入院した母のお見舞いに行く。
なんというか、それが義務のような気がして、行く。
その病院では、レクリエーションの時間があって、内容は曜日ごとに変わるらしいが、私が行ったとき、母はマイクを手に歌っていた。
ひゅーるりー ひゅーるりーららー
母の声は独特だ。
警察にも子どもの声と間違われたくらい高いトーンの声をしている。
まぁ、上手に歌っている。
母は、歌い終わった瞬間、「ほらほら!拍手拍手!」と言って跳び跳ねた。
本当に子どものような振る舞いだ。
その場にはいろんなレベルの精神疾患の方がいるわけで、看護師さんもいるし、私同様お見舞いの人もいるわけで…
私は、やや恥ずかしかった。
とはいえ、そんな母にある意味諦めのようなものも抱いていたから、「やや恥ずかしい」で済んだのかもしれない。
めちゃくちゃ恥ずかしいと思わなかった自分に違和感もあった。
母は、まだ正気に戻っていなかった。
しばらくしたある日のことである。
母の心の不調はとある薬の副作用かもしれないという話が持ち上がった。
母の持病でお世話になっている先生から、今の精神科病院の先生に連絡があったそうだ。
それを聞いたとき、なぜか私はほっとした。
ただ精神疾患になる、というのと、薬の副作用でなる、というのとでは、何かが違う気がした。
なにも違わないのかもしれないが、それでも私は心のつっかえがとれたような気がした。