【てんてこまい】の語源 | 日本語の語源 〜目から鱗の語源ブログ〜

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日本語の語源について紹介していきます。

 日本語というのは大和言葉と称されるものも含めて

「漢字を素材として、日本人自身がつくった言語」です。

 

 今回は【てんてこまい】の語源を紹介します。

この言葉は、「繁忙を極める」状況、もっとくだけたいい方では「とても忙しい」状況を表現するときに使われます。

顛は、一音節読みでティエンと読み、「倒れる」や「上下逆さまになる」などの意味ですが、熟語の顛達はティエン・タと読み「活発に忙しく動き廻る」の意味で、その多少の訛り読みがテンテコマイのテンテです。滾は、コンと読み「水が滾滾と湧き出る」という表現などはよく知られていますが、その他に「転がる」の意味があります。忙はマンと読み「忙しい」、移はイと読み「移動する」の意味です。つまり、コマイとは、滾忙移であり、直訳すると「転がるように、忙しく、移動する」の意味になります。このように、テンテとコマイとは、似たような意味の言葉になっています。 

 

 したがって、テンテコマイとは、顛達滾忙移の多少の訛り読みであり、直訳すると「忙しく動き廻り、転がるように忙しく移動する」の意味になり、これがこの言葉の語源です。意訳して簡潔にいうと、動詞語では「転がるように忙しく動き廻る」、名詞語では「転がるように動き廻る忙しさ」になり、上述したような「繁忙を極める」状況をいいます。

 

 漢語では、とても忙しい状況を表現するときには団団転といい、団も転も「くるくる廻る」という意味です。朝から晩まで忙しく走り廻ることは「整天跑跑顛顛」といいます。整天は「一日中」、跑跑は「走り廻る」、顛顛は「動き回る」の意味です。

 

 テンテコマイの語源につき、語源辞典や大辞典には可笑しな語源説が書かれています。、例えば、広辞苑(第六版)には、次のように説明してあります。

 

てんてこまい【てんてこ舞い】(テンテコは里神楽などの太鼓の擬音語。『天手古舞い』は当て字)ひどくいそがしくて落ち着かないこと。うろたえて騒ぐこと」。

 

 ここでは、テンテコは太鼓の音で、テンテコマイは「太鼓の音に合わせて舞うこと」とされてるようです。「てんてこ」を太鼓の音と見做すのは無理があります。なぜならば、証城寺のタヌキの腹鼓の音はポンポコであり、「村祭り」での太鼓の音はドンドンだからです。テンテコのような、のんびりした太鼓の音に合わせて「舞うこと」と「繁忙を極めて動くこと」との間になんの関係があるのかという疑問があります。 両者は本質的に異なった事柄なのであって、前者は娯楽の範疇のことであり「忙しい」の意味は殆んど感じられないのに対して、後者は事業などにおける差し迫って処理すべ事柄のことなので「忙しい」の意味が充分に感じられるからです。

 こんな眉唾説が、長年にわたって、たれ流されているというこては、日本の国語学界は、相当に傷んでいることが推測されます。

 

 最後までお読みいただきありがとうございました。