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 ヨーロッパ vs アメリカという対比の中で記述されている。同じようなことが何度も繰り返し記述されていた。2003年5月初版の書籍だから、この書籍が書かれた頃より、オバマ大統領が登場した分、世界は少し平和の側へ、すなわちネオコンの主張とは逆の方向へシフトしている。
   《参照》   『やがてアメリカ発の大恐慌が襲いくる』 副島隆彦 (ビジネス社)

                 【ネオコン】

 

 

【軍事力格差】
 アメリカには海外からの撤退を主張する政治家が多いが、現実には、冷戦期のほとんどより海外に介入する頻度が高くなった。また。軍事技術が進歩したため、空爆とミサイル攻撃というはるかに限定的な方法で、世界各地にこれまでより自由に軍事力を行使できるようになり、この形での介入が増えている。このように、冷戦の終結によって、これまでも大きかった欧米間の軍事力格差が、さらに拡大することになった。(p.38)
 冷戦期間とは、第二次大戦終結後から1991年のソ連崩壊までの期間を言う。

 

 

【強さの心理と弱さの心理】
 イギリスのある論者は、アメリカが軍事力を使いたがることを批判して、「金槌を持っていると、すべての問題が釘のようにみえてくる」 という古い諺をもちだしている。確かにそうだ。だが、強大な軍事力をもたない国には逆の危険がある。金槌を持っていないと、どんな問題も釘のようだとは考えたくなくなりかねないのだ。強さの心理と弱さの心理によって、現在のアメリカとヨーロッパの違いを、もちろんすべてではないが、かなりの程度まで説明できる。(p.39-40)
 ただし、ヨーロッパの中でも、イギリスだけは他の諸国とはやや異なり、アメリカと歩調を合わせている面がある。

 

 

【ホッブスからカントへ】
 ヨーロッパは新しい秩序を追求するなかで、古い法則から自由になり、権力政治の考え方からすら自由になった。万人に対する万人の戦いというホッブスの世界から抜け出し、カントのいう永遠平和の世界に入っているのだ。(p.78)
 しかし、・・・
 じつのところ、ヨーロッパの新しい秩序でカントの難問を解決しているのはアメリカである。(p.78)
 なぜなら、ヨーロッパ域外から安全保障を提供しているのはアメリカだからである。
 アメリカの軍事力によらないでカントの難問を実現する方法として
 ヨーロッパ以外の地域に関して自分たちの役割があるとすれば、それは武力の行使に反対することである。 ・・・(中略)・・・ ヨーロッパの戦略的な活動範囲を拡大することではないし、世界的な影響力を拡大することですらない。アメリカの暴走を食い止め、「多国間主義に誘導すること」 が目的だと主張される。(p.91)
 つまりこれはアメリカの一極支配を脱するために、多極間による軍事力の均衡創出を意味するものだから、結局、カントの難問解決策は、ホッブスの世界への回帰であり、ネオコンにレゾンデトールを与えることになってしまう。
 この筋での主張を展開していたのが、トニー・ブレア英国首相の側近だったクーパーという人物である。

 

 

【二重基準(ダブルスタンダード)】
 クーパーは主張する。「ポストモダンの世界にとっての課題は、二重基準に慣れることである」。ヨーロッパ域内では 「法律に基づき、開かれた協力関係に基づいて」 行動できる。しかしヨーロッパ域外との関係では、「昔の荒っぽい方法に戻る必要があり、軍事力、先制攻撃、策略など、必要な手段を使わなければならない」(p.100-101)
 これぞヨーロッパの伝統的スタイルを素直に表現したネオコンの主張。
 新しい時代も何もあったものではない。タ~~~~コ。
 ブレア首相は、このやり方でアメリカと組んで、中東でドンパチを画策していたのである。
 英米合作の911ニューヨーク・テロにおいて、BBCは倒壊する予定のビルがまだ倒壊していない時に、倒壊したとフライング報道していたのである。
   《参照》  9.11 ミステリー2 911事件の謎

            (7:25~)

 
 
【アメリカの覇権は続く!?】
 自国が歴史になかで特別な位置にあるとするつねに変わらぬアメリカの見方、自国の利益と世界の利益は同一だとするアメリカの確信は、歓迎されることもあれば、馬鹿にされることもあれば、嘆かれる場合もあるだろう。(p.120)
 力技の独尊的なアメリカが世界の中心にそのままい続けることなんて、絶対に歓迎しない。嘆くべきことである。しかし、そうなり続けるであろうことの根拠を著者は以下のように記述している。
 アメリカの力の源泉が破壊されるほどの規模をもつ軍事的あるいは経済的な惨事が起こらないかぎり、長期にわたるアメリカ覇権時代はやっと始まったばかりだと想定するのが順当である。人口動態の趨勢をみると、アメリカの人口は増加率が高いうえに、高齢化していないが、ヨーロッパでは人口が減少し、高齢化が進んでいる。エコノミスト誌によれば、アメリカの経済規模は現在、ヨーロッパとほぼ同じだが、現在の趨勢が変わらなければ、2050年にはヨーロッパの2倍以上になるという。(p.121)
 この本が書かれたのは2003年以前だから、その後に、アメリカは経済的な惨事に遭遇している。
 むしろ、惨事に遭遇した後に登場したオバマ大統領が、秀でた手腕を発揮してアメリカを立て直しつつ、世界をも良き方向へ導きだしている。
 広島原爆祈念式典へのアメリカ駐日大使派遣、国連事務総長の出席など、世界の潮流は現在大きく変わりつつある。人類は、地球全体に及ぶ苛烈なショック療法に依ることなく、愛に満ちた地球を再建できる可能性が萌しつつある段階だろう。世界をネオコンの論理とは逆に進行させる可能性が萌しているのである。
 ネオコンが巻き返して平和を基調とする現在の流れを乱すべく世界に係わるようなら、地球全体は、あまりにも苛烈な再建方法に晒されることになってしまうだろう。
 
<了>