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 この著者の本を読んだのは2回目。昨年、『セクシーな日本』 という本の記録を書いている。 
 この本も面白い。著者がオーストラリアからやってきた両親と行動を共にした箇所の記述では、誰だって笑いが噴出してしまうだろう。(その部分は書き出さないけれど)


【「ワッツ・お茶の魅力」】
 20年もお茶をやっているギャリーさんに、「お茶の魅力って何?」ときいたそうです。
 センパイは「うーん」としばらくテンジョウをにらんでから、「五感の満足ですね」 といいました。
「美しい道具を見る視覚的な満足。茶器を手の中で味わう触覚的な満足。香をかぐ臭覚的な満足。お湯の音を聞く聴覚的な満足。お茶を飲む味覚的な満足。それに・・・・・・・うーん」
「それに?」
「それに、お菓子!」   (p.31-32)
 「五感の満足」 は全脳の活性化を意味している。
 「お菓子!」 だけでも外国人にとっては興味深いのではないだろうか。むろんここで言うお菓子とは和菓子であるけれど、近年では和菓子の職人技は洋菓子の技と融合している。日本人の繊細な味覚が、洋菓子の技にも入り込んで世界を席巻し、世界の日本化を促進することになるだろう。

 

 

【芸者のルール】
 神楽坂は芸者さんの町でもあります。つい20年前までは芸者さんが二百人もいたそうです。
 私は元総理の宇野さんを思い浮かべました。あの人のお相手が、この町の芸者さんだった。あのスキャンダルのころ、私も女のはしくれとして、宇野さんとの関係をばらした芸者さんに 「よくやった」 と拍手を送ったのですが、ハヤシさんは 「あの女はこの世界のルールを破った。神楽坂の芸者はもうやばい、とみんなが思ったのよ」 といいます。
 この事件は神楽坂の花柳界に決定的な打撃を与えたようです。 (p.60)
 田中角栄さんの芸者さんも、たしか神楽坂だったような記憶があるけれど・・・。この芸者さんは角栄さんが亡くなってからマスコミに登場したように記憶している。厳しくいうならば、それでもルール違反だと思うけれど、どうなのだろう。
 角栄さんが活躍していた当時の記者達は、角栄さんと芸者さんのことを知っていても、そのことを決して記事にはしなかった。宇野元総理の件に関して、ルールを破ったのは芸者さんだけではない。マスコミの記者も、その世界のルールを破ったのである。

   《参照》  『赤坂ずっこけ芸者 お座敷ここだけの話』 千代喜久 幻冬舎

         『しつけのない国、しつけのできない人びと』 中村喜春 (海竜社)

 

 

【四万十川の上流にある「祷山荘」のトヨミおばあさん】
 女将の中越豊美さんは九十歳を超えた明治の女性です。
 吉田茂首相が泊まったというお部屋も見せていただきました。
 この宿は去年まで食事つきでしたが、そろそろ 「限界」 で、無理してまでお客さんはとりたくないようでした。それでも素泊まりなら、泊まれるというので 「ガイジンでも大丈夫ですか」 とききました。すると突然、トヨミおばあさんが私を抱きしめました。
 「ガイジンだなんて! 同じ地球のニンゲンじゃ!」
 これには泣きました。日本とつき合って二十年近くなりますが、私はいつも 「外人」 でした。「同じ地球のニンゲンじゃ」 といわれたのは、はじめてです。いまでもこの言葉を思い出すと、涙ぐんでしまいます。 (p.165-167)
 マーガレットさんは伝統的な日本文化を学ぼうと努めてきたようなので、必然的にそれらの担い手である年配の日本人と付き合うことが多かったのだろう。
 日本文化に必ずしも造詣の深くない私たちの世代は 「外人」 という言葉を殆ど使わない。必ず 「**人」 と国名を入れるか、直截に 「**さん」 と名前で呼んでいる。
 トヨミおばあさんと同じように考えている日本人の若者は大勢いる。

 

 

【前世は日本人】
 「マーガレット、あんた、前世は日本人だったんじゃない? それも村娘だったりして」
 トシコさんが、不思議な動物を見るような目で、私をしげしげ見ることがあります。実をいうと、私は、ほんとうに前世は日本人だったと信じているのです。ときどき、雑誌のインタビューを受けたりすると、まず 「日本語を勉強しようと思った動機はなんですか?」 と聞かれます。そんなとき、私は決まって 「運命です」 と答えます。
「運命ですか?」
 記者の人は、それでは記事にならない、といった顔をします。 (p.168)
 マーガレットさんは、昔の日本の良さが残っている能登や奈良にある小さな町をこの本の中で紹介している。普通の日本人より、はるかに日本人的だ。
 
<了>