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 昨日、『愛の研究』 という、仏教徒側の独善的な視点で記述された本を読んで憤然としていたから、あえて90歳を超えてなおボランティアとして聖路加病院で働いておられる日野原先生の本を読んでみた。
 先生の本は、『生きかた上手』 に続いて2冊目。 こぼれそうになる涙を瞳に溜めたまま、図書館で読んでいた。

 

 

【愛があるなら時間を共有する】
 どれだけの時間を互いに提供するかで、愛の深さを計ることができます。 (p.22)
 夫人の容態がどんどん悪化するなかで、仕事ではなく介護を選択したサラリーマンの話が書かれている。
 夫婦間ではなくとも、親と時間を共有する志などさらさらない子や孫達が多いのではないだろうか。日本の家庭には、時間を互いに提供しようとする愛が希薄なようだ。「おじいちゃん、おばあちゃん」と連呼する時代は、お年玉に紐付かなくなれば終わるのだろう。

 

 

【ユーモアは最もつらく苦しい時にこそ、発揮されなければならない】
 デーケン神父は、「ジョークはタイミングのよさや、言葉の上手な使い方など頭のテクニックであり、ユーモアは心から心へ伝える具体的な愛の表現だと思う。こうしたユーモアのセンスを生まれつきの才能だとか、ものごとが順調にいっていて、精神的に余裕があるしるしなどと思い違いをしている人も多いが、ユーモアは最もつらく苦しい時にこそ、発揮されなければならない」 と述べておられます。  (p.34)

 

 

【「テンダー」とは、愛を表現する最高の言葉】
 テンダー・ラビング・ケア( tender loving care 略して TLC ) のなかのテンダーという言葉は、愛を形容する最高の表現で、医療の世界では大切な言葉として使われています。 (p.54)
 Tender も Love も Care もどれもいい言葉だ。
 昔アイドルだった早見優ちゃんが、英語学習の本の中で、「 “ I love you.” と言われるより “ I care for you.” と言われるほうが嬉しい」 と書いていたのを覚えている。B・ストライザントの 『Run Wild』 の中でも “ I care for you.” が繰り返し歌われている。 “大切にするよ” という感じが心を打つ。
 日本ではあまり知られていませんが、アメリカでは、がんの末期の患者さんが安らかに苦しまないで生涯を終えたいと願えば、「私の最後のときには無理な延命処置をしないで、苦しまないように眠らせてください」と、前もって医師や看護婦に伝えておきます。・・・(中略)・・・。
 これを実行するのが、テンダー・ラビング・ケアです。きめ細かな配慮をもって、患者さんの最後に愛を送りますということです。 (p.55)

 

 

【愛の陰には恕しがあってこそ】
 愛の行為はその陰に恕しがあってこそ、本当の無償の愛となります。
 「恕しは、他を信じて耐えて待つ愛の心。他を責めず、弱い自分が恕されて生きているように、ほかを受けいれてゆく慈悲の心」
 これは、私から、みなさんへ送る言葉です。   (p.110)
 「許す」 ではなく、「赦す」 でもなく、「恕す」 。
 「恕す」の漢字には、如の下に心が置かれており、恕とは、 “己の如く人を思う心” という意味があります。 (p.106)
 ロンドン・大英帝国博物館の日本コーナー(2000年前後)には、日本人神道家・深見東州先生によって書かれた書道の一文字が展示されていた。その文字は、“ 恕 ” である。
   《参照》   『神霊界』 深見東州 (たちばな出版) 《中編》
              【魔界と正神界の違いを峻別する “芸術性と美” 】



【人生の幸福と不幸】
 ヒルティの、『眠られぬ夜のために』 の第一部の2月9日の日付には次の言葉があります。
 「人生の幸福は、困難に出会うことが少ないとか、全くないとかいうことにあるのではなく、むしろあらゆる困難と戦って輝かしい勝利をおさめることにある。
 力というものは、弱点にうち勝つ修練から生じるのである」 と。

 また、ヒルティの書いた 『幸福論』 のなかには彼が非常に立派だと賞賛したドイツの女流詩人アマリーニ・フォン・ヘルウィッヒの詩が引用されています。
 「不幸そのものに多くの益はないが、
 それはなお三人の健気な子供を持つ。
 その名を、力、忍耐、同情と呼ぶ。」 と。   (p.152-153)

 

 様々な著者、様々な書籍の中に、先人たちの言葉を引用している文章を見つけることは多い。
 けれど、日野原先生の記述の中に引用されている先人の言葉を読むと、何故か深く強く心に迫ってくる。
 日野原先生の人生と読書は、余りにも真摯に結びついている。
 
<了>
 

  日野原重明・著の読書記録

     『テンダー・ラブ』

     『人生百年 私の工夫』

     『生きかた上手』