。さすがに心得ている。しかしこの重い鎖をつけられていてはそうそう自由に腕も上がらない。
「あなたその子にだまされたのよ。ノルマのためにね」
「お前らと一緒にするな」
「私たちがしていることと何が違うの。喜んでもらって、お金をもらって」
何か言ってやろうとして、トオルはぎょっとした。マユミが泣いている。大粒の涙をこぼしている。
「ありがとう、覚えていてくれて」
「あんた」
「メリークリスマス」
「メリークリスマス」
窓の外には雪が降り始めていた。

 

 

 12月1日の記事。筆力がないために飛びます。しかも恥ずかちい。カッタウェイさんごめんなさい、私の趣味で縛ってしまったばかりに、この後緊縛プレイキャラになってしまうとは。この時は最後マユミさんに最後死んでもらう構想でしたが、コメント欄の声にコロコロ設定を変えてしまいました。別に設定に固執なかったし。