某所での飲み会。目の前に座ったのは眼科医。気の毒に彼は前回も私の医療相談係だった。プライベートな席だから、本来は差し控えるべきなのは重々判ってはいるのだが、つい出てしまう一言。


「○○さん、私、白内障になっちゃった…」

「プレドニン、飲んでるんだっけ?」

「ううん、点眼だけなんだけど…」

「う~ん、時々いるんだよねえ、そういう人。で、どのくらい?」

「3年くらい」

「3年…早いよね」

「やっぱり~、そうかなとは思ってたんだけど。両眼とも真ん中から白濁してるって」

「典型的なステロイド白内障だよね」


そして、なってしまったら手術しかない話になるのだ。

「昔はぎりぎりまで待ってしたけど、今は支障が出たらすぐにしていい。切開する範囲が狭いから、年取ってまたレンズが具合悪くなったらもう一回できるから」

二度もしたくはないけれど、仕方ないかも…。

眼科受診の結果、めでたく白内障が進行中とのこと。

「えい、ヤケじゃ、焼肉食ってやる~!!」と夫がいないのをいいことに夕方から外出。以前から「焼肉パーティー」企画があったのだ。


肉は旨かった。もちろん、それなりの投資はしているのだが、今まで食べたことのないようなサシの入った上等の肉。これで炭火だったらもっと旨いだろうなあ…。

元々食べることに執着のない私と違って、その日の顔ぶれは「美味しいもの食べるの大好き」系の人が多かったのだ。

独身だったり、普通より収入がよいと言われる職業だったり自由に使える金が多いのだろう。それを羨んでも仕方ない。羨むとしたら、やはり一番は健康な身体だろう。


ビールを中ジョッキで2杯分くらいは飲んだ。決して体調が悪いとは思わなかったのだが、二次会に行った直後に痒くなってきた。我慢できる程度の痒みだっただが、不思議にこの日は「帰ろう」と直感的に思った。

「Sさん痒くなって来ちゃった」カラオケを熱唱した直後だったSさんに言う。

「どこ?」と背中を覗く。


「ヒスタミンは持って来たんだけど…(ホントはセレスタミンも)」

「今までに飲んでよくなった?」

「う~ん、正直あまり変わらなかった」

「今は特に発疹もないみたいだし、薬飲むと眠くなって電車乗り過ごすかもしれない。私はもう少し遊んでても大丈夫かなと思うけど、どうする?」

「今日は帰ろうかと思う」


確かに眠くなるのは困る。薬は飲まずに帰ることにした。幸い遅い時間だったのと始発駅ばかりなので座って帰ることが出来た。

この時間に帰って正解だった。家に帰ってからが大騒ぎだったのだ。


まず、手足を見るとえらい浮腫みようである。顔までは確認しなかったのだが、多分浮腫んでいただろう。体重はぎええ~の50kgover。背中やお腹はバッチリ赤くなっている。主に下着をつけている所を中心にだ。接触性皮膚炎は得意の技だが、アルコールのせいもあるか? よもやアナフィラではないだろうな!


気を取り直してシャワーを浴びた辺りから今度は吐き気がする。リバース? 酒飲んで吐くなんて信じられない。酒が強いわけではない。吐くまで飲まない主義なのだ。生中2杯は通常の許容範囲内である。う~ん…。

もしアナフィラだとしたら? 食べたのは肉とキャベツとエリンギ。

どちらにしても、身体が要らないと言っているのだから吐いてしまった方がいいだろう。としばらくトイレに籠る。残念ながら、美味しく食べたモツはすっかり体外へ。


とにかく「寝てしまえ!」と布団に入る。明日ちゃんと目が覚めるかなと若干の不安があったが生きていた。昔、ビールで全身が赤くなったことがあったから、やはりアル禁なのかもしれない。

精神科医によると私の発症時期はざっと10年前だそうだ。もちろん、その頃には彼の診察は受けていない。問診の結果から割り出したようである。だからどうなんだとは思う。要は反復しているかどうかということなのだろう。

彼は私に言う。曰く「治ろうとジタバタしない方がいい」 また曰く「ずっと薬を飲んでいる方がいい」

おかげさまでここ数年、薬を切らしたことがないwww


抗うつ剤は即効性がないから、あまりコントロールされている感がない。余程ひどい状態の時、楽になると「ああ、効いてきたか」と思う程度だ。

眠剤とか抗不安剤は、その名の通り効果がアッサリ現れる。眠くなったり、胸につかえていた大きな不安感が消えると、ホッとする反面、薬に左右されているとガックリ来る時もある。


最近、夫が夜眠れないと言う。まあ、本当はいけないのだが、自己責任ということで抗不安剤を分けてやった。

仕事が忙しいのだ。彼の忙しさがどの程度なのか、正確には判らない。最初の頃は、毎日きっちり早く帰れていたことを思えば、年々仕事量が多くなっているのは間違いないだろう。今は、昼休みさえきっちり取れないようだ。


「俺、うつかもなあ」と夜中に弱音を吐いた。

「夫婦でうつはまずいんじゃないの? ダメなら病院行った方がいい。私の薬はあげられない」

結婚してからも、子どもが小さい時も、共働きの時も、彼の24時間は全て彼の都合のみで動いているのだ。私とは違う。病院に行く時間だって本人が作るしかない。

働くことに集中し、休みの日は自分の趣味に集中しているんだから贅沢は言わないで欲しい。その間、家のことだの何だの雑多な雑音は全部私が引き受けてきたのだ。もちろん、あの怖ろしいまでの低収入の日々もだ。


はっきり言って、私は疲れている。人のうつまで面倒は見られない。