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 日下公人さんの名前があったから目に入ったのだけれど、この書籍の実体は、就職情報書籍ということらしい。7つの会社が紹介されている。

 

 

【日本の底力にぶち当たるには】
 監修者の日下さんが書いているまえがきの中から。
 企業経営においても合理化、コスト削減、国際化はすでに限界があることがわかった。だからといって伝統回帰、日本型の復活だけでは対応しきれない。新しいコンセプトが求められている。それを自前の発想で生み出し、発展を遂げていくことが大事なのである。
 イデオロギーやスローガン、権威ある情報に頼らず、目の前の顧客を見て、よいと思う事をやると日本の底力、鉱脈にぶち当たる。こういう会社が一社でも多い日本になることが、すなわち日本経済の新しい発展を約束するものだと信じている。 (p.10)
 この書籍に取り上げられている7社は、いずれも “イデオロギーやスローガン、権威ある情報に頼らず、目の前の顧客を見て、よいと思う事を” やり続けてきた企業らしい。

 

 

【サンマ漁船の集魚灯】
 朝日テックという、サービスステーションのサイン(看板)を手掛けていた会社が、サインの光源として開発してきたLEDの技術を、サンマ漁にも用いているのだという。
 サンマ漁船やシメジではサンマやシメジが好きな色や配光分布特製等、単なる電気・電子の知識だけでなく、材料に関する知識、強度や腐食に関する知識等、専門的な知識が必要で、デザイン、電気・電子、機械、化学の担当者がチームを組んで開発したものである。(p.46)
 サンマ漁の写真が載っているけれど、光に集まるサンマの習性を利用して、文字通り “一網打尽” にサンマを捕獲するらしい。効率のいい漁法が開発されたものである。どうりで最近は、季節を問わずに1匹わずか50円の解凍サンマを、どこのスーパーでも売っている。冷凍保存技術も進化しているらしく、数年前の解凍サンマのような味の劣化は感じない。朝日テックのLED技術と、どこか他社の冷凍保存技術が、安くて美味しいサンマの供給に貢献してくれているのだろう。

 

 

【携帯電話へのアフィリエイト(成功報酬型)広告】
 アフィリエイト広告では広告の成果に応じて媒体側への支払額が決まるため、広告主であるクライアントにとっては極めて費用対効果の高い広告手法ということができる。
 実は、このアフィリエイト広告をモバイル(携帯電話)で最初に手掛けたのがアドウェイズである。(p.57)
 このアドウェイズという会社の平均年齢は26歳。上海にも進出し、中国のアフィリエイト広告会社のビック3に入っているという。
 若者をターゲットにした広告では、PCより携帯への広告の方が圧倒的に有効である。アドウェイズの広告収入はPC部門が54%、モバイル部門が45% となっている。

 

 

【コンテンツ連動型広告】
 「広告掲載サイトのコンテンツを解析し、コンテンツと関連性の高い広告を自動的に配信するサービスです。コンテンツ解析のアルゴリズムエンジンには、先進のセマンティック解析(文章の文意を解析する技術)機能を搭載してあるので、精度の高いマッチングが可能になっています」 (p.61-62)
 へぇ~、既にそこまでやっていたのか~~~と感心している。

 

 

【エンバーミング】
 エンバーミングとは、北アメリカを中心に行われている遺体の衛生保存処理のことだ。・・・中略・・・。血色を蘇らせたり、闘病でやつれた容貌を元気な頃に近づけることもできる。遺族の悲しみを和らげ、心のこもったお別れになることが多いという。(p.82)
 これは、公益社という葬儀会社の部門技術として紹介されている文章。
 幸いにも聖地で死んでガンガーを流れてゆく死体だとか、野晒しのまま犬に食われている死体だとか、鳥葬にされる死体だとか、インドに関する死の有り様を昨日久しぶりに読んだばかりなので、エンバーミングまでする葬儀って “根本的な部分で、どっか狂ってない?” と思ってしまう。インドでは魚や犬や鳥に食われているが、日本では葬儀会社や坊主に食われている。
 公益社は企業葬の受注が多いから収益率が良いと書かれている。そうだろう。貧富の2極化が進んでいる現在、葬儀場を使う民間人の葬儀では喪主を赤字にさせているという現実があるのではないか。葬儀会社への支払総額を100万としても、平均5千円の香典額と仮定して200人集まらないと採算割れになる。そこまでして葬儀ビジネスを流行らすのは狂気である。葬儀会社の援軍は人心に巣食う ”世間体” くらいのものだろう。
 例え遺族や死者が葬儀会社の演出に喜んでいたとしても、人の死をビジネスにすることにはどこかそぐわぬ違和感がある。この書籍に掲載されている公益社の管理職社員3人の顔写真を見てその人相に不快感をいだいてしまうのは、私の一方的な偏見だろうか・・・・。

 

 

【SE(システム・エンジニア)は理系だけ?】
 テックエンジニアリングというIT系企業。中小企業のPOSシステムを受注している会社らしい。
 田中さんは大学の電子工学科を卒業している。SSE(システム・サポート・エンジニア)は理系でないと難しいというイメージがあるが、田中さんは即座に否定する。
 「いや、そんなことはないと思います。配属されて学んだ知識のほうが、それまでに持っていた知識の何十倍にもなります。やる気と覚える気持があれば、情報はいろいろ入ってきますし、すぐ後ろには優秀な先輩がいてサポートしてもらえます。ネットワークシステムを知らない人、文系でも大丈夫です」 (p.122)
 そうである。
 逆にいえば、サポートしてくれる先輩技術者がいないことには、たとえ理系の人材であってもたいした技術者にはなれないのである。ことIT企業に関しては教育システムのない企業などないであろうし、もしもそんな企業であるなら就職しない方がいい。
   《参照》   『ITマネジメントの常識を疑え!』 角田好志 (日経BP社)
            【情報ノウハウ と 業務ノウハウ】

 

 

【世界のインテリア・トレンドを情報発信する】
 インテリア市場創造型企業としてトーソーという企業が取材されている。
 窓装飾にとどまらず、室内インテリアに関するさまざまなノウハウやアイテムを紹介する書籍を数多く出版してきた 「トーソー出版」 の存在も忘れてはならない。
 自社商品の売り上げに直結しなくても、インテリア文化の裾野を広げるために情報発信をしていくというトーソーの企業姿勢が、1970年代初頭から続いているトーソー出版の活動に表れている。(p.150)
 汎用性のあるカーテンレールと、デザイン性・機能性の高いカーテンの分野でヒット商品を生んでいる会社だという。女性の発想と男性の技術力が上手にコラボレイトしている会社らしい。
 技術というのは特化することで価値は高くなるけれど、その技術を汎用化できるフィールドに導くためには、女性の発想力・アイデア力が必要なのだろう。出版物は社内の技術と発想を仲介する媒体としても機能しているはずである。
 
<了>