【こんりんざい】の語源 | 日本語の語源 〜目から鱗の語源ブログ〜

日本語の語源 〜目から鱗の語源ブログ〜

日本語の語源について紹介していきます。

日本語というのは大和言葉と称されるものも含めて

「漢字を素材として、日本人自身がつくった言語」です。

 

 今回は【こんりんざい】の語源を紹介します。

この言葉は、漢字では金輪際と書かれます。広辞苑(第六版)によれば、多くの場合、あとに打消を伴って、副詞として「底の底まで。どこまでも。とことんまで。断じて。」の意味で使うと説明されています。

 

 実際には、例えば、「あいつとは、金輪際口をきかない」とか「今後、金輪際悪いことは致しません」のように使われます。

 一音節読みで、更はコンと読み「さらに、重ねて」の意味、臨はリンと読み「臨む、出会う、直面する」の意味、再はザイと読み「再び」の意味です。コンリンザイとは、更臨再であり、直訳すると「更に、直面することが、再びでも」の意味になっており、これがこの言葉の語源です。

 「コンリンザイ致しません」のような否定や打消の言葉を伴うときは、直訳すると「更に、直面することがあっても、再びは致しません」、つまり、よくあることで、なにかの事故の後でその責任者がいうところの「二度とないように致します」と似たような意味になっています。

 

 因みに、大言海には「金輪」について、次のように書かれています。「仏教ニ云フ、此ノ世界ノ地層ノ名、ソノ最下底ニアルモノハ風輪ナリ、ソノ上ニ水輪アリ、水輪ノ上ニ金輪アリ。コレ即チ地輪(大地)ナリ。其ノ下、水輪ニ接スル所ヲ金輪際トイフ。」

 ここでは、金輪とは地輪(大地)のことであり、金輪と水輪との境目が金輪際なので、金輪際は地輪の中では最下層になると書いてあります。

 実際の文例においては、「太平記:下ハ金輪際マデモ聞ユラン」(大言海)のように、単に場所を指すに過ぎない場合は、仏教でいうところの地輪の金輪際です。

 また、「膝栗毛:聞きかけた事は金輪際聞いてしまはねば気がすまぬ」(広辞苑)や「浄瑠璃:金輪際の敵、憎しといふはきやつがこと」(広辞苑)のように、コンリンザイの後に肯定の言葉がくる場合は、「底の底まで、どこまでも、とことんまで」の意味での地輪の金輪際であることは明らかです。

 ただ、金輪際は地輪の最下層である場所のことなので、「断じて」の意味までがでてくるかについては疑問符が付きます。

 

 したがって、結論としては、コンリンザイを、肯定で使う場合は、場所としての地輪の金輪際のことです。否定で使う場合は金輪際は当て字でありその字義は更臨再のことです。このように、肯定の場合と否定と場合とでは、その語源は相違していると考えるべきだと思われます。

 

 最後までお読みいただきありがとうございました。