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 2005年に行われた、第一回「中国大学生日本語作文コンクール」受賞作品集。

 

 

【作文対象作品】
 この本に掲載されている26の作文が、対象にしている作品の中には、 『伊豆の踊り子』 が3つ、『五体不満足』 が2つ、『火垂るの墓』 2つ、『武士道』 2つがある。チャンちゃんは前の二つを読んだことがない。
 外国で日本文学を学んでいる人々は、近代文学では川端康成、森鴎外、夏目漱石、現在文学では村上春樹、吉本ばなな、から読む人々が多いらしい。

 

 

【内面世界を描くにはやはり日本語】
  『人生の賞味期限』を読んで       中山大学 傳潔茹
 作者の藤本儀一先生は・・(中略)・・自ら気付いた人生観を読者に提示しているのである。一見重そうなテーマだが、案外気軽な一面もある作品集だった。別に散文にこだわりがあったわけではないが、先生の本を読んで思わず胸がいっぱいになり、内面世界を描くにはやはり日本語に限ると思った。 (p.11-12)
 “内面世界を描くにはやはり日本語” という感想を持てる人は、かなり日本語の上級者なのであろう。生まれたときから青年時代まで日本語で生きていた台湾の李登輝前総統も、「じっくり考えたいとき、私は日本語で考えている」と本の中に書いていた。
 ところが、日本語しか話せない多くの日本人自身が、諸外国の言葉に比べて、日本語がとても繊細な言葉であることを自覚していないのだから、何をかいわんやである。
 繊細さだけではなく、穏やかさにおいても日本語は抜きん出ている。それは主に訓読み、すなわち大和言葉によって保たれている。そこまで気付ける外国人はなかなかいないだろう。

 

 

【『火垂るの墓』が変えた私の日本観】
  『火垂るの墓』が変えた私の日本観     大連大学 陳佳
 私は80年代生まれで、戦争を経験していないので、今まで戦争中に中国だけが被害を受けたと思っていた。戦後、日本に賠償請求するのは当然のことと思っていて、それを放棄するのはどうしても理解できなかった。中国に今でも、そういう気持ちを持っている人は多くいると思う。しかし、私は『火垂るの墓』を読んで、終戦当時の日本の悲惨な状況がわかってきた。  (p.37)
 チャンちゃんは、『火垂るの墓』という映画は悲しすぎるので2度と見たくはない。日本人の中にはチャンちゃんのように思う人が大いのではないだろうか。本当に見るのが嫌だ、悲しすぎる。
 チャンちゃんが上記の箇所を書き出したのは、中国人のみならず韓国人の中にも、この感想文と同じことを感じている人々は結構大勢いることを知っているからだ。終戦60年目の2006年夏の時期、日本に滞在していた外国人は、NHKが特集して放映した終戦直後の日本の実状を見て、驚いていたようだった。
 中国政府は、「悪いのは一握りの軍部であり、一般の日本人は犠牲者だった」という公式見解をはるか以前から表明はしているものの、中国国民に向けての徹底的な「反日」教育、「反日」報道ではそのような見解など伝えていないので、現在の一般中国人の殆どは、終戦直後の日本の惨状を全く認識していない。だから、この様な感想文が書かれるのである。

 こんな状況なのだから、下記の読書記録に書いているけれど、長期にわたる日中戦争の間、日本が中国(満州)に建設した長春などの都市や、日本が租借していた地域に関する事実など、一般中国人が正しく認識しているわけなどないのである。
 
 
<了>