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 「粘土を食べる」なんて言うと「野蛮人!」なんて思う人がいるかもしれない。でも、そう言う人こそ、この本を読んで自分自身の無知ぶりを自覚した方がいい。2012年3月初版。

 

 

【まえがき】
 古より健康維持と回復のために特別な粘土を摂取する習慣は世界中に存在した。人類が宇宙進出を果たした1960年代には、宇宙飛行士にとって重要なミネラル補給剤として採用された。さらに、1986年のチェルノブイリ原発事故の際には、放射能汚染対策として粘土は活躍し、2011年3月11日の東日本大震災にともなった福島第一原発事故による放射能漏れ対策としても注目されつつある。
 実は、過去も現在も粘土は我々人類にとっても大切な存在であったのだ。本書において、筆者は現代人と土との間の距離感を極限まで縮めることを目指す。つまり、土は地上の生命にとって根源的な物質であると同時に、愛着を持って接すべき物質であり、食することすらできる物質でもあるという認識を獲得、いや、回復していくことである。(p.3)
 読み終わってこれを書いている現在、手元に粘土があったらすぐに食べるだろう。体中に粘土を塗りたくって土の家に住んでみるのも、「いいかも・・・」 とすら思ったりする。

 

 

【NASAが気付いた粘土の効果】
 NASAは、粘土の摂取が劇的にカルシウム吸収効率を改善させるだけでなく、たくさんのミネラルが互いに補い合って、骨に関わる様々な病気にも効果を示すことに気付いたのだった。そして、粘土は全食事量の10%までは安全に含められるが、1~4%レベルで含めると、最も効率的にカルシウムを維持できるだけでなく、他のミネラル栄養素・微量元素も劇的に補給でき、解毒作用すら現れることが判明した。(p.19)
 宇宙飛行士は宇宙線に晒されることで骨粗鬆症になってしまうのだという。地上で有効な骨粗鬆症対策が宇宙空間では有効に機能せず、唯一有効だったのが「粘土の摂食」だった。

 

 

【世界的には「粘土食」ブーム】
 1990年代から、欧米では粘土食が脚光を浴び、テレビや雑誌などで頻繁に紹介されるようになってきた。今や世界中の多くの健康食品店では、健康のために経口摂取する粘土が当たり前のように販売されている状況である。
 だが、残念ながら、粘土が古来最も重宝された万能薬かつ食材であったことをほとんどの日本人は知らないようで、世界的な粘土食ブームにも取り残されている。(p.20)
 確かに、日本では、「粘土食」は殆ど脚光を浴びていない。
 「和食は健康に良い」という驕りから、「粘土食」の効果を軽んじているのだろうか。
 そうでないなら、腹黒い医薬品業界が、意図的にその普及を阻んでいるのである。

 

 

【粘土のデトックス効果】
 1991年、ティモシー・ジョーンズとマーティン・ダゲットは、医学誌『American Journal of Clinical Nutrition』において粘土がもたらすミネラル供給と解毒作用に関した論文を発表している。二人によって列記された数多くの例の中には、粘土の使用を通じて身体が浄化されるという顕著な証拠がいくつも含まれていた。・・・中略・・・。
 そして、粘土は食餌の毒、胃腸不良に関連したバクテリアの毒素、酸性症における水素イオン、又は妊娠と関わるステロイド代謝産物のような代謝毒素を吸収しうると結論付けられていた。つまり、吐き気、嘔吐、下痢を含めた、たくさんの共通した症状、すなわち、毒素過剰摂取の症状を改善し得るというものだった。(p.34)
 二人の研究論文以外にも、この本の前半には、粘土のもつ様々な効果・効用がテンコモリ記述されている。

 

 

【外用としても有効な粘土】
 本書のメインテーマは粘土食にあるが、粘土は皮膚炎や怪我など、皮膚に湿布(パック)したり、粘土風呂に入ることで、様々な効果を発揮しうることも触れておきたい。のちに詳述するが、粘土が効力を発するメカニズムは、実のところ、経口摂取しても、外用として用いても、同様に作用するからである。(p.36)
 エステに興味がある女性は、粘土の美容効果を知っているだろうけれど、泥を全身に塗りたくっているアフリカ原住民の映像をテレビで見ているだけの人は、単なる「土人=野蛮人」という理解なのだろうか? だとしたら、トンデモナイです。
 古代ローマで用いられていたレムニアン粘土の例などが記述されているけれど、レムニアン粘土は「印の押された土」、つまり「お墨付きの粘土」として重く用いられていたらしい。
 

 

【粘土を重用したインカ帝国から見えてくるもの】
 インカ文明を築いたインカの子孫の食事が調査されたことがあるが、彼らは日常的に粘土を食べていたことが分かっている。彼らの祖先となる「山の帝国」が破壊されたとき、インカの最後の統治者たちはアンデス山脈の奥地へと逃げた。その際、彼らは帝国の財宝以上に価値のある粘土を携帯し、人力で秘密の都市へと運ばれたという。(p.83)
 インカ帝国が山上に築かれたのは、そこに貴重な粘土があったからかもしれない。
 エベレストも山頂付近で貝塚が発見されているように、今日の山脈の多くは、造山運動により、かつて海底であったところが巨大な圧力によって押し上げられ岩盤化して山脈になっている場合が少なくない。
 かつて海底であったということは、陸地から流れてきた栄養分(ミネラル)が長年にわたって豊富に堆積していたのであり、なおかつ、それらの集積層は、海底にゆっくり沈降する過程で、電気的な凝集が生じやすいコロイド状態を生成する粒径である粘土の層を形成したのだろう。 あらゆる動植物にとって最も効果的な粘土とは、このような環境下でできた粘土のはずである。
 つまり、様々な粒径を含む単なる「土」ではなく、コロイド状態を生成し多くのミネラルを吸着する粒径の「粘土」であることが重要なのである。
 天然の粘土とは言え、読者が自宅の庭を掘って得た土を食べても、効果はまったく期待できないどころか、むしろ健康被害の方が懸念される。・・・中略・・・。我々が暮らす環境は汚染されつつあり、特に都会で暮らす人々にとって近隣の土壌は安全とは言えない。放射性物質に汚染された土壌はなおさらである。
 しかし、安全な粘土は、もはや有機物が認められない古代の岩層に天然のまま存在しており。加工に関しても、岩石化した塊を砕いて粉末状に戻す以外は、大きな労力は要さない。(p.43)
 安全な粘土は、食用(内用)や外用のみならず、農作物の肥料としても極めて大きな効果を発揮する。

 

 

【粘土の粒径がもつメカニズム】
 粘土は数㎛(マイクロメートル)以下の細かい粒子を指すことに触れたが、モンモリロナイトは粘土の中でも極めて細かい粒子からなり、粒径はコロイドを形成しえるサイズ(1㎛以下)に及ぶ。特に高品質のモンモリロナイトの粒径は10nm(ナノメートル=0.001㎛)というサイズに達することが確認されている。
 ここで再度説明するが、コロイド状とは、粒径が最小レベルなため、水に溶かして粒子が沈殿することなく、完全に溶けきる状態であり、可溶性イオン同然の状態とも言える。生体が体内に栄養素を吸収していくためには、コロイド・イオン状であることが前提条件なのである。(p.100)
 土質は粒径の大小順に、礫>砂>シルト>粘土と分類されるけれど、粘土の中でも最も粒径の小さいのがモンモリロナイトであるらしい。

 

 

【モンモリロナイト】
 実は、モンモリロナイトこそが、・・・中略・・・、NASAが宇宙飛行士の被曝に伴う骨粗鬆症対策に選んだ粘土だったのだ。(p.94)
 モンモリロナイトの特質は、吸着性だけでなく、膨脹による優れた吸収性を備えていることにある。この特性により、毒素排泄/解毒(デトックス)効果が得られるのだ。
 また、モンモリロナイトには細菌(バクテリア)に対する抗菌作用もある。個々の粘土粒子は極めて細かいためほとんどの細菌よりも小さい。もし感染が起こった際に粘土を摂取すると、粘膜は多かれ少なかれ粘土で溢れ、細菌は完全に粘土粒子に包囲される。そして、細菌は栄養源から分離され、無機物の中に埋め込まれる。これにより、細菌の成長と生存力が即座に削がれることになり、急性伝染病による消化管の中毒症状や感染の症状が即座に解消されることも珍しくないのだ。(p.101-102)

 さらに、モンモリロナイトはアミノ酸やペプチド鎖の形成に対して触媒として機能するとも考えられている。・・・中略・・・。モンモリロナイトは、現代人にこそうってつけの食材と言える。(p.106)
 「土を食べる」などと言うと往々にして拒否感を抱きかねないけれど、「粘土(特にモンモリロナイト)を食べる」ことは正に「多機能食品を食べる」ことに相当する。

 

 

【炭食】
 因みに粘土食ほどポピュラーではないが、動物たちは時折炭を食べることも知られている。その目的は、粘土食と同様に二次代謝産物の解毒にあるとされる。(p.111)
 モンモリロナイトを手に入れるのは容易ではないけれど、炭なら簡単に手に入るだろう。習字用の炭をすって、それを舐めちゃえばいいかも。と書きながら、お歯黒という気持ち悪いかつての風習は、もしかしたら健康面での効果から行われていたのではないだろうか・・・・、と思ったりもする。硯の材質は多くが粘土由来の粘板岩であるらしいことも、より効果を期待でそうな気がする。