暗いっ
暗いっ

なんて暗いんだ

影の魅力に取りつかれてしまった私は、
無理やり手で太陽を覆い、わざわざ暗い所に身を寄せる

外はこんなに天気がいいのに、一体何をやっているのかね


闇に魅かれてゆく魔力から私は解放された気分だ

とても気分が良いし、自由を感じる

墨汁のプールに身を投げ、

上目使いで回りを眺め、同情を売り物にしていたなんてバカげている


なんで誰も言ってくれなかったんだ

「ちょっとあなた、ばかげてますよ」って。


さっさとプールから上がり、真黒に染まりあがった服を洗濯しなければならない

もうすぐ次の満月もやってくる

Tシャツに残った墨汁の染みも、7月の太陽に消されてゆくだろう


不完全な体に宿る、自由なる魂

そのアンバランスの中でしか得られない美しさに気付く時、

私は私自身でいられることに深く感謝する

今日もまたNaokoは死んでしまった

私がこの本を読む度にNaokoは死んでしまう

私は泣かずにはいられない

死に捕らわれ、死と共に生き、そして人生の一番美しい時に死に引き込まれていったNaoko

その美しい体を蝕んだ多くの出来事。

魂と体にはバランスがある

美しい魂は美しい体に宿ると聞くが本当だろうか

私は常々自分の体の限界に苛立ちを覚える

こんなにも弱々しく、不完全でアンバランスな体

ありとあらゆる物にアレルギーを持ち、何かあるとすぐに異常を来す

精神が折れるずっとずっと手前で突然バタンと倒れる

それらの反応は他人から見ても分かるように現れる

それらは多かれ少なかれコンプレックスとなって私に取り付く   

もっと強い体があれば、逃げ切れるのに

もっと強い体があれば、遠くまで行けるのに

もっと強い体があれば、恐怖に怯えなくてすむのに、

もっと完全な体があれば、あなたに抱かれることにも臆さずにすむのに、

何度となく思った。

でも人はそれぞれの不完全さを受け入れて生きていかねばならない

本当に人を愛するということがあなたの身に起こるならば、

あなたはその相手の不完全さもすべて受け入れることができるということに違いない。

本当に愛されたいと心から願うことができる人に会うことができたならば、

あなたはその相手に自分の不完全さをすべてさらけ出す用意があるということに違いない 。

それらは本当に美しいことなのだと思う

不完全な者たちが、不完全でしかなり得ない行動に命を捧げようとする

それらは本当に、本当に美しいことなのだと思う

私は不完全を憎んではいない

完全を望んでいるわけでもない。

ただ、大切な人の瞳を通して、

自分の不完全さを理由に今までどれだけの人を傷つけてきたかを見た時、

そして鏡の中の瞳を通して、

これからもどれだけの人を傷つけていくつもりなのかという疑問を聞いた時、

私は胸の真ん中をドンと鐘で突かれた様な深い痛みを覚える。

それでも常に光の中を歩こうとする魂と、このこねくり回された思考を持つ不完全な体を抱え、

どうやって人を愛し、人に愛されることができるのか、

本当は知っているとうことも私は知っているのだ。


ずっと小さな少女を守ってきた


この少女のために私は旅にも出た


黄色い森で道が二つに分かれた時、彼女のために私は人の踏み跡のない道を選んだ



彼女は様々なものに恐怖を抱いていた


彼女は一人では眠れなかった


震える肩を誰かに抱いてもらわないと本当の眠りが訪れることはなかった



私は彼女のために、常に混乱していた


彼女を傷つけないために、いつその場所を去るべきかをいつも考えていた


いつも鼻を利かせ、目を凝らし、そのタイミングを逃さないようにしてきた


そして、誰もが彼女に触れることのない様に細心の注意を払ってきた




私は薄々気付いていた

彼女は人目に触れたがっていた

彼女は人に触れられたがっていた


それが彼女自身を損なうことになったとしても、彼女は誰かを求めていた


私が守り過ぎてしまったことによって、彼女は傷ついていた


私は彼女の儚さと純潔を守り続けたかった


しかし彼女はその儚さを理由に他者を傷つけ回っていたし、到底純潔ではなかった



彼女は満月が近づくといつも痛みを伴った血を流した


それは私には止めることができない類のことだった



あなたが彼女に触れた時、彼女が血を流したのは偶然ではないと私は思う


満月の力に満ち引きする彼女の体が、あなたの体に反応したのだと思う



そして私はまた混乱する



彼女があなたに扉を開きすぎたからだ



彼女に一時の深い眠りが訪れた


しかし今また私は鼻を利かせ、目を凝らし、去るべくタイミングを見計らっている


とても卑怯で臆病なやり方だけど、それ以外に彼女を守る方法を私は知らないのだ



何も心配しなくていい


あなたがそれを言おうとした瞬間、あなたはその言葉を私の口から聞くことができる