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 表紙の配色がかなりダサイ。前半にバイキング、後半に北欧神話が記述されている。

 

 

【バイキング】
「ノルマン(北方の人)」 とはこの場合、デンマーク人、スウェーデン人、ノルウェー人を意味する。 ・・・(中略)・・・ 。この 「ノルマン」 すなわちこの場合北欧のバイキングたちは、8世紀から11世紀までの250年間ほとんど全欧州にわたって金銀財宝を略奪し、美女を拉致凌辱し、住民や聖職者たちを虐殺した野蛮極まりない海賊遠征軍であり、その猛威に西欧の人々は震え上がってしまったのだ。(p.9)
 バイキングの最大の美徳は勇猛ということに尽きた。彼らは涙と悲哀の感情を嫌い、愛する者の死に対しても泣かなかったという。何しろ食卓の上席を剣で争うことなど日常茶飯事だったのだ。(p.22)
 バイキングのおっちゃんたちが蛮勇を恣に大活躍していた頃、日本は平安時代で、ヘナヘナ貴族のおっちゃんたちは、恋の歌を詠み夜這いをして優雅に暮らしていたのである。
 熱風砂漠や北欧寒帯の不毛の地を生活基盤とする遊牧民や海賊は、周辺で定住生活をしている民族に対して容赦ない略奪をしてきたのが歴史上の事実である。日本北方近海の森林地帯に、フィヨルド豊かな港をもつバイキングのような民族がいなくてよかったと、地球の地理形状に感謝すべきだろう。

 

 

【バイキングという呼称の由来】
 いろんな説があるけれど、
 もっとも有力な説は 「ヴィーク(入江)」 から来たという説である。「イング」 は 「人」 の意味である。次いで、「ヴィーキア」 説も根強い。これは古北欧語の 「略奪品をもって逃走する海賊」 の意味(動詞)である。しかし、結局入江で待ち伏せするすなわち 「入江の住人」 説がもっとも支持者の多い通説となっている。(p.12)

 

 

【グリーンランドの名前の由来】
 982年に赤毛のエリクという男が殺人の罪を犯してアイスランドから3年の追放の刑を受けた。(p.35)
 グリーンランドに追放され3回越冬して帰国した後、
 彼はそこでとんでもない大法螺を吹いたのだ。西の方で素晴らしい緑の大地(グリーンランド)を発見した、と。(p.35)
 この大法螺を信じて、大勢がグリーンランドに植民したけれど、バイキングの子孫たちは1408年の記録を最後に滅びたということである。
 法螺がそのまま現在でも地名として残っているなんて、エリクさんまんざらでもないだろう。

 

 

【流産文明】
 バイキングはヨーロッパに破壊や略奪や殺戮や流血をもたらし、2,3の植民も行った。しかしやがてバイキングの故郷である北欧はそれからキリスト教の信仰と文化によって逆にヨーロッパから征服されてしまうのである。だからこそ、トインビーはスカンジナビアを歴史的には流産文明地域としたのである。(p,71)
 イングランドなどはノルマンジー征服王朝だから、植民先でノルマンの血族はそれなりに継続してはいるけれど、彼らはノルマンの文化を広めたわけではない。植民先の文化や言語の中に同化されていったのである。

 

 

【北欧三国の現代のバイキング観】
 北欧ではバイキングは一般にどのように考えられているかであるか、一言でまとめればノルウェーでは大いに誇りとしている。 ・・・(中略)・・・ 。デンマークでは ・・・(中略)・・・ 「北欧の商人」 だけあって ・・・(中略)・・・ 観光産業の目玉に利用している。
 スウェーデンでは北欧でもっともソフィスティケイトした国民だけあって、野蛮なバイキングと現代のスウェーデンとは関係ないとして、あまりバイキングのことを表に出したがらない傾向があった。かつて日本でバイキング展企画が中止になったのもスウェーデンあたりの 「国辱もの」 とする反対の声が大きかったからである。しかしその後日本ではバイキングに対して何の偏見も誤解もなく、むしろ歴史のロマンと考えられているらしいことが、分かり始めて、最近は貿易通商面での進出に役立つ広報的宣伝効果ありとしてその一翼を担うまでになっている。(p.73)
 多分、日本人は “海賊のバイキング” と訊いても、倭寇という昔の日本人のおっちゃんたち程度のものと思っているのだろう。バイキングって涙も凍りつくほど野蛮な “海賊” だったことを、現代日本人は認識していない。たんなる食文化形式の名前としてしか知らない人が多いに違いない。

 

 

【北欧神話の生成】
 北欧神話の生成については比較神話学の立場からいろいろと解釈があって、 ・・・(中略)・・・ もっとも有力なのがイラン文化との繋がりである。つまりイラン文化の二元論的黙示録的終末論(世界没落)の影響が強いと言われている。言い換えればマニ教というイラン宗教の分流が当時のイラン帝国以外に広がって(4世紀以降)北欧に入ったのではないかとされていることも付記しておく。(p.84)
   《参照》   『マニ教とゾロアスター教』 山本由美子 (山川出版社)
             【折衷主義的】
             【マニ教の二元論】

 

 

【2つの神族】
 北欧神話の神々には2種類あって、1つはエーシール神族、他はバニール神族である。バニール神族にはニオルド、フレイ、そしてフレイヤが属している。これは二神族の戦いののちに和解が行われ、人質としてアスガルドにすむようになったというのである(アスガルドは神々の館)。これら3神はそれぞれ受胎と多産と生育の神である。バニール神族の中でもっとも強くかつ人気のあるのはニオルドの息子のフレイである。これは性交の神でウップサラ祭殿にはオーディン、トールとともに祭られ、巨大な陽根が立っていた。・・・(中略)・・・。
 これら3神はオーディンやトールやチールよりも古い神々であり、青銅時代(BC500年以前)から崇められてきたものだという。これらがバイキング時代にエーシール神族の中に吸収されてしまったらしい。(p.87-88)
 エーシール神族のオーディンは神々の王であり主神。トールは雷神。チールは戦いの神。オーディンは知恵を手に入れるために、躊躇うことなく自らの目を1つ刳り抜いてそれを手に入れた。それゆえ隻眼の神なのだけれど、神話を知らぬ一般人にとっては、海賊バイキングの蛮勇的象徴のように思われやすい。
 バニール神族のニオルドは主神であり、渚と桟橋の神。フレイは侏儒たちを統べる自然の神。フレイの妹であるフレイヤは愛と美の女神ということになっている。
 北欧神話のいくつかが掲載されているけれど、興味があって読んだわけではないから、ほとんど頭に残らない。
 そもそも、最近チャンちゃんの頭は読書モードになっていないのである。

 

 

【リンゴ】
 イードゥン。神々に永遠の若さを与えるリンゴを保管する女神。リンゴは北欧古代から生と豊穣を象徴する果物とされてきた。(p.88)
 イングランド北部はノルウェーから海を挟んで最も近い国であるから、ケルト文化とも共通していたのだろう。
   《参照》   『ケルトの白馬』 ローズマリー・サトクリフ (ほるぷ出版)
             【血の聖杯】

 

【誤植】
 トールがしぶしぶ手を話した途端、ロキは一目散に逃げ去ってしまった。(p.115)
 自分の読書期録を読み返すとこのような誤変換をしばしば見つけるけれど、製本された図書の中で見ることは珍しい。2005年12月初版本だけど、再販時には直したほうがいいですよ、出版社さん。

<了>