日曜日の夜、看護師さんから電話があった。
病院からの電話がないかと怯える毎日で、
私もだったけど、父は本当にしんどかったと思う。
「明日いらっしゃるとき、パジャマを持ってきてください」
最初はよくわからなくて、「何組くらいですか」とか聞いた気がする。
「ひとつで結構です」と言われて電話を切ったあとで思い当たった。
ICUへ行くときすべての荷物を持って帰って、
ママはずっと病着を着てる。
着て帰る服がないんだ。
帰るときが近いんだ。
わかってるけど、でもまだ諦めきれなかった。
いきなり劇的に肺の炎症がひいて、呼吸できるようになるんじゃないか。
そう思ってた。
父は仕事に行った。
病室についてすぐ、看護師さんが、
「お父さんにさっき連絡したので、来てくださったんですか。血圧が朝からさがってます」と。
モニターをみると、60くらいを示してた。
面会制限の人数を増やしてくれると言うので、父も仕事をきりあげてきた。
ママは、眠ったまま。
生きてるママを覚えておかなきゃと、
顔から目が離せなかった。
まだ生きてるママの手を離したくなかった。
「泊まり込みできますか」と聞くと、
若い看護師さんが聞いてみますと言ってくれた。
結局、許しは出なかった。
なるべく短時間でと言われていたけど、
追い返されることもなく、数時間ママの顔を見て過ごした。
だめなのか。避けられないのか。
あ、職場に連絡しなきゃ、とやっと思った。
到底今週は帰れない。
週末また来れるときまで、ママは保たない。
避け続けてきた考えをやっと引き出した。
家に帰り、慌ただしく早めにご飯とお風呂を済ませた。
寝る間際に主治医から連絡があった。頻脈に転じてますということだったと思う。
お願い、待ってて、呼ばれて行けるまで待ってて、
怖い、怖い
弟も夜中に帰ってきた。
父から電話が掛かってきて飛び起きたのは朝の五時過ぎだった。