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 ちょっと “タイトル倒れ” という感じの内容だけれど、Googleを題材にして経済的な用語・知識・考え方を学びたい人にはいい本だろう。バランスシートを見る上での簡単なポイントも学べる。2008年9月初版。

 

 

【Google は○○で儲けている】
 Googleと言えば検索サイトというイメージだけれど、誰でも無料でGoogleの検索を利用できるのだから、検索自体はGoogleが成長する直接的な力にはなっていない。
 その答えは 「検索」 ではなく 「広告」 ですね! その儲けから、グーグルは次々と新たなサービスへ投資しているのです。(p.67)

 

 

【「ネットワーク」社会で生き残る、ビジネス必勝パターンの法則】
 その1  無料サービスで膨大な数の利用者を確保!
 その2  彼らのネット利用プロセスに、広告・販売などのキャッシュ・ポイントを上手に組み込む!(p.66)
 では、どんな風に広告を組み込んでいるのかというと、アドワースとアドセンンスの2パターンがある。

 

 

【アドワーズ広告】
 Googleのサイトで何か用語を入れて検索すれば、頁の上部と右側にスポンサーサイトのエリアが設けられているのが分かるけれど、アドワーズ広告は、このエリアに表示されているもの。
 アドワーズ広告は、「特定のキーワードを入札方式で 『1クリック30円』 のような形で広告を出したい企業(スポンサー)に販売する」 という方式です。(p.65)
 Adwords = Ad(=advertisement)+words

 

 

【アドセンス広告】
 検索結果で表示された上位サイトなどのリンク先に移動すると、そのサイトにも 「ads by グーグル」 という広告スペースが作られている。ここに表示されるのがアドセンス広告。
 個人や企業などが運営するサイトやブログに、スポンサー企業のリンクを貼ることにより、1クリック当たりいくらという形で広告収入を手にすることができる仕組みです。(p.65-66)
 このヤフーのブログ下部にも、1年ほど前から広告が付く仕組みになったけれど、インタレストマッチと書かれているから、アドインマッチとでも言うのだろうか。

 

 

【Google による YouTube 買収】
 YouTubeは2005年2月に設立したばかりの、ほとんど歴史のない会社です。このような会社を、なんと 「設立からわずか2年弱(2006年10月時点)」 たった頃に、2000億円もの対価で買い取りたいという買収提案が起きるのですから、20世紀には考えられなかったような驚きの出来事です。(p.68-69)
 当時の YouTube の年間売上は18億円だったというから、年商の111倍もの額で買収提案したのである! こんな破格な買収提案を行ったのも、動画というアクセス数が非常に多いサイトだから、これを有効活用できると見込んだためである。
 Google側に言わせれば、
 「1日に1億以上も閲覧されているのに、年間の収益がたったの18億円??」 (p.75)
 という驚きだったのだろう。

 

 

【買収額:2000億円の算出根拠】
《年間利益額》
 ビュー当たりの広告クリック率を3%、1クリックの平均収入を100円とすると、
 1日当たり 1億回 × 0.03 × 100円 = 3億円。
 年間では、 3億円 × 365日 = 1095億円。
 IT企業の必要経費は微々たるものだから、法人税として支払う額を考慮しても50%は利益として想定することができる。すなわち年間利益として500億円程度は見込める。

 

 

《インターネット利用者の増加率》
 インターネット利用者数は7年間で約2.66倍に増えました。(p.87)
 これを年率に換算すると15%になる。
 1年後 ・・・ 1095億円
 2年後 ・・・ 1095億円 × 1.15(15%アップ) = 1259億円
 3年後 ・・・ 1259億円 × 1.15(15%アップ) = 1448億円
 3年間の増収効果を合計すると、1095+1259+1448=3802億円! その半分が利益としても、1901億円アップと、ほぼM&Aにかかった投資額をたった3年で回収することが可能になります。(p.79)

 

 

【Google経済学は、汎論として活用しうるか?】
 世界規模で急速に成長しつつあるインターネット利用者という巨大な母集団を対象にできるからこそ、Googleの様な桁外れな収益を上げることができる。
 日本が強い物づくり製品を製造する中小企業は、それを必要とする大企業のみが利用者だから、Googleのような成長方法は何の参考にもならない。中小企業がインターネットを活用する方法は、独自の技術を複数の言語でHPにアップしておき、必要とする国内外の企業によって発見され、注文を受けるということくらいだろう。
 Google経済学は、一般消費者を対象とした製品・食品・衣料品などを販売する企業ならば、ある程度参考にできる、というだけだろう。
 Googleのようなインターネットを活用した広告仲介業とでもいうべき業種は、プラットホームを制した限られた企業だけが利益を上げるうえで参考にできるビジネスモデルというだけである。

 

 

【M&Aの成功条件】
(条件1)相手の持つ 「豊富な経営資源」 が、まだ十分に生かされていない
(条件2)「シナジー(相乗)効果」 が見込める(自社の持つキャッシュ・ポイントを
     相手の経営資源に乗せると、爆発的な収益アップが見込める)
(条件3)買収後、相手の従業員と友好的な関係が築ける
 この3つの条件がすべて満たされて初めてM&Aは大成功を収めることが可能になるのです。(p.82)

 

 

【都市圏人口】
 東京・大阪・名古屋の3大都市圏には、「日本全体の44.9%に当たる5742万人の人口がいる。
 ・・・(中略)・・・ 。
 「わずか6%ほどの面積の中に、日本の総人口の44.9%が集中している!!」 (p.169)
 大都市圏とは、半径50kmの面積を意味しているのだけれど、東京圏だけでいえば、
 約2%の面積に、日本の総人口の24.8%が集中! (p.169)
 50分の1の面積に4分の1の人口(3000万人)が集積しているのである。
 各県の県庁所在地を中心に半径50km圏を想定して人口を当て嵌めて考えてみればいい。
 山梨県甲府市圏の場合は、50分の1の面積に、200分の1の人口(60万人)が集積(ではなく散在)しているのである。
 大都市圏のビジネスモデルが、地方では全然使えない根本的な要因は、このような人口集中度合いと収入の格差によっているだろう。
 人口集中度合いの格差は、インターネットを活用すれば超えられるけれど、かつて東国原知事がいた宮崎県のように、地方自体にアピールできる個性がないとインターネットもあまり意味はない。

 

 

【預金金利と消費税】
 預金738兆円 × 3% =22.14兆円
 現状の金利収入推計   = 2.22兆円
 増加分             19.92兆円
 これを見てわかるのは、「日本の預金金利が2%ちょっと上昇するだけ」 で、なんと 「20兆円もの利子収入」 が増え、家計が潤う、ということです。
 現在の預金金利は、0.3%で、これを3%にすれば、20兆円分ほど家計が潤うといっている。
 なお、このうち20%を税金として、税収は20兆円×20%=4兆円も増えるのです。
 ご参考までに、日本における消費税の税収が約10兆円で、消費税率が5%ですから、消費税1%当たり約2兆円の税収と考えられます。
 つまり、預金金利を2%上昇させることができれば、4兆円の税収が増えるので、実質的に消費税2%アップとほぼ同じ政府歳入アップが見込めるということですね。
 ・・・(中略)・・・、国としては同じ増税効果があるなら、実行しない手はないと思うのですが・・・。(p.194)
 そうでなくても円高に進行している現在の国際経済状況下でこの案を実施したら、円買いが殺到して思いっ切り円高が進行する。その結果、輸出で稼いでいる大企業は収益が上がらなくなり法人税収入は激減してしまう。 トータルの政府歳入は明らかにマイナスになる。
 著者は単なる公認会計士さんであって日本の財務大臣ではないから、どう考えようと自由である。

 

 

【Google経営学・社会学】
 Googleは経済学として研究対象にするより、経営学や社会学の観点で学びの対象とした方が圧倒的に面白いだろう。
 下記は、Googleについて多くを語っている著作。
   《参照》   『ウェブ時代 5つの定理』 梅田望夫 (文藝春秋)
           『グーグルが日本を破壊する』 竹内一正 (PHP新書)

 

 

<了>