「これ、プライベートの携帯番号なんだけど、よかったら電話下さい」
時々、配達で会社に来る宅配便のドライバーのお兄さんにメモを渡され、ミカはあっけに取られた。
 学生時代からつきあっていたひろしと別れて3年、今年の誕生日がくれば30、気がつけばお局と呼ばれ、仕事に忙殺される毎日。もう新しい恋は望めないと思っていた。
(馬鹿ね。からかわれているのよ)
ドライバーのお兄さんは22、3歳くらいだろうか。若さがにじみ出て、つやつやしている。ひろしも学生時代はつやつやしていた。若さにあふれていた。

 年齢がつりあわないなんて、先走りすぎかも知れない。つきあって欲しいと言われた訳でもないのに。何でもないように電話してみればいい。
 メモの番号をプッシュする。どきどきする。何て言おう。
「留守番電話サービスに接続します」
無情な機械音にがっかり。電車男にこんなシーンがあったような。

 翌日。今度は留守電でもメッセージを入れよう。昨日とは違う時間に電話したがやはり留守電。
「○○社のカノウです。もらった番号に電話してみました。またかけます」
またかけます、と言ったからにはまたかけないと。向こうが電源を切っていたら着信履歴には残らないだろう。
 次の日の夜は会社の飲み会だったけれど、席を抜け出して電話をかけに行った。また留守電。いつも遅いのだろうか。
「カノウです。よかったら電話を下さい。番号は」
自分の番号を2回、言った。電話は、かかってこなかった。

(お客さんの会社の女の人から何回も電話がかかってくるんだよね)
(すげーじゃん)
雑踏の中で声が聞こえる。ミカはメモを破り捨てた。

 

 

 10月7日の記事。今も続く妄想シリーズ。それまで人様のブログのコメント欄に書いていた妄想小説を初めて自分で記事にしました。

 Yahoo掲載当時のコメント欄より。

「ニューヨークに転勤していたひろしが帰国し、・・・」

「キンコン♪成田の税関でひっかかるひろし。

『タチ様,毎回お世話になります。マシンは正直なものでして…』

と,係員のアツコ。目と目が逢う…」

「『さ、こちらへ。身体検査をいたしますので』

白いドアを指すアツコ。

『あなたがですか』

ひろしはとまどった。

『ええ、じっくりと』

切れ長の目尻が、きゅっと上がった。」

これ入れておかないと他の話とつながらないので。