本当の幸せを手に入れたくて
ある日の出来事です。
私の友人が「泊まりに行きたい」と言ってきました。
正直、強引でした。でも、私は断れなかった。
夫も何も言わず、泊まりを許可しました。
その夜、私はパスタを作って、友人に振る舞いました。
そのときです。
友人が「アーン」と言って、夫に食べさせたのです。
夫はニヤついて、それを受け取りました。
私は、混乱しました。
怒りたい。でも言えたのは、たったひと言。
「あなたたち、変だよ…」
でも、その声はふたりに届きませんでした。
その後、ふたりはどんどんエスカレートして、
じゃれ合い、抱き合い、楽しそうに会話を続けていました。
怒鳴ってもよかった。
感情をぶつけてもよかった。
でも私は、怖かった。
いつ夫に殴られるか分からない
そんな恐怖に、何度も体が凍りついてきたから。
夫が寝た時、私は心からホッとしました。
でも、そのままでは眠れそうになかった。
だから私は、心療内科で処方された睡眠薬を飲みました。
その直後、夫はまた起きてきて、ふたりは再びいちゃついた。
そこから先の記憶が、途切れています。
翌朝、友人の態度がどこかおかしかった。
問いただすと、彼女はこう言いました。
「親友だから、いいと思った」
私は言いました。
「親友だと思ったら、むしろ、こういうことはしないと思う」
でも、その言葉も通じませんでした。
友人が帰ったあと、私は夫を問い詰めました。
でも返ってきたのは、暴言の嵐。
「お前は馬鹿な女だ。最低だな」
「そんな下品な妄想しかできないのか」
「俺も苦労するよ、
私は、またあの時のように殺意に似た感情がわいてきました。
沸騰したお湯を、かけてやろうかと思った。
でも、すぐに思いとどまりました。
「この人のために、そんな馬鹿なことをする意味がある?」
そのとき、娘がやってきました。
私は事情を話そうとしました。
でも娘はこう言ったのです。
「そんな話、聞きたくない」
「私はお母さんに守られたことなんて、一度もない」
あの言葉は、私の心を打ち砕きました。
どれだけ夫から傷つけられてきても、
あの娘の一言が、一番ショックでした。
娘に対して申し訳がない気持ちになりました。
娘もずっと我満していたんだと・・・
私は思いました。
「もう、生きてても仕方がない。どこか遠くへ行きたい。
でも、そのとき傍にいたのが、
保護犬として家族になった、黒いシュナウザーのジャックでした。
その存在が、私の命を繋ぎとめてくれました。
私は罪悪感に押し潰されそうになり
娘に謝りの電話をしました。
でも彼女も深く傷ついていて、私の言葉は届きませんでした。
「その通りだ。私自身がまず溺れていたんだ」
溺れている人が、誰かを守るなんてできない。
だから私は、自分を救おうと決めたのです。
心療内科の先生に相談しました。
「私は本当の幸せを手に入れたい。どうしたらなれますか?」
でも、返ってきたのはこんな言葉。
「いいじゃないですか、今のままで。夫も働いてるし、
私は食い下がりました。
「本当に幸せになりたいんです。方法を教えてください」
すると、先生はこう言いました。
「あなた、粘着質ですね、そんな人は幸せにはなれない」
その後、何か言ってましたが、私の耳には入ってきませんでした。
(心療内科の先生は数年後自殺を選んだ。あの時すでに心が壊れかけていたのかもしれません)
私は、絶望の淵を彷徨いました。
生きる意味が、まったく見えなくなりました。
でも――
今なら、はっきり言えるのです。
「あの一連の出来事があったからこそ、
私は、自分の人生を取り戻すために動き始めました。
誰かの期待に応えるためじゃない。
「本当の自分」を、ようやく生きようと思えたのです。
ここまで読んでくださったあなたへ。
もしかしたら、
その気持ちは、間違っていません。
あなたの痛みは、あなたのもの。
比べる必要も、恥じる必要もないのです。
私も、あの時「もうダメだ」と思った人間の一人だから。



