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 価値相対という人生の基本を心得ている(関西以外の)人は、この本を通じて人生の具体的ノウハウを学ぶことができる。極端に偏狭な排外主義者的関東人以外は、「大阪人のやり方は、けっこうイケテルかも・・・」、と思えることだろう。海外留学より先に、この本を読むことで大阪留学して異文化免疫をつけることもできる。

 

 

【アホなや】
 「あいつ、アホやな」 というのは大阪ではほめ言葉です。 (p.1)
 この書籍は、いきなりこの文章から始まっている。東京でこう言われたら大抵、中傷と受け取らる。
 関西で言う “アホ” とは、“常識の範囲が人並みより優れて広い人” のことを指すらしい。なるほど、“常識の範囲が人並みすぐれて狭い人” のことを、堅物とか頑固者とか一刻者というのだろう。本を読まない人間は、多様な価値観の存在を認識していないから ”アホ” になれない。この本を読んで “アホ” になろう。

 

 

【初めての店でも、常連のようにふるまう】
 大阪人は、初めての店に入っても初めての顔をしません。
 カウンターのある店だったら、なじみの客のように、ガラッとドアをあけて、「ビール」 と言いながら座ります。(p.30)
 関東人は、これを読んで “ズウズウしい” とか “見栄っ張り” と思ってしまう。しかし、それでは価値相対の世界を学べない。その世界の住人として、誰にとってどのようなメリットがあるのか考えてみることが学びというもの。
 でも、店員さんは、他人行儀の客より、常連のふりをされるほうがずっと接しやすいのである。(p.30)

 

 

【ダンボールマン】
 大阪は、サラリーマンの数が一番少ない街ですから、いろいろな仕事をしている人すべてがプロの誇りを待っています。
 大阪には 「ホームレス」 という言葉はありません。
 ホームレスと言うとちょっとわびしい感じがしますが、大阪では、ヒーローっぽく 「ダンボールマン」 と言います。(p.55)
 これも、行政を 「お上」 視しない、大阪人の庶民ヒーロー感覚文化なのだろう。

 

 

【大阪では、お笑い・商人・ヤクザが3大出世コース】
 お笑いタレントが国会議員になるのは、決して出世ではありません。
 むしろ道楽であり、ボランティアです。
「お笑いであれだけ頂点を極めた人が、なんで議員なんてつまらん仕事やるんやろ」
 というのが大阪人の感覚です。東京では、逆に、
「なんでお笑いの人間なんかを議員にならせるんだろう」
 という感覚です。
 ・・・中略・・・。 そもそもお役所なんかは、はなから頼りにしていません。・・・中略・・・。
 「選挙に行くヒマがあったら、商売やるし、遊びに行く」 と言って、あまり選挙には行きません。(p.113)

 

 

【トイレに入る前からチャックを下げている】
 大阪では、トイレの待ち時間を詰めるために、チャックをおろして並ぶのが礼儀です。 (p.61)
 いくら価値相対でも、この作法は学びたくない。
 トイレの数を増やすべきである。

 

 

【荒れる大阪場所】
 お笑い好きな人間は、子供の頃から、先生が何かを言った時にそれにチャチャを入れます。
 何を言うかではなく “間” が大事です。
 ・・・中略・・・。
 大阪だと 「横綱の名が泣くぞ! しっかりとれよ!」 のあとに 「頼むでェ」 と、短いセリフがひと声ヒュッと入ります。
 大阪人のツッコミに慣れていない人は、この 「頼むでェ」 にコロッと力が抜けてしまいます。
 横綱、大関がコロコロ負けて、大混乱の面白い状態になってゆくわけです。 (p.73)
 なるほどねぇ~。
 敗者・阪神に狎れている大阪人の本音として、強者を敗れさせようとする想念界が形成されているとも考えられる。阪神が強ければ、荒れない大阪場所になるのではないだろうか。

 

 

【芸術家は、必ずグルメになる】
 料理は、五感を利用した、芸術です。芸術家は、必ずグルメになります。
 大阪で、芸術が発達するのも、男性が料理を作ることが、大きな理由です。
 サラリーマン社会の東京では、食べれればいいじゃないか、という効率主義になってしまうのです。 (p.130)
 第一行は、文化に係る重要なセンテンス。富豪の享楽という視点だけで美食を語るのは不足である。そこに芸術の理解者がいるからこそ、洗練された美食都市が生ずるのであろう。歴史上に勃興した都市の、経済力と芸術と美食の関係を記述する書籍があったらきっと面白いに違いない。チャンちゃんは、そんな相関に興味はあるけれど、美食自体にはテンデ興味などない。

 

 

【日本一弱かったのは大阪の部隊】
 戦争中にそれぞれの出身地別の部隊がありましたが、鹿児島県出身の部隊は強かったです。
 日本一弱かったのは大阪の部隊です。
 ・・・中略・・・
 死んだら負けです。
 失敗しても 「命まで取られへん」 と大阪ではよく言われます。だから失敗は平気です。 (p.134-136)
 死んでしまっては元も子もない。成功するまで失敗を恐れない精神は、なるほど企業家に向いている。
 世界を震撼させたのは玉砕を恐れぬ “大和魂” であり、グローバル・スタンダードは “大阪魂 である。

 

 

【「なんで?」 「ないない」 「なんでやねん」】
 話が盛り上がるか盛り上がらないかは、聞き手の姿勢にかかっています。
 「なんで?」 「ないない」 「なんでやねん」 がそのキーワードです。 (p.155)
 総合笑社・吉本興業の隆盛で、関東人も関西風会話の良さが徐々に浸透しつつあるけれど、この本を読んでいて、この3つのキーワードは、 “起承転結“ の結節点になっていることに気づいた。

 

 

【見えない司会者】
 大阪では、いちいち司会者を決めません。
 東京では、どんな話でも、必ず司会者が存在します。 
 司会者がいることで、話がダンドリっぽくなるのです。 (p.160)

 

 

【大阪弁の音声カーナビ】
 目的地をインプットしたら、「何しに行くん?」 と聞いてくれます。
「バババーと行って、キュッと曲がったとこ」
 これではどこで曲がればいいのかわかりませんが、気分は伝わります。
 気心が知れるようになったら最高です。
 上岡龍太朗さんのようなカーナビでも、楽しいでしょうね。道を間違っていても、教えてくれないのです。
「ほう、そう行くか?」
「えっ、間違ってるの?」
「そういくんなら、行ってみたらよろしい」
「そう言わんと、教えてよ」
「これくらいの道、マラソンで行きなさい」
 カーナビにしたい人が、人生で付き合っていきたい人でもあります。
 ドライブでも、人生でも、カーナビにするなら、大阪人です。 (p.166)
 これを読みながら、爆笑してしまった。 カーナビの音声に、スタンダード(関東)ヴァージョン、鶴瓶ヴァージョン、龍太朗ヴァージョン、伸介ヴァージョンとか、選択肢がいっぱいあったら、絶対買い!である。

 

 

 
 
<了>