2001年夫婦世界旅行のつづきです。7月20日、パリ2日目の夕方。





part145 いや~な予感……


 


要約: ツーリストオフィスがくれたホテルの “予約控え” に、未記入の部分発見! 気になって、そのホテルまで下見に行ってみた。ホテルの値段表と見比べて、どうも予約した内容に食い違いがあるように思われる。が、はっきりしない。パリの夕暮れに包まれながら、嫌~な予感にも包まれたのであった。









実は、ちょっと気になる安宿がモンパルナス (パリのど真ん中よりやや南西に位置するあたり) にあった。もう明日からの宿は決まってしまっているが (part142参照) 、散歩がてらその宿を見てみようかと夫が言い出した。





もう今さら宿なんて見なくていいじゃん? と私は思うが、夫は宿見物が大好き♡ (que sa femme) で、モンパルナスは私も行ってみたい所だったので、宿見物に付き合って、その足でモンパルナスをぶらつくのもいい。よし、行きましょう! とメトロに乗り込む。





しかし、メトロに揺られながらガイドブックをよく読むと、 





――メトロの中などで暢気にガイドブックを開いていては、観光客丸出し! 危険である! 基本的には、メトロの中では、ガイドブックを見ることも手に持つことも禁止。いかにもパリ在住でございって顔して乗っているように心掛けていたのだが、そうとばかりもしていられない。





周りに注意しながら、ガイドブックを開いた。周りの乗客を窺いながら、ガイドブックをシャカシャカ見る我々の方が十分怪しい。―― 





その宿は、モンパルナス駅からはかなり遠いところにあることがわかった。宿を 「見物」 したついでに、モンパルナス界隈を散策するというには、コースとしてうまくないことがわかった。





もう新しい宿も決まった今、泊まりもしない宿を見にいって、いたずらに疲れても仕方ない。モンパルナスは後日改めてたっぷり楽しむことにしよう。ということで、結局、モンパルナス&宿見物は急遽中止。途中で引き返してきた。





メトロは改札さえ出なければ、いくらでも乗り放題だ。 「モンパルナス行き中止」 と決めたからには、すぐに次の駅で降り、反対方向のプラットフォームへ移動。再びメトロに乗り込んで帰ってこられるのであった。





メトロは、夕方の帰宅時刻に多少混むのが難点だ。スリが多いらしいので、バッグをさりげなく抱きかかえて緊張はするが、なんといっても便利なパリの足である。





さて、モンパルナス行きは中止したので、中途半端に時間がある。帰りがけに、明日移動する予定のホテルを下見してみようということになった。





メトロを乗り換え、カデ駅 (北駅のちょいと南西) で降り、地上へ出ると、大通りだ。さぁ、宿はどっちだ? 





ホテルの住所にある 「通り」 の名前を頼りに近くの路地を入っていく。路地に入るといきなり交通量も減り、人通りも減り、異様に静まり返る。ごくり。にわかに緊張する。またもやバッグをさりげなく抱きしめる。





しばらく歩くと、通り沿いに、目指すホテルは見つかった。真っ白い壁はリニューアルしたばかりのようにきれいで、清潔そうなホテルである。おお。約束通り、☆も2つ付いている。よしよし。さすが、ツーリストオフィスで探してもらったホテルだ ♪





外の壁に値段表が張り出してある。どれどれ? あ、この値段、この値段。ダブルで270フラン。我々が今日約束した宿代だ。ん? …………おかしい! 我々の値段の部屋には 「トイレ・シャワーが付いていない」 ように書いてあるじゃないか!





実は、今日ツーリストオフィスを出てから、よくよく 「予約の控え」 を確認して気づいたのだが、ホテルの部屋が 「トイレ・シャワー付き」 で頼んだはずなのに、予約の控えにはそのことが明記されていなかったので、気になっていたのだ。





 で宿の予約をしたときは、予約の控えを渡される。そこには、宿の名前、住所、電話番号、宿泊日時、宿泊日数、宿泊人数、部屋の種類、ベッドの数、トイレ・シャワーのあるなしが記入されているものだ。その用紙を係員の目の前で確認して、予約終了だった。





しかし、今回は、 「係員の目の前での確認作業」 が抜けていたのだ。窓口の機関銃娘 (part142参照) は予約控えをわざわざ 「白い封筒」 に入れて我々に突きつけ、次の客を呼んだので、我々は封筒から控えを出して確認することなく、早々に窓口から離れたのであった。





いつもは予約の際、予約の控えは 「封筒」 になど入れられず、むき出しのまま渡される。だから、むしろ 「丁寧な」 オフィスであったと思われたものだが。





後で落ち着いてその封筒の中身を確認したら、 ……あれ? と未記入の部分を見つけたわけである。どういうことだろう。たちまち不安になった。





口頭では 「トイレ・シャワー付き」 だということを何度も確認した。だから、まぁ、単なる記入漏れであろう。 ……記入漏れでなければ、困る。 「トイレ・シャワーが共同」 とも書いていないのだから、記入漏れ、だろう。そうだろう。そうであってくれっ。





しかし、もしかしたら、いい加減な予約をされてしまったのだろうか。ああ。なぜ、いくら急かされたからといって、今1歩踏みとどまって、あの場で封から出して予約控えを確認しなかったのかっっっ……。我々もまだまだ甘いぜ。





目の前のホテルの値段表からすれば、どう考えても 「トイレ・シャワー共同」 の部屋を予約されてしまった可能性が高い。





が、まぁ、明日ホテルにチェックインすれば、わかることだ。 ――もし、機関銃娘の予約の取り違いだったら、嫌だなぁ。ちょっと憂鬱。





で、今鬱々と考えていても埒もないので、北駅に戻って景気よく夕食を取ることにした。





夕食には是非ワインを飲みたいという私のたっての希望で、ワインの飲めそうな店を探す。





北駅の近くにスーパーは見当たらず、ワインを買い込むことができない。昨日入った 「シシカバブー」 ファーストフード店にはワインは置いてなかった。





しかたなく、ファーストフード店よりはちょっと高く付くけれど、比較的安そうな北駅前のバー・レストランに入ってみた。駅前なら利用する客も多そうだ。客が多ければ、結構美味いものを出すのではないか? (甘いぜ。) 





しかし、外から見ると結構きれいなその店は、中に入ってみると床にゴミがちらばり、椅子にも食べ粕(かす)がいっぱい落ちている。





しかも、 “パン粕” だけならまだしも、肉の破片だとかソースだとかがびちゃっとついている。こんなあからさまな汚れを拭かんのかいっ。一拭きできんのかいっ。フランス人っ? (日本ではこんな店はありえないね。)





ギャルソンたちはみな中高年のおじ様だ。若いウエイトレスの多い日本の飲食店とは随分様相が違う。親しみが湧く反面、食欲はあまり湧かない。





とりあえず奮発して 「ムニュ menue(定食) 」 を頼んでみた。アントレ (前菜) 、主采、デザートをそれぞれ一品ずつチョイスする。そして赤ワインは……よくわからないので、目についた 「ロレーヌ地方」 のものをキャラフで頼んでみた。





ワインは本場なのに、特別安いわけでもない。特別美味いわけでもない。定食はまぁ、食べられますね、というお味。とにかく座席やらテーブルやら床やらがゴミだらけなので、落ち着いて食べた気がしないのであった。





(しかしラオスのように、 “食器そのものに蜘蛛の巣が張っている” などということはなかった。そう。食器はご立派なのである。きれいに洗われているのである。――多分食器洗い機が普及しているせいだろう。)





それでも定食65フラン (1,200円) ×2、ワイン36フラン (600円ちょい) 。ファーストフードの倍の値段がかかってしまった。





 (追記: 今思えば、 「定食」 という名の “コース料理” ではあり、この値段は、日本と比較すれば結構安いと思う。が、当時はまだアジア感覚が抜けないので、ヨーロッパは何から何まで物価が高い! と思われたのであった。)





今日は宿探しとシティバンク探しとで、たいした感動もなく一日が終わってしまった。せっかくの “ワインの夕餉(ゆうげ)” も、たいした感動もなかった。おまけに宿に関しては嫌~な予感まで漂っている。が、まぁ、こんな日もあるよね。





あぁぁぁ、思いっきり美味しいフランスパンと美味しいワインが飲みたいっ!!!!! (……なぜ 「本場」 のパリにいながら、こんなことを願わにゃならんの?! )


          つづく 


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