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 家にこもってばかりで働かないニートのみならず、出勤していたって実質的には殆どすることなどなく何ら働いていない寄生虫そのものみたいな大方の地方行政公務員のみなさんも、この本の中に自分の投影を見出すだろう。ニートは「働かないアリ」で、公務員は「チーター」である。2010年12月初版。

 

 

【働かないオスのミツバチ】
 ミツバチたちにとっても働かないオスは交尾期を過ぎるとただの厄介者のようで、新しく生まれた女王が充分な回数の交尾を済ますと、働きバチはまだ巣にいるオスにエサを与えなくなり、激しく攻撃して巣から追い出してしまいます。追い出されたオスたちはむなしく死んでいくしかありません。ハチやアリの女王にとって、オスは精子を受け取るためだけに必要な存在でしかないのです。(p.16)
 養蜂家にとっても働かないオスは蜜を消費してしまうだけの存在なので、英語ではオスのミツバチは「居候」とか「厄介者」を意味するドロウン(drone)と名付けられているんだって。
 エッチが済んだら、エサなし、巣から排除。生きているのは僅かに1ヶ月。可哀そうに。
 もっと悲惨なのがある。

 

 

【昆虫版「阿部定」】
 アリは空中で交尾する種類が多いのですが、空中は鳥やコウモリなどの捕食者がいるため、とても危険です。あるアリでは、メスはオスが交尾器をつなぐといきなりオスの腹を噛み切って地上に下りてきてしまいます。危険な空中にいる時間をできるだけ短くするためのようですが、昆虫版「阿部定」でしょうか。残った腹の端から精子は送り込まれるのでメスから見れば問題ないようですが、噛み切られたほうからすればたまったものではないでしょう。(p.136-137)
「血も凍る・・」って言いたいけど、多分、「お腹から血が滴ってるうぅ・・・」

 

 

【8の字ダンス】
 8の字がどちらを向いているのかが密源の方角を、描かれる8の字の回数が密源までの距離を表していることがわかりました。ハチは「ダンス」という情報伝達法を使うことで、コロニー全体が必要とする労働力を調達していることがわかったのです。この業績により、フリッシュ博士にはノーベル賞が送られています。(p.30)
 「8の字ダンス」は有名だけど、その研究でノーベル賞をとった人の名前は、今知った。フォン・フリッシュ博士は、「刷り込み」の研究で有名なコンラート・ローレンツ博士のチョット先輩らしい。二人で共同研究も行っていた。

 

 

【齢間分業】
 ハチもアリも、非常に若いうちは幼虫や子どもの世話をし、その次に巣の維持に関わる仕事をし、最後は巣の外へエサを取りにいく仕事をする、という共通したパターンを示すのです。こういった年齢に伴う労働内容の変化は「齢間分業」とも呼ばれており、早くから注目されてきました。なぜなら、どのような齢間分業のパターンがコロニー全体の効率をあげるのか、という課題は古くからの研究テーマだったからです。(p.38)
 保母・保父さん、次は大工さん、そして狩人。だんだん危険度が増す。おじさん・おばさんは早いとこ死んでくれた方がコロニー全体の効率が良いということになる。年配者には、冷た~~い感じの冷感分業である。

 

 

【反応閾値】
 「反応閾値」=「仕事に対する腰の軽さの個体差」です。「反応閾値」とは耳慣れない言葉ですが、社会性昆虫が集団行動を制御する仕組みを理解するためには欠かせない概念ですので、 ・・・(中略)・・・ 。
 わかりやすく人間にたとえてみましょう。人間にはきれい好きな人とそうでもない人がいて、部屋がどのくらい散らかると清掃を始めるかが個人によって違っています。きれい好きな人は「汚れ」に対する反応閾値は低く、散らかっていても平気な人は反応閾値が高いということができます。ようするに「個性」と言い換えることもできるでしょう。(p.54)

 

 

【反応閾値モデル】
 反応閾値に個体差があると、必要な仕事に必要な数のワーカーを臨機応変に動員することができるのです。このメリットが、司令官をもつことができない社会性昆虫たちのコロニーに個性が存在する理由ではないかとする仮説が「反応閾値モデル」です。(p.57)
 このモデルには「働くのなんか絶対にイヤ!」という超強力(個性的)なサボリ屋さんは想定されていない。
 腰が軽いものから重いものまでまんべんなくおり、しかしさぼろうと思っているものはいない、という状態になっていれば、司令塔なきコロニーでも必要な労働力を必要な場所に配置できるし、いくつもの仕事が同時に生じてもそれに対処できるのです。よくできていると思いませんか? 面白いのは、「全員の腰が軽くてもダメ」というところで、様々な個体が交り合っていて、はじめてうまくいく点がキモです。(p.58)
 <働く:働かない>に関してもパレートの法則<2:8の法則>は成り立つ(維持される)らしい。
 働きアリの比率が2割を切ると、働いていないアリさんの一部は働き出すという。

 

 

【ハチやアリにも過労死が・・・】
 少し前までは野菜のハウス栽培で、花を受粉させて結実させるのにミツバチが使われていました。ところが、そうやってハウスに放たれたミツバチはなぜかすぐに数が減り、コロニーが壊滅してしまうのです。(p.71)
 限られた面積に花があるため労働集約的にならざるをえず過剰労働で寿命が縮むらしい、と書かれている。
 実験的に証明されたものではありませんが、ハチやアリにも「過労死」と呼べる現象があり、これはその一例なのではないかと思われます。(p.71)
 この説、ちょっと疑問。
 ハウスの外へ出られないからじゃないだろうか。ハチのむさしは、真赤に燃えてるお日様に試合をいどんで死んじゃったけど、真赤に燃えてるお日様の直射日光を浴びられなかったら、ハチさん鬱になる、きっと。人間だって同じだろう。チャンちゃんはお部屋で直射日光を浴び過ぎているから鬱になれない。パープリン性ノー天気症候群。これってストレスないから、短命になんてなれないですよ。

 

 

【シミュレーション結果】
 個体の反応閾値が均一な場合と、個体の反応閾値が異なる場合をセットしてシミュレーションし、労働効率とコロニーの存続期間を比較してみた。
 労働効率に関しては、前者の方が当然高くなる。しかし、コロニーの存続期間に関しては、
 仕事が一定期間以上処理されない場合はコロニーは死滅する、という条件を加えて実験をすると、なんと、働かないものがいるシステムのほうが、コロニーは平均して長い時間存続することがわかったのです。(p.74)
 つまり誰もが必ず疲れる以上、働かないものを常に含む非効率なシステムでこそ、長期的な存続が可能になり、長い時間を通してみたらそういうシステムが選ばれていた、ということになります。働かない働きアリは、怠けてコロニーの効率をさげる存在ではなく、それがいないとコロニーが存続できない、きわめて重要な存在だといえるのです。(p.75)
 この本のタイトルとなっている「働かないアリの意義」とは、このことである。
 冒頭の条件にマッチする実例は、卵の世話だという。誰かが舐めて卵の乾燥を防がないとたちまち死んでしまう。卵を放置すればコロニーは絶滅するのである。働かないアリでも、卵を舐めてやるくらいのことは“お安い御用”だろう。
 人間世界に実在する“働かないニート達”だって、環境や状況に大きな変動でもあれば、人類や地域社会の存続を支える重要な役割を担ってくれるはずである。