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 ごみの問題に端を発して、耕地整理で失われた自然を回復させつつ、自然との共生教育を実施してきたドイツでの実話を、子供向けに語ったもの。1999年8月初版。

 

 

【年間のゴミ廃棄代で中古車一台買える】
 シェーファー先生の具体的な指導によって、ゴミを捨てるのにどれだけお金がかかっているかを試してみた。
 「みんながすてた缶やパックをひとつつくるには、20ペニヒもかかるんだよ」
 これには子どもたちはびっくりしました。だって、これまでゴミをすてるたびに、20ペニヒをすてていたことになるんですから。
 みんなが毎日学校ですてているゴミの量を一年分あわせてみると、なんと中古車一台が買えるほどのお金になります。(p.21)
 親も子もこのことを理解したので、土に返せないものは学校に持ってこないようにした。土に返せるものは、ミミズのカーロに食べてもらいブドウ畑の土に返すことにした。その結果、学校で出ていた多量のゴミは、ほとんどなくなった。

 

 

【耕地整理】
 ドイツでは1960年代1970年代に大規模な耕地整理が行われました。メルディンゲンでも、耕地整理がどんどんすすみました。これは人間や機械には便利ですが、それまで畑の畔や生け垣にすんでいた動物には大迷惑でした。すむところも、かくれるところもなくなり、まわりは農薬のまかれるトウモロコシやムギの畑ばかりになってしまったからです。(p.52-53)
 耕作には便利になったけれど、樹木が激減したことで、夏場の日差しで川に草が生え流れが滞るようになってしまった。それらを機械で浚渫していたらしい。

 

 

【小川の里親制度】
 市民やこどもたちに自分の住んでいるところを流れる小川の世話をしてもらったらどうですか、と提案しました。・・・中略・・・。
 シェーファー先生の提案を、政府の人もすばらしいと思いました。そこで州は、1983年にこの制度を正式に取り入れました。いまではバイエルン州など、ドイツのいろいろな所に「小川の里親制度」があって、学校の生徒やグループが小川の手入れや観察をしています。(p.60)
 川の両側にいろんな種類の木を植えて、日陰をつくることで草は生えなくなった。そして剪定した枝で垣根を作って樹木の根元を守ることで乾燥することなく生育も早くなり、いろんな生物も戻ってきて住むようになったという。
 日本の場合は、ライニングという川岸をコンクリートで覆ってしまう工法を採用したため、草による流れの滞留という問題は生じなかった。だからよけい自然回帰に時間がかかっている。
 日本国内で「小川の里親制度」に類するものなんてあるのだろうか?

 

 

【「ユーレ」誕生】
 ついに1993年にあたらしい活動が生れました。名前は「ユーレ」といいます。「ゆうれい」ではありませんよ。「若者と生き物のすみか」(ユーゲント ウント レーベンスラウム)という意味のドイツ語の頭文字をとった名前です。
 ユーレは、子どもたちが大人の仕事を観察したり、てつだったりして、ものをつくることやみんなで協力することを遊びながら学ぼうという活動です。 (p.80)
 ユーレの活動は放課後で、参加は自由。
 ドイツの学校は、日本の学校より終業時間は早いらしい。ゆえに、かなりまとまった時間が取れる。
 子供たちは、
「もし、たくさんの小さな子どもたちが、たくさんの小さな村で、たくさんの小さなことをしたら。世界はかわるだろう」
 というアフリカのことわざをモットーに、ユーレのさまざまな活動をしています。(p.82)
 ジャガイモを作るグループ、ブドウを作るグループ、森のことを学ぶグループ、そして町の観光ガイドを養成するグループなんていうのも紹介されている。

 

 

【ユーレの合言葉】
 自然は私たちを助けてくれます。
 だから、今度は私たちが自然を助けるのです。 (p120)
 日本人の子供たちは、ゲームやスマホにばっかり嵌っちゃっていて、自然への回帰なんて方向へは全然向かっていないだろう。完全に黄色信号である。この国(日本)は、実に奇妙な方向へ進んでいる。
   《参照》   『バカなおとなにならない脳』 養老孟司 (理論社)
              【ゲームを止められない】

 

<了>