電気自動車の開発に携わってきた著者。太陽電池と電気自動車の技術によって、少数の者たちが(化石)エネルギーを独占的に供給(支配)してきたことに象徴される 「ひとり勝ち」文明から脱出し、環境問題をも含めて明るい未来を開くことができるという論旨で記述されている。
【太陽電池の効率】
エンジンではなくモーターで動く自動車は、太陽電池を基とする電気自動車ばかりではなく、水素で動く燃料電池車もあるけれど、これとの比較は何も記述されていない。
現在、実用化されている太陽電池の効率は15%ぐらいと考えてください。太陽のエネルギーの15%を電気に変えられるということです。この効率は、太陽光のうちの赤に近い光だけが有効に電気に変えられるというところからきています。そのため、原理的に見て、いまの太陽電池は限界に近い効率にまできています。
この効率を1パーセントでも上げるのはかなり大変です。 (p.88)
太陽電池に関しては、技術的にこれ以上の効率を追求するよりは、価格を下げて供給ですべき段階に来ている。つまり、大量生産による価格低下を実現させるために、自動車の主要なエネルギーを、石油から電気へと変遷させるべく人々の意識を変えるモーメンタムとして、この書籍を著したということらしい。この効率を1パーセントでも上げるのはかなり大変です。 (p.88)
エンジンではなくモーターで動く自動車は、太陽電池を基とする電気自動車ばかりではなく、水素で動く燃料電池車もあるけれど、これとの比較は何も記述されていない。
【三種の神器】
いずれの技術も、既に桁違いに大きな経済規模のビジネスになっている。
電気自動車の性能を上げるために必要な三種の神器といった、電池、インバーター用のトランジスタ、それからモーター用の磁石、その三つのうちの二つは日本人による発明品です。
残りのひとつのトランジスタ自体はアメリカの発明品ですけれども、いいトランジスタを作ったというのは日本の技術です。
リチウムイオン電池を発明されたのは旭化成の吉野彰さんです。・・・中略・・・。
ネオジウム―鉄磁石も、当時、住友特殊金属にいた佐川眞人さんが発明しました。・・・中略・・・。
こういう偉大な人たちは、世間でももっと広く知られてほしいものです。 (p.132-133)
優れた日本人技術者たちの存在を、同じ日本人として誇らしく思う。残りのひとつのトランジスタ自体はアメリカの発明品ですけれども、いいトランジスタを作ったというのは日本の技術です。
リチウムイオン電池を発明されたのは旭化成の吉野彰さんです。・・・中略・・・。
ネオジウム―鉄磁石も、当時、住友特殊金属にいた佐川眞人さんが発明しました。・・・中略・・・。
こういう偉大な人たちは、世間でももっと広く知られてほしいものです。 (p.132-133)
いずれの技術も、既に桁違いに大きな経済規模のビジネスになっている。
【高級車路線】
《参照》 『アメリカに車輪をつけた男』 飛田浩昭 (JAMCA)
マクドナルドの初代社長藤田田さんの本に、
「高級なイメージで世間に出た商品は普及が速くなる」
と書いてあって、なるほどなぁと感じました。
それに、小型自動車は、せいぜい百万円、高くても百五十万円しか消費者はだしてくれませんよね。
そこから勝負するのは、むずかしいだろうと思いました。 (p.137)
かつてフォードが大衆車を大量生産するのに先んじて、お金持ちを対象に資金集めを行ったという先例。「高級なイメージで世間に出た商品は普及が速くなる」
と書いてあって、なるほどなぁと感じました。
それに、小型自動車は、せいぜい百万円、高くても百五十万円しか消費者はだしてくれませんよね。
そこから勝負するのは、むずかしいだろうと思いました。 (p.137)
《参照》 『アメリカに車輪をつけた男』 飛田浩昭 (JAMCA)
【資金計画】
著者が開発したエリーカという電気自動車は、最高速度370km、8輪駆動で、高級感ある車内を広く設計するためにモーターは個々のタイヤの中に納めてしまった(!)という。
著者が開発したエリーカという電気自動車は、最高速度370km、8輪駆動で、高級感ある車内を広く設計するためにモーターは個々のタイヤの中に納めてしまった(!)という。
【古い技術が新しい技術へ変化するのは、わずか7年】
エネルギー問題の専門家であるそのコンサルタントは、
「古い技術が新しい技術に変化するときって、わずか、7年しかかからないんだよ」
と教えてくれたからです。 (p.156)
トランスミッションのマニュアルからオートマへの変化。レコードからCDプレーヤー、固定電話から携帯電話、フィルムカメラからデジタルカメラなども、すべて7年以内で変化を完了してしまっている。「古い技術が新しい技術に変化するときって、わずか、7年しかかからないんだよ」
と教えてくれたからです。 (p.156)
【古い技術が新しい技術へ変化した場合、マーケットは?】
カメラ、CDの事例では、マーケットは、横這いではなく倍増しているという。これが、新しい技術による “雇用喪失” を怖れなくていい基本的な根拠らしい。
しかし、エンジン自動車から電池自動車への移行は、部品数の激減を伴う故に、現実には既存のバリューチェーンの存在が、雇用問題に深くかかわって技術革新のブレーキ役になっている。
トヨタやホンダなども、バリューチェーンを考慮して、電気自動車の開発をしつつ、移行期用としてハイブリッド車の市場投入を計画的に実施してきたはずである。
カメラ、CDの事例では、マーケットは、横這いではなく倍増しているという。これが、新しい技術による “雇用喪失” を怖れなくていい基本的な根拠らしい。
しかし、エンジン自動車から電池自動車への移行は、部品数の激減を伴う故に、現実には既存のバリューチェーンの存在が、雇用問題に深くかかわって技術革新のブレーキ役になっている。
バリューチェーンとは、クリステンセンの定義によれば、製造業でいうと、原材料を作る会社、それを加工して部品を供給する会社、それを組みたてる会社、流通とサービスをする会社、それに顧客が、ひとつの輪の中に組み込まれていて、おたがい、利益が出る構造になっているということです。(p.166)
アメリカならGMのような巨大バリューチェーンを有する企業であっても容赦なく解体させるであろうけれど、日本ならそのようなことを行わずとも新しい技術へと変遷してゆけるだろうと、著者は書いている。トヨタやホンダなども、バリューチェーンを考慮して、電気自動車の開発をしつつ、移行期用としてハイブリッド車の市場投入を計画的に実施してきたはずである。
【新しい技術による世界創造】
文明が進みすぎてしまったから、こんなことになってしまった・・・・と退歩の方向で環境対策をやっても、無意味なのです。
この場合、考えるべきことは、まず、本当に効果のある対策を選んで、それを集中的に普及させることです。
温暖化については、まず、それしかありません。 (p.175)
新しい技術を使ったら、温暖化はなくなるどころか、さらに、エネルギーが行きわたって、人類は裕福になる、世界中でアメリカ人と同じようにエネルギーを使えるようになる・・・・。 (p.177)
誰もが等しくエネルギーを生産し利用できるという、エネルギーの民主化によって “脱「ひとり勝ち」文明” を実現させる可能性があるのは、太陽光発電と電気自動車だけではない。水素、波力、海洋温度差など、現在はいくつもの技術が並走している。どの技術が主流になるにせよ、環境調和性まで含めた真に永続的な技術によって、持続可能な地球を実現してほしいものだと思う。この場合、考えるべきことは、まず、本当に効果のある対策を選んで、それを集中的に普及させることです。
温暖化については、まず、それしかありません。 (p.175)
新しい技術を使ったら、温暖化はなくなるどころか、さらに、エネルギーが行きわたって、人類は裕福になる、世界中でアメリカ人と同じようにエネルギーを使えるようになる・・・・。 (p.177)
<了>