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 1933年生まれの岡野さん。わずか6人の町工場で、大企業からの注文が殺到するという超優良企業の経営者。ご自身の生き方を貫くことで実証した成功例を、あますことなく開示し、若者たちに語りかけている。

 

 

【情報の扱い】
 俺は、守秘義務があること以外では、情報は惜しみなく出すようにしている。 (p.42)
 その人の役に立ちそうなことを教えてあげればいいんだよ。「へぇ、そうなんだ」 と思わせてやればいいんだ。
 君たちも、情報が入ってくるような体制を整えて、風通しのいい人間になれよ。お互いにとって役に立つ情報はどんどん出してやれ。 (p.45)
 お金も情報も、出した以上には入ってこないという法則があるからである。
 しかし、中国人や韓国人には、このような考え方ができない。会社を通じて学んだ技術も情報も個人の所有物としてしまい、それを売り物にしてより高い賃金の会社に転職してしまう。これでは、情報もお金も社会全体に有機的に活きてこないのである。だから、その様な意識を有する国民が構成する国家の経済は、脆弱なものであり何度でも破綻することになる。

 

 

【人の仕事は取らないという約束】
 俺がプレスの仕事を始めたときに決めたこと。それは親父の言うとおり 「人の仕事を盗らない」 ということだった。それなら俺にもできる。 (p.67)
 同じ地域の町工場内の中小企業同士、「互いに他社の仕事を盗らない」 という意識は、日本人のモラル感覚では普通だったのだろうけれど、往々にしてその不文律を破ってしまう人々もいたことだろう。しかし、それを絶対に守る約束をした著者は、「安すぎて誰もやらない仕事」 と 「技術的に難しくて他の誰にもできない仕事」 を請け負うことにしたのだという。そこにこそ、創意工夫と素晴しい技術的な躍進があったのは言うまでもない。

 

 

【自腹を切ってでも、納得のゆく仕事をする】
 1000万かけて金型を作って、その出来が気に食わなければ、自腹であと500万円かける。だって自分で納得できないものは作りたくないからな。
「岡野さん、いい仕事をしてくれてありがとう。次はこの仕事をお願いするから、これで儲けてくれ」 と、儲かる仕事をまわしてくれる。つまり、リピーターになってくれるんだ。
 目の前の仕事さえちゃんとこなしていれば、お金なんかあとからついて来るんだ。  (p.79)
 これって、典型的な日本人の職人気質。

 

 

【最先端のものばっかり追いかけていると、基本的なものが作れなくなってくる】
 俺のやっている深絞りという技術は、1枚の金属の板を円筒形に絞るもの。板をプレス機で何工程も抜いて、絞ってゆくんだ。携帯のバッテリーケースやライター、口紅なんかを作る方法がそれにあたる。 (p.103)
 大手化粧品メーカーが近くにあったおかげで、口紅ケースを作る深絞りの技術は、岡野さんの工場地域では地場産業だったという。しかし、口紅ケースがプラスチック素材に変わってゆく過程で、多くの町工場が深絞りの技術を伝承せずに失ってしまった。それが30年を経て、携帯電話のステンレス製の電池ケース作成に有用だった。
 親父から 「流行は10年、20年の周期で繰り返されるから、技術に関するものは捨ててはだめだ」 と言われてきたのを守って、金型や製品などをすべてとってあったんだ。 (p.201)

 

 

【これからは農業が出番だ】
 今は大学進学率が高いから、余裕があるんだったら大学へ行ってもいいと思う。だけど、腕に職をつけることを忘れちゃダメだ。くだらないことばっかりやって、4年間が終わっちゃったなんてことは絶対に避けないと。 (p.177)
 これからの時代、農業だって熱くなってくるよ。みんな農業って聞くと、キツイとか大変とか考えるだろう? そんなことないよ。これからは機械で管理して農作物を育てる時代がやってくるんだ。・・・(中略)・・・。日本の技術を生かして、効率よく農業ができる時代がやってくる。時代を先取りして儲けた方がいいぞ。 (p.178)
 岡野さんの他の著書 ( 『俺が、つくる!』 中経出版  ) では、「時代は “脱回転” の技術へ向かう」 と書いてあったと記憶しているけれど、この本ではダイレクトに “農業” と書いている。
 岡野さんが言っているのは、露地栽培やハウス栽培ではなくプラント栽培だろう。工業関係会社からの情報が多く入ってくるであろう岡野さんがこう書いているということは、半導体製造プラントを手がけているような、水や空調を制御する企業が、既に農業関連分野の技術に触手を伸ばしているということなのだろう。
 
<了>