心優しき人。 | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」

心優しき人。


 現在、非常に重要な用事があり、首都テグシガルパに来ています。レアル・ソシエダで練習は行っておらず、試合にも4試合、帯同していません(首都で何をしているかは、また後ほどブログに書いていきます)。

 今回、ブログに書かせて頂く話は、今日、この首都テグシガルパであった出来事です。




 僕はとある薬局に「耳せん」を買いに来ていました。しかし、残念ながらその薬局に耳せんは無く、店員に「ここから300mの○○という薬局に売っているかもしれない」と言われます。僕が「その○○という薬局はどこだ?」と聞くと、お客の1人のおばちゃんが「そこまで一緒に連れて行ってあげよう」と言い、僕はそのおばちゃんと一緒に○○という薬局まで歩いて行く事となりました。



 これが、全ての始まりでした。



 見知らぬおばちゃんと一緒に歩いて、300m先の○○薬局に到着。ところが、そこにも耳せんは売っていません。おばちゃんは「向かい側の薬局に売っているかもしれない」と言い、そこまでも一緒に付いて来てくれました。…が、そこにも耳せんは売っていません…。薬局の店員は「▲▲病院なら売っているかもしれない」と言いました。僕は「もう耳せん、見つからないな」と諦めかけていたのですが、ここまで付いて来てくれたおばちゃんは「なら、その▲▲病院まで行ってみよう!!案内してあげるから!!」と言い、そこまでまた連れて行ってくれる事となりました。

 おばちゃんの案内で▲▲病院に無事到着。しかし、1階の薬などを売っている窓口に聞くと「ここにはない」と言われます。残念…。窓口の従業員は「4階の耳鼻科ならあるかも…」と言いました。すると、ここまで一緒に付いて来てくれたおばちゃんは「だったら4階の耳鼻科まで行ってみようよ!!」と言い、また一緒に付いて来てくれ、4階の耳鼻科まで行きました。…が、耳鼻科の先生が居ません。おばちゃんは無言で僕と一緒に先生が来るまでベンチに座って待ってくれ、先生が来ると一目散に走って行き、僕の代わりに「耳せんある?」と耳鼻科の先生に聞いてくれました。ところが…耳鼻科の先生にも「ここにはない」と言われてしまいます。僕もおばちゃんもさすがにもう無理だと思っていたのですが、このやり取りを見ていた患者の1人が「◇◇という店に売っているのを、以前、見た事がある」と教えてくれました。

 僕は首都テグシガルパに関しては詳しくないので、◇◇という店の場所も当然ながら分かりません。すると、ここまで付いて来てくれたおばちゃんがまた「大丈夫!!そこまで一緒に行ってあげるから!!」と言い、◇◇という店までも連れて行ってくれる事となりました。

 この◇◇という店は、結構、遠い場所にありました。しかも、このおばちゃんはもうすでに、ここまでかなりの道のりを僕と一緒に回ってくれています。…にも関わらずこの見ず知らずのおばちゃんは嫌な顔1つせず、一緒に歩いて僕を◇◇という店まで連れて行ってくれました。

 結構な距離を歩き、やっと◇◇という店に到着。おばちゃんが店員に「耳せんはないか?」と聞くと、店員が「あるよ」と言い、耳せんの場所を案内してくれました。ようやく、耳せんが見つかりました!!!!!


 
 一件落着…。と、普通なら、ここで終わりです。しかし、この話は、まだ続きます。



 おばちゃんと共に歩き回って、ようやく見つけた耳せんを持ってレジに行きます…が、長蛇の列…。僕はあえなく長蛇の列に並んで待つ羽目になりました。すると…何と、ここまで一緒に付いて来てくれたおばちゃんは、僕が買い終わるまで横で待ってくれているではありませんか!!おそらくおばちゃんは「外国人」である僕の事を心配し、ちゃんと無事に買い終わるまで待ってくれていたのでしょう。最後の最後まで、見ず知らずの僕のために…ここまでしてくれて…その気遣いが、本当に嬉しかった…。


 こうして僕は、無事に耳せんを購入する事ができました。耳せんはこれまでもずーっと探し求めてきたのですが、見つかった事はただの一度もありませんでした。8年前も含めてホンジュラスには2年以上居ますが、耳せんを購入できたのは、これが初めてでした。

 ここまで一緒に付いて来てくれたおばちゃんは満面の笑みを浮かべて「耳せんが買えて良かったね!!元気でね!!」と言い、何事もなかったかのように去っていきました…。


 全く見ず知らずの僕のために…。しかも、たかが「耳せん」のために…。一緒になって長い道のりを約40分間も歩き回り、一生懸命、耳せんを探してくれた通りがかりのおばちゃん。見ず知らずの他人のためにここまでしてくれる人は、日本でもなかなかいないと思います。何も見返りを求めない心優しきおばちゃんの親切心に、僕は深く感動しました。
 
 

 最近は、契約が半年間も残っているのに、アミーゴだった監督の裏切りもあり解雇になってしまったパリーヤス・オネでの話 や、「手続きを行う」と嘘を付かれてフティカルパのチャンスまで失ってしまったレアル・ソシエダでの話 などをブログに書き、それをご覧になられた方々は「ホンジュラスは、本当に酷いヤツが多いな!!何て無茶苦茶な国だ!!」と思われたに違いありません。

 確かに、そういう酷いホンジュラス人が多いのは、事実です。けど、実は、今日のこのおばちゃんのように、心優しきホンジュラス人が多いのも、これまた事実なのです。


 
 1人の心優しきおばちゃんのおかげで、何だかとても幸せな気持ちになりました…。
 



テグシガルパ!⑧




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