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 一昨年、第一回WBCで世界一となった日本チームの王貞治監督について、生立ちから書かれている。

 

 

【V9ジャイアンツの鍵】
 「両雄並び立たず」 という格言を覆してなったジャイアンツの9連覇。
 その理由について、川上哲治氏(V9監督)はこう語る。「その理由は、チームの中で情報公開を徹底したからです」 ・・・(中略)・・・ 「自分が苦労して身につけた技術は誰にも見せないし、教えないのが当たり前でしたが、それを隠さず公開せよ、と私は命令しました。特にON(王・長嶋)にはそうさせました。 (p.48)
 個人秘を排する考え方は、日本企業の中では一般的なことで、トヨタを初めとする日本企業の強さは、ここにある。社外秘事項も、これを多く持ちすぎると、汎用技術として世界に還元できなくなってしまう例もある。
 特許で囲いすぎたから、マツダのロータリーエンジンは世界標準になれなかった、という話を聞いたことがある。事実かどうかは分からないけれど、情報技術の世界ではオープンソースにしたからこそ、世界の広まったリナックスの例があるから、考えうることである。
 クローズドがオープンに勝てないのは、知識や技術を囲い込むことによって無形の “徳” というエネルギー循環をも止めてしまい、共存共栄に貢献できないことが、大きな要因になっているのだろう。

 

 

【父、王仕福氏】
 王監督のお父様は、戦前に日本にやって来た中国浙江省出身の中国人、お母様は日本人。それで監督自身なぜか台湾国籍。日本人が王監督を称えるほどに、台湾人がそうでない理由が分かった。「台湾人じゃない、中国人だ」 ということなのだろう。それはともかく、お父様はこんな方。
 昭和20年の敗戦直後は、立場が逆転して日本人より中国人のほうが有利に働けた一時期で、目端のきく中国の人たちは、その機会に大もうけをしたわけだが、仕福氏はそれをしなかった。
 いや、できない性格だった。若いころにずいぶんいじめられ、逆境から立場が逆転したその時でさえ、「人間はみな同じだ」と、少しも生活態度を変えなかった。「今までさんざんいじめやがって・・・」 などと言って日本人への恨みを晴らすような人間だったら、世界のホームランキング、王貞治は育たなかっただろう。 (p.87)
 東京でラーメン店を営んでいたお父様の抱負は、「兄は医者、弟(王監督)は電気技師になって、中国の貧しい村を幸せにしてほしい」 ということだった。
 お兄さんはお医者様になったけれど、弟は入学試験でわずか1点差で落第という結果に守られて、電気技師の道には縁が生じなかった。そもそも、学生時代から野球の才能に秀でていすぎたのだから、落第は100% "天の定め” だったのだろう。

 

 

【甲子園、決勝戦・前夜】
 昭和32年、春の甲子園、早稲田実業のエースピッチャーとして投げていた王選手。父はテレビで見ていて指の故障がわかり、決勝戦前夜、東京から大阪までやってきて、中国に昔から伝わる民間療法で指を治療してくれたのだという。
 「お母さんが忙しすぎるから、父さんはこれで帰るけど、もう心配ないよ。明日は思い切って投げろ、いいな」
 と背を向けて玄関を出て行ってしまった。
 これが、以前には野球を禁止していた父・仕福であることは言うまでもない。親子の真の 「絆」 とは、ここで軽々しく語れるテーマではない。誰にもじゃまされない結びつきであり、王貞治はそれを知って育っている。 (p.91)
 父と子の絆って、羨ましい。

 

 

【名選手であっても・・・・・迷い】
 699号を打ってから20日間、王のバットから快音が消えた。完全に王は自らを失いかけた。
・・・(中略)・・・。
ちょうどそのころ、世間には知られていない、こんな出来事があった。
 師の荒川氏に紹介されて、王が合気道の創始者、植芝氏に教えを受けたことは、前に書いた。その植芝氏の弟子の藤原光一氏が、こんなことを打ち明けてれくれた。
「王ですが・・・、先生、僕の一本足は自然の摂理に反しているのではないでしょうか」
「王、君はまだそんなところにいるのか。君の一本足は、人間の基本動作にあっているんだ、といっているじゃないか。わかった、と思っていたが、いまだにそんなことをいうんじゃ、もう僕の弟子でもなんでもない。もう破門だ!今日限り、野球なんて止めてしまえ!」
「先生、分かりました、申し訳ありませんでした」
 その翌日、王はついに700号を達成した。  (p.178)
 700号を超えてからは、難なくベイ・ブルースの記録をも超えてしまったという。
 世界のホームラン王となるような偉大な選手であっても、その過程で迷宮に入ってしまうこともある。
 一本足の大選手には、専任技術の師・荒川コーチがいて、さらにメンタル技能の師・合気道の植芝氏もいた。
 合気道の創始者、植芝盛平氏のことが書かれていたので、下記をリンクしておきます。
              【武道とは】

   《参照》   『神様につながった電話』 保江邦夫 (風雲社) 《後編》
              【植芝合気道の力の根源、サムハラ龍王】
              【大阪立売堀のサムハラ神社】

 

 

【チャンちゃんにとっての王選手】
 アマチュア野球では守備位置で背番号が決まってしまう。小学生のチャンちゃんは一塁手だったから背番号は「3」。試合のために電車に乗ると、大人から 「よぉ、長嶋!」 と声をかけられた。全然嬉しくはなかった。
 「違うもん、王だもん・・・」 と心の中でアッカンベー状態。 
 飛んでもせいぜいショートフライ程度の超非力な7番打者だったけれど、守備位置ファーストというだけで、絶対に、100%、ホームランの王選手ファンだった。長嶋・・なんて、ありえない・・・・。(王選手より長嶋選手の方が好きという子どもなどは、殆どいなかったと思う)

 

 

【『日本は世界の王』 となる】
 ところで、WBCの日本チーム世界一は、日本の将来の命運を事前に報知するための預言(神界)劇なのだという。
 「日本は、もう終わりか・・・」 という時点から、 『日本は世界の王』 となるそうである。
 日本人と神々の「絆」は、軍事力や金融力をもって切ろうとしても、決して断ち切ることはできない。

<了>