このブログをはじめたきっかけは前にも書きましたが、
デザイナーを志す知人へのアドバイスを留め置くことでした。
今や彼は目的を棚の上に置いてしまったけど。

僕はいま、フリーのグラフィック・デザイナーとして
ひとりで細々とやっていますが、
以前のようにいずれまた何人かのスタッフと一緒に、
まとまった仕事も受けられるような
デザイン事務所にしたいと考えています。

新しいスタッフを採用する場合、
基本的に未経験者を採用することにしています。
それはデザインに対する考え方や姿勢などの方向性を共有したいから。
キャリアを積んだ人は即戦力になるけれど、
ベースになる考え方からワシ流を覚えてもらえれば、
スムーズで気持ちよく、長く一緒に仕事が出来ると思うのです。

そうした時の準備のためにも、
このブログでデザイン教室を続けていくことにしました。
野球の「野村ノート」みたいなものをまとめておけば、
自分のために役立ちそうだし、
学生さんやビギナーのヒントくらいにはなるでしょう。

一般的なデザインスクールでは、
アプリケーションの使い方を教えることが主流のようなので、
それ以外の足りない部分を補えるようにと考えてもいます。
以前、スタッフ採用面接を行ったとき、
パソコンスクールに通ってデザイナーを目指す人が多いことを知ったので、
それらの人の手助けになればと思ってのことです。

誰かの役に立とうなどと思っていないといいつつ、
この道を目指す人がいれば、応援したいと思うわけですよ。

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デザイン教室1・名前を覚えよう

デザイン教室第一回はかなり初歩的なところから。
はじめて出勤したデザイン未経験のスタッフに、
アドバイスする気分でスタートします。
毎回じゃなく、気が向いた時に書いていきます。

デザイナーを志すなら、現在活躍している
デザイナー・アートディレクターの名前を覚えよう。
とりあえずADC年鑑とJAGDA年鑑を見てください。
受賞作品はもちろん、作品が大きく扱われているものは
良作と考えて間違いないので、それらのADから覚えてください。

高価な本なので立ち読みでもかまいません。
東京都内ならデザイン本を多く扱っている書店もたくさんあります。
本は優しく大切に扱ってください。
そういう心がけも大切です。

休日のデートで美術館に行ったら、作家の名前を覚えよう。
メインの企画展は意識しなくてもアタマにはいるでしょうけれど、
常設展示などで知らない人の2~3人だけでも覚えたいところです。

名前が覚えられたら、できるだけ身近な人のように感じること。

名前と一緒に作風がわかります。
本じゃなく、街中などでも作品を見つけることができるようになります。
作者にもっと興味がわくようになります。
憧れるようになったりします。
その人を目標に頑張ろうと思うようになれたりします。

技法や技術論に興味がわくようになります。
専門書を読んだりするようになります。
技術的な知識が豊富になります。

知識が増えてすぐにデザインの能力が高まるわけではありませんが、
自作の理論的な根拠になります。
仕事をすすめていくうえで、
クライアントに対する説得力と得られる信頼感が高まります。

自分の知っている世界・知識の範囲だけでデザインするのもかまいませんが、
たとえば煮詰まった時など、
佐藤可士和さんのSMAPのポスターみたいに、
色の塗り分けだけでデザインするという手もあるなと気づいたりします。

アプリケーションの使い方を熟知していれば、
オペレーターにはなれますが、
天才という例外を除いて、十分とは言いにくい。
デザイナー・アートディレクターの名前を覚えることは、
デザインの知識を幅広く身につけるための、
第一歩でもあるのです。