ママの目が覚めるのを待って、
ほかの家族も呼んでいいですよと言ってもらえたので、おじちゃんと弟も呼んだ。
2人ともすぐ来てくれて、それからしばらくしてママが白目になり始めた。

私は左側で手を取っていたけど、なんだか右手はあんまり動かせないようだった。
しっかり目を見開くと、すぐ、苦しそうな顔をして喉元に手をやろうとする。 
口の中がねばついてきたので、看護師さんが綺麗にしてくれた。
「もう少しやりますか?」の問いに首を振って答えていて、ちゃんと声は届いていていると思った。

でも、その目は私のことは見ていないようだった。
言いたいこともない様子で、顔をしかめるほかは戸惑っているように見えた。
あとから来たおじちゃんが、
「○○です、大丈夫か。頑張ってや」
顔を覗き込んで言ったとき、初めて目を見開き、わかったような顔で頷いた。

子供に戻った夢をみていたのかな。
おじいちゃんやおばあちゃんがお迎えに近くにいたのかな。だから兄であるおじちゃんしかわからなかったのかな。

病気がわかってから、ママの前で泣いたことは一度だけしかなかったけど、もう泣くのを止められなかった。
会えて嬉しいこと、ちゃんと良くなってまた話せるし、美味しいもの食べれるからねってこと、パパは大丈夫だから安心してねってことを繰り返し伝えた。

「明日もくるからね、本当はここに泊まりたいけど」
と言ったとき、とんでもないというようにぶんぶんと首を横に振った。

しばらくして、再び鎮静を深くしてもらった。
もうこれが最後かもしれないと思った。
と言うより、そうなんだとわかってたけど、
認めたくなくて、まだこれから回復してくれるんじゃないかと望んでた。

面会は二人までと言われたので、翌日は弟と私で行くことにした。 
パパはずっと「ママはよく頑張った」って言ってた。
私はありがとうって言ったっけ。
そんなこと言うとお別れみたいで言えなかった気がする。
病気になるまえから、なってからも、ありがとうの気持ちはいつも伝えてたつもりだけど、伝わっていたかな。