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 安藤友香選手の「忍者走り」走法を見て、「もしかしたら・・・多分・・・」と思いつつ、読書記録サボリ本の中から、この本を出して書いてみた。2005年6月初版。

 

【生物の動きには「ゆるみ」があってあたりまえ】
 私たちの身体は、無理な動きを排除しようとするほど、力が入って固まってしまうものです。それでは融通無碍な動きはできないし、勝負所で瞬発力を発揮することもできません。もともと生物の動きには「ゆるみ」があってあたりまえ。自然に、楽に動くことのほうが疲れることもありません。ところが多くの選手は、練習を重ねれば重ねるほど身体を固めてしまいます。(p.24)
 チーターが走る姿をスロー映像で観察すれば、すぐにわかります。・・・中略・・・。「ゆるゆる」を通り越して「ぐちゃぐちゃ」になるくらい身体をゆるませて走っているのです。(p.50)
    《参照》   『からだには希望がある』 高岡英夫 (総合法令) 
              【ゆるめる】

 名古屋ウイメンズマラソンで2位になった安藤友香選手の走法は「忍者走り」というらしいけれど、身体の「ゆるみ」を活かした「疲れない」走法なのだろう。安藤友香選手に「忍者走り」を指導した里内コーチは、著者(高岡さん)の著作を読んでいるのではないだろうか?
 明治時代以前の日本人は、肉食をせず、米と大豆主体の食生活だったのに、驚異的な走力を持っていたことが、当時日本に来た外国人を驚嘆させていたことはよく知られている。
 安藤友香選手の「忍者走り」によって、“日本人が身体意識を取り戻し、精神的に復活する契機になること”を期待してしまう。日本人の身体動作・身体意識と食と精神は、本来一連のものだからである。
    《参照》   『意識のかたち』  高岡英夫  講談社
              【日本語に隠された秘密】

 

 

【ふんばるな】
 坂道を走る野口選手の傍らで、藤田信之監督がくり返し、声をかけています。
「構えるな、上体を構えるな。できるだけ楽にして。もっと上体の力を抜いて。一番きついところだから、ふんばるな。ふんばると、どんどん、きちゃうぞ。どんどん、どんどん、落ちてきちゃうぞ」
 この監督の指示には、専門的に見てみきわめて重要な意味が含まれています。(p.39)
 野口みずき選手の上体は普通の構えだったけれど、「上体を構えるな。もっと上体の力を抜いて」の究極の完成形こそが「忍者走り」の上体姿勢だろう。
 りきんだり、がんばったり、ふんばったりすると、パフォーマンスが落ちてしまうのは、マラソンに限らず、スタミナが必要なすべての運動に共通すること。
 これを書きながら、チャンちゃんは思った。「人生は、最長のレースだから、適度にメリハリをつけつつも、基本は、頑張らずに顔晴って生きましょう」と。
 因みに、野口みずき選手は、日本女子マラソンの歴代最高タイムを出している。安藤選手は現在4位。

 

 

【心もゆるめる】
 ピークを過ぎた陸上選手や、低迷していた弱小女子バスケットボールチームが、「ゆる体操」を取り入れたことで、優れた成績を上げていたことが紹介されている。
 そこまで明るくプレーできた秘密は何でしょう。三年間、毎日、ゆる体操を続ける中で、身体だけでなく、心まで緩める習慣がついていたことです。だから、どれほど切羽詰まった状況にあっても、心理的にはまったくプレッシャーをうけずにいられたのです。
 試合の最中に、それも勝負の行方を左右するような重要な局面において「心をゆるめる」などと言えば、とんでもないと思われる方もいるかもしれません。むしろ、「ゆるんだら負けだぞ。精神を集中しろ。気合を入れろ」と叱咤激励する指導者の方が多いでしょう。(p.29)
 怒りながらリラックスするとか、笑いながら緊張するって、むしろ無理。徹してゆるめるためにはそれに応じた心の状態を維持すべき。

 

 

【筋肉お化けの凋落】
 本来は柔軟で可能性に満ちていた有望選手の身体が、筋肉お化けのようになってしまう。そんな風にして「敗北していった選手を、私は何人も知っています。(p.56)
 その例が、
 長野オリンピックで金メダルをとりながら、その後、目に見えて凋落したスピードスケートの清水宏保選手。
 陸上では、末次慎吾選手。
 大相撲では、横綱になってから立ち合いのパワー強化のために剛体化した千代大海。
 水泳の現役では、瀬戸大也がそうだろう。永遠に萩野公介に勝てないだろう。

 

 

【「寝ゆる」で腸腰筋を鍛える】
 ここからが非常に重要なポイントなのですが、大腿の骨を支持している筋肉は、大腿四頭筋の中心である大腿直筋と、腸の内側にある腸腰筋です。腸腰筋は、身体の奥深くにあるインナーマッスルですが、じつを言えば、これこそが世界のトップアスリートたちが何とかして鍛えあげたいと切望してやまない筋肉なのです。腸腰筋が強ければ強いほど、身体全体のバランスがよくなり、軽快に動けるようになるためです。
 問題なのは、大腿四頭筋などとは違い、腸腰筋は身体の内側にある筋肉ですから、鍛えるのが非常に難しいことです。腸腰筋を使おうと思っても、先に大腿四頭筋のほうが反応してしまうためです。
 ところが「寝ゆる」では、その腸腰筋をピンポイントで刺激することができます。
 腸腰筋を鍛える「寝ゆる」を実践していると、そこに乗っている腸や腸間膜を刺激するので、内臓脂肪を燃やす体質になるらしい。つまり、「寝ゆる」は、ダイエット体操としても優れている。
 心理的なリラクゼーション効果においても、「寝ゆる」は「歩行」より優れているらしい。

 

 

【ゆる体操】
 結局、求められているのは、「カネはかからず、どこでもできて、安全で、指導者がいればもちろんいいけれど、いなくたって大丈夫」という体操。・・・中略・・・。
 パワーリハビリ、ヨガ、ストレッチ、エアロビクスを始め多くの運動法に習熟した私にとっても、この条件を完全に満たす運動法は「ゆる体操」しかありませんでした。(p.114)
 トレーニングマシンを使ったパワーリハビリや、プールを使った水中運動は、コストがかかり過ぎるし、いつでもどこでもできない。「ゆる体操」は、何時でも、誰でも、何処でもできる。完璧。
 また、人間は生まれてからしだいに身体は固まってゆくけれど、「ゆる体操」はその逆を行くわけだから、
 簡単に言えば、「ゆる体操」には「若返り」の効果があるということです。(p.120)

 

 

【尿失禁や尿漏れにも効果】
 尿漏れや尿失禁も、簡単な体操で改善できる場合があります。毎日、就寝前にベッドの上で「ゆる体操」を行うことにより、硬化していた子宮がゆるみ、たるんでいた骨盤底の筋肉が締まってくる。その結果、月経血を意識的に体内に溜め、尿のようにトイレでながす「月経血コントロール」ができるようになります。そして同時に尿失禁や尿漏れ、痔などが治ったり、軽快する可能性があるのです。(p.146)
 江戸時代の女性は、月経血コントロールができていたという話を聞いて、ベテランの芸妓さんに聞いたところ、
「ああ、そんなことでしたら、・・・中略・・・、ちり紙をちょっと栓がわりに丸めて入れておくだけでじゅうぶんでしたよ」・・・中略・・・。
 日本においてそうした習慣がすたれてしまったのは、明治時代の末から保健所が生活改善運動の一環としてナプキンを使うように指導した結果であることもわかってきました。(p.149)
 かつて日本人は、畳の上に正座したり、しゃがんだりすることで、無意識のうちに骨盤底を鍛える運動をしていました。それが急速に椅子の生活に転換したことで、長い時間をかけて培ってきた能力を失ってしまったのでしょう。(p.150)
 「寝ゆる」運動を繰り返せば改善するんだから、あとは、するかしないか自分次第。
 但し、電気パッドでインナーマッスルを刺激する高額な器械を買える人は、それでも可だけれど、心をゆるませるまでの同時効果はどうだろうか?

 

 

【吸引の呼吸】
 目の前にある物や人など、さまざまな存在を吸い込むような気持で呼吸すればいいのです。・・・中略・・・相手との関係は和やかになります。(p.173)
 会話をしている時はどうするのかというと、
 意識だけでも吸いつづければいいのです。相手の方や周囲にあるすべての存在を自分の中に吸い込むような気持でしゃべる。つねに「吸引」の気持ちをもちながら言葉をかけるようにします。(p.173)
 実際の呼吸と意識の呼吸が逆になるけれど、訓練次第。習熟すれば相手の心も、場の雰囲気も、すべてが緩んでくると書かれている。対面の仕事をしている人は、即、効果の程を実践で確認できる。

 

 

【イチローの言葉】
 2003年から2004年にかけてのオフに、彼がはっきりと言葉にしたことがあります。彼はこんなふうにいいました。
 「身体をゆるめることがポイントだ。自分はいま、身体をゆるめることに工夫している」
 さらに、「上半身をゆるめるためには、下半身をゆるめればうまくいく」とも語っていたそうです。(p.189-190)
 イチロー選手については、下記でも言及されている。
    《参照》   『意識のかたち』  高岡英夫  講談社
              【野球のイチローと将棋の羽生】

 

 

 

  高岡英夫・著の読書記録

     『「ゆる」身体・脳革命』

     『からだには希望がある』

     『意識のかたち』

 

<了>