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 デリー、アグラ、ジャイプール、バラナシを巡ったBP(バックパッカー)の旅の記録。BPたちが遭遇しそうな、いろんなことどもが書かれている。面白いけれど、インドに関する知的ないし心情的探求心が深まるような種類の本ではない。2006年6月初版。

 

【4都市周遊のボッタクリ勧誘】
インド人E 「訪問する都市は、ジャイプル、アーグラ、バラナシ、そしてデリーとなっています」
「ヘー。インドを代表する観光都市ばかりじゃないですか」
インド人D 「それだけではありませんよ。このツアーの目玉は、なんとすべての移動が乗用車でおこなわれるんです! ・・・中略・・・ このツアーに申し込めば、今ならもれなく全行程で朝食付きです。・・・中略・・・お任せください! この特別ツアーに今日のチャイ、リクシャ料金までセットで、金利手数料は当社が負担。なんとお値段たったの975米ドルでのご提供です」 (p.70)
 予習で得た情報では、その3都市を自分で電車を使って回ればせいぜい3000円くらいである。・・・中略・・・。まるでヌーブラの上にウォーターブラを着けるような水増しぶりである。(p.71)
 えぇ~、ウォーターブラって、あるん? 
 それはともかく、
 975ドルは、現在のレート(1$=112円)で、975*112=109,200円。
 3000円の実に36倍という、ウルトラ付きボッタクリ料金である。
 自分で回るなら、こういった基本的な情報を押さえた上で、レート計算をできる程度の頭がないとヤバイ。
 チャンちゃんは、ビザ取得・飛行機・ホテル・貸し切りバス、全食費、家から空港までの交通費、こずかい等、総額で11万円のインド5日間ツアーから先ごろ帰ってきたばかり。
 この本と 『伝えたいインドのこと』 は、行きの飛行機の中で読んでいた。

 

 

【インドの道路を走っているもの】
 人間の他にもさまざまな生物が道路を走っている。牛や犬はもちろんのこと、ロバ、ブタ、馬、ラクダ、象が車と一緒に走っている姿は圧巻である。さすがに道路の向こうから像が突進して来た時は、腰を抜かすことこそなかったが、タラちゃんのように悲鳴をあげた。リクシャに乗っていても平気で象にひかれそうになるのだ。
 もう、驚いたゾウ!
 ・・・今バカにしたあなた。そんなあなたも実際道路を走っている象を見たら絶対同じことを言ってしまうと思います。(p.104)
 インドの道路には、実に様々なものが走っている。
 下記の動画に象は写っていないけれど、インドの道路の実状がわかるでしょう。
    《参照》   インド、アグラ市内の交差点の状況

 

 

【ピンク・シティ】
 ちなみに城壁で囲まれているジャイプルの旧市街は別名「ピンク・シティ」と呼ばれているようで、なるほど町中の建物という建物が、いとこのカヨちゃんがオレにシャワーを覗かれた時のような、キレイなピンク色に塗られている。(p,204)
 ラージプート族といわれるクシャトリア(王族・戦士)階級が主要な民族をなすインド西部にあるラジャスターン州の州都であるジャイプルに「ピンク・シティ」ができた理由を知ると、ムガール帝国の盛衰理由及びインド史の骨子が分るようになっている。
 ピンク色は、白い大理石の粉と、赤砂岩の粉を混ぜることでつくることが出来るそうである。
 白い大理石は、言わずと知れたアグラの「タージ・マハル」に使われた石材。一方、赤砂岩は、アグラの「ファティープル・シクリ」と「アグラ城」、デリーの「レッド・フォート」、ジャイプールの「アンベール城」などに使われた石材。
 これらムガール帝国の主要な大建造物を造るのに必要な多量の石材は、岩山が多いラジャスターン州で産出されるのだという。
 つまり、ジャイプールの「ピンク・シティ」は、ムガール帝国の巨大建造物作成に乗じて、富を蓄えつつ、石材加工中に出てしまう廃材を用いてできた色彩の都市ということになる。
 また、ラージプート族が多く住むラジャスターン州は、石材・貴石の産地あることに加えて、草木染衣料の産地でもあったので、古くから経済的に豊かな州だった。それがムガール帝国との提携によって、より一層経済的豊かさが増したと言えるらしい。
 故に、インド人に、「国内旅行をするなら、どこに行きたいか」を問うと、たいていは「ラジャスターン州」という答えが返って来るそうである。ラジャスターン州内にはいくつもの歴史ある寺院があるのだという。日本でいうなら京都・奈良に相当する州らしい。
 ラジャスターン州が、イギリスに植民地支配に抗して独立を保った唯一の州だった理由は、勇敢で秀でたラージプート族に率いられ、鉱物・衣料からなる産業資本を維持・発展させてきた州だったからと言えるはずである。つまり、軍事力と経済力において、ラジャスターン州はイギリスに一籌をゆすることがなかった。
 ムガール帝国も、ラージプート族との提携関係が、強かった時期は発展し、弱くなると衰退するという推移がはっきりしているのである。
 インド商人として有名なマルワリ商人も、ラジャスターン州出身である。
   《参照》  『12億の常識が世界を変える インド』 長谷川慶太郎 (ポプラ社) 《後編》
             【マルワリ商人】

 マハラジャの「ラジャ」、ラジャスターン州の「ラジャ」、ラージプート族の「ラージ」、いずれも「王」を意味する同一語源である。
 「ピンク色」と「ラジャ(ラージ)」をキーワードにすることで、インド産業史に裏打ちされたインド史の骨子が明白になったわけである。

 

 

【タージ・マハルに関する美しい伝説?】
 シャー・ジャハーンは、タージ・マハルの建築に関わった職人たちがタージよりも美しい建物を造るのを防ぐために、彼らの腕を切り落とし、その代わりに一生彼らとその家族の面倒を見たという。これは美しい伝説としてアーグラに語り継がれているものなのだが、オレは思った。
 もしオレが職人だったら、一生面倒を見てくれなくていいから腕を切り落とさないでほしい、と。
 全然「その代わり」になってないし。 (p.240-241)
 まったく。
 そもそも、これが「美しい伝説」といえるだろうか?
 タージ・マハルは、『永遠の愛』を湛えたエネルギースポットである。
    《参照》   『プレアデス『メシアメジャー』からの黙示メッセージ』 村中愛・〈序文〉小川雅弘
              【エネルギースポット】

 『永遠の愛』は、タージ・マハルより美しい建物を造らないことで担保されるのではない。
 チャンちゃんとしては、実に馬鹿げたエピソードだと思っている。カースト制度のような露骨な差別意識が生んだ「歪んだ伝説」だろう。幼児の手足を折って“物乞い”というジャーティ(職業)人生にしてしまうのとどこも変わりはしない。このようなエピソードを、本当に「美しい伝説」と思うのなら、魂の進化レベルが相当に低い証拠である。

 

 

【車の外にへばりつく】
「なんだ。おまえもアーグラに行くのか。丁度今一人降りたところだから1人分空いているだろ。よーし、あそこのスペースに乗るんだ」
「やった!!!」
 オレに与えられたスペースは、ジープの後ろ、荷台にちょっとだけついている足の踏み場に乗って、何人ものインド人と一緒にジープの外側にへばりつくというものだった。
 こ、これは・・・。
 オレがかたまりの一部となると同時にそのままジープは走り出し、インドの悪路をかっとばす。
 スタントマンかオレは!!!!
 車に乗れてホッとしかけている自分に心の中で必死に訴える。
「油断するな・・・今手放したら死ぬぞ、手放したら死ぬぞ・・・」 (p.254)
 女の子なら、先に乗っていた誰かが変わってくれるかもしれないけれど、握力に自信がない柔なオニイチャンは、安易に乗らないこと。
 因みに、車内の座席に座っても、屋根の上に載っても、外側にへばりついていても、料金は同じである。

 

 

<了>