五時過ぎ、
母屋の一階で寝ていた父から、離れの二階で寝ていた私に電話があった。  

飛び起きて、私の運転で病院へ。 
五時半過ぎには着けたと思う。  

前の日見たままの姿の母が、静かに横たわってた。  
脈は30ほどに落ちてて、もういつ心臓が止まってもおかしくなかった。

「いかないで」とか「いやだ」とか、
心の中では何度も何度も叫んできたけど、
母に聞こえるところでは言えなかった。

言っても祈ってもなんともならないとわかった。
呼んだからって覚醒できるんじゃない、
心臓が働き出す訳じゃない、
もう膨らまない、ガス交換できない肺を、今すぐ交換出来るのでなければなんともならない。

信じられなかったし怖かったけど、
母が去っていってしまうことをただ見ている自分もいた。

つないでいた手を出来れば一生洗いたくないと思った。

心臓が止まって、また動き出して、
そして本当に止まってしまって、
唇が見る間に白くなっていって、そんな姿をずっと見ながら、連れて行って欲しいと思ってた。

母の帰る準備が整うあいだ、夫や職場に連絡したり、
父と弟と院内のカフェでお茶を飲んだり、自分で思っていた以上に普通に、そんなことができていた。
涙は出るけど、本当のこととは思えなくて、母はちゃんと帰ってきてくれるような気がしてた。

昨年祖父をおくったのと同じ、近所の会場に連絡をとり、そのままそこへ向かうことになった。

霊安室に安置され、白い布を顔にかけた母は、どう見ても祖母と同じ顔をしてた。
「ママ」って何度も呼びかけた。

友引の関係でお通夜は翌々日になったから、
時間に余裕をもっていろいろすることができた。
翌日には夫が来てくれた。