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 国内外にいくつもの企業を経営しながら、ビジネスコンサルタント会社の菱研をも経営し、出色のシャーマンでもある著者。ビジネスに関係ない人々が読んでもためになる内容が盛りだくさんである。
 この講演録は特別編まで入れて全部で25巻ある。これから1週間で全部読む!ことにした。ジャンルを集中させない主義の私の読書記録が不可能になるけれど、著者の講演内容は多岐にわたっているから、それほど抑圧されることもないだろう。それにしても25冊は、やっぱりちょっと・・・シンドイ。


【関東の経営者気質】
 武士の気質は現代の何に相当するかと言えば、ビジネスマンもしくは経営者の気質です。昔のお城勤めがいまの会社勤め、それから一国一城の主というのが中小企業のオーナーですからね。そういう関東の経営者が関東の気風に基づいて、武将の気概を養うところ、あるいは養ってくれるところ、それが井草八幡なのです。(p.19)
 これを読んで、戦国武将のことを記述した書物を好む経営者が多い理由が分かった。
 死ぬときには死ぬし、やられるときはやられるし、ダメになったら一からやり直せばいいよ、と。そういう思い切りというか、腹がなければいけない。それが武将の心だよ、と井草八幡様が教えているわけです。(p.60)
 井草八幡は八幡様の摂社。総本社である宇佐八幡の祭神は神功皇后・応神天皇という親子であり、先手を打って朝鮮征伐に出た天皇でもあるからその神霊界は軍神としての性格ももっている。

 

 

【慈雲尊者、臨済、白隠、諸葛孔明から学ぶ人生の意義】
 江戸時代の書の大家に慈雲という人がおります。雲伝神道と言って、三輪大社の三輪神道の流れを汲む神道を起こした人です。その前に密教もやり、その前には禅も儒教もやるという、それぐらいに道を極めたひとでもあるのですが、空海以降の書は誰のが一番かと問うと、「慈雲だ」 と答える人が多いくらいに書も抜群。(p.33)
 この書・悟り・霊格・知識において当代随一の慈雲さん、再三再四 「お話が聞きたい」 という情熱ある依頼をする若者にほだされて、講義をした。
 どういうふうにご臨終になったかと言うと、講義をしながらですよ。(p.34)
 こうような死にざまの人は他にもいる。
 やる気が出ない、元気が出ない、もうダメだあと落ち込んで、意気消沈しているのは御魂が死んでいる証拠です。魂が死んでいるわけですよ。魂が生き生きとやる気に燃え、意欲に燃えて肉体がなくなったあとでもさらに生きていくんだあ! と言いながら臨済のように白隠のようにカーツと言いながら座したまま死んでいく。死骸に水をパーッとかけて司馬の仲達を追い払った諸葛孔明のように、やっぱり肉体がある間は目いっぱい神仏のために、世のために生きていく。それがまさに魂の喜びであり、人生の意義というものです。(p.56)
 爺臭い若者が多いと言われる昨今、「現役のまま死んでゆく気迫なくてして、何ゆえの人生か!」 ということ。

 

 

【本音と建前 : 関東vs大阪vs京都】
 大阪の場合は二重構造なわけです。本音と建前は違うわけです。関東は本当に鯉の吹き流しで、本音と建前の使い分けはしません。問題は京都ですね。本音と建て前という二重構造であるのはもちろんですが、その本音にも7種類ぐらいありますからね。どれが本音なのか、超能力を発揮していかなければなかなかわかりません。(p.75)
 これを読んでゲラゲラ笑いながらも、「京都は、やっぱり、そうか・・・」 と思う。関東の凡人は “いけず” の京都にはとうてい太刀打ちできそうもない。
   《参照》   『よそさんは京都のことを勘違いしたはる』 山中恵美子 (学研)
             【おおきに】
             【いけず】

 

 

【勝ちパターン】
 一つの勝ちパターンがなければいけないんです。何でもできるというのは、要するに受け身なんですね。相手の出方に対してどのようにでも受け応えができるというのは、一見、実力があるように見えてそのじつ、どうしても受け身になってしまうものだから、横綱になれない。
 前みつを取ったら誰にも負けない千代の富士とか、突き出し専門の北の湖。それから曙だって突っ張り一本でしょう。 (p.78)
 いわゆる器用貧乏の宿命を語ってもいる、とも言えそうである。

 

 

【「信頼し 疑いもてど 信頼せよ この努力こそ 人徳となれ」】
 どんな組織であろうと、疑わしい人はいっぱいいますよ。自分も疑われているんだけれども、疑わしい人はいくらでもいる。けれど、どんなに疑わしくても確証はないわけです。だから、用心はするけれども、それでも敢えて信頼しよう、と。最悪の場合は解雇するかもしれないけれど、敢えて信頼してゆこう、と。そういうふうにしていかないと人徳というのは出てこないんですよ。(p.82)
 組織の上層部以下全部が均衡を欠きデマを容易に蔓延らす愚者の集団であっても、頂点に立つ人がこのような人であれば、李下で冠を直してあらぬ疑惑をもたれてしまったであって人も、神仏に潔白を訴える心に光は射すというもの。

 

 

【「人徳を磨くには無傷ではいられない」】
 どこまでも信頼する努力をして、10人信頼して結果、2人か3人に裏切られたとしても、つねに信頼する努力をしていると、少なくとも7人は信頼に応えてくれます。
 だからやっぱり、無傷ではいられないですな。人徳を磨くには無傷ではできない。(p.85)
 「人徳があれば裏切られるはずがない」 と考えてしまうのは、あらぬ理想論を勝手に現実に当て嵌めたがっている夢想家的誤謬である。どこまでも経験論から導き出された真実は、「人徳を磨くには無傷ではいられない」 である。

 

 

【お接待の極意】
 お接待の極意はおのれを殺すこと。だけども、おのれを殺していることを相手に知れてしまうと、向こうも気を遣うわけですよ。「気を遣っているなあ」 と気を遣わせないように気を遣わなければいけない。それにはどうしたらいいのかと言うと、気を遣いながらも自分も楽しんでいる。自分もそのひとときを楽しんでいる。・・・中略・・・。すると、「彼もたのしんでいるなあ」 ということで、相手も心から楽しめるわけですよ。(p.95)
 趣味が多くて何でも楽しんでいると、あの人と趣味が合うからと言って、どんどんどんどん人が寄って人脈が広がりますね。
 だから、もてなし上手であると同時に、もてなされ上手というのは人間関係、友達の輪を広げていく重要なファクターであるわけです。(p.104)
 今は世の中が僅かではあるけれど分かってきたから、この記述に違和感はないし、正しいことがよく分かる。しかし、ビジネスになど全然興味がなく一匹狼的な孤高を良しとしていた若い頃だったら、「まったく関わりのない世界のこと」 としばし不快感を持てあました後、憮然としてこの書籍をバシーンと閉じていたことだろう。

 

 

【酒酔い防止法】
 ビタミンEを3粒か4粒飲んで、おトイレで水を1杯飲むんですよ。(p.114)
 たとえ先天的にアルデヒド分解酵素を体内に持たない人であっても、経営のプロならここまでする。
 

<了>