意外と近くに幸せはあったりして -4ページ目

冷静

ある日、山本の家に遊びに行く事になった。



初めて行く彼の部屋はいかにも男の子らしく、
少し散らかっていた。



いつも調子のいい事ばかり言って笑わせてくれる山本。



今日は少し口数が少ない。


ハル「今日は意外と静かなのね。」



山本「家にいるときはそりゃ少しは静かにもなるよ。二人きりなのにあのテンションでも困るだろ?(笑)」


ハル「確かに(笑)」



いつもと違う山本を見て、本当の彼を見れた気がして、嬉しく思った。



テレビを見ながら他愛のない話をしていたら、
時間はあっという間に過ぎていく。



なんかこの人といると楽だな。と思う。



突然山本の顔が近づいた。


キスをした。



不思議とドキドキしなかった。





黒崎との恋愛は心が完全に奪われて、
寝ても覚めても黒崎の事しか考えられない状態だった。



黒崎が愛しくて愛しくて、本当にどうしようもなかった。



その恋の突然の終わりにものすごく苦しんだわたしは、
山本とのキスでドキドキしない事に
何やら安心した気持ちになった。



こんな恋愛ならきっと傷つかずに済みそうだ。



そんな事を思いながら、キスをしていた。

山本

みえとみくにももちろん黒崎のことを話した。



二人共、一緒になって悲しみ怒ってくれた。



なんと言っても私たちはまだ若い。
すぐにまたいい人見つかるよ。
そんな阿呆にハルはもったいない。



そんな風に励ましてくれた。



母も同じくたくさん励ましてくれた。



表面的な傷は次第に消えていった。





そんな中、みくとその彼氏が私に友達を紹介してくれる事になった。



私たちな高校から五人。
みくの彼氏の友達五人。



大勢で学校帰りに遊ぶ事になった。



その中に山本君がいた。



彼の外見は、はっきり言って私のタイプではない。



はっきり言って、まったく好きではない。



しかし山本君はとても明るい人で、輪の中心にいる感じの人だった。



見た目はだらしなく制服を来ていて、
少し俗に言う、不良っぽいという感じがしたが
まわりを盛り上げるムードメーカーの彼がとても新鮮だった。



心の内がいつまでもジメジメしていたわたし。



彼と一緒にいたら毎日笑っていられるんじゃないかと思った。





次の日、みくに山本はどんな人が聞いた。



みく「バカだけど楽しいヤツだよ。
何?ハル山本がいいの?」


ハル「うーん。なんか楽しい人だなって思って。」



みく「あはは。わかった。また遊ぼうって言っとくよ~。」
みくは笑っている。



みく「最近ハルあんまり元気なかったから嬉しいよ!」



みくはずっと心配してくれてたようだ。



友達って大切だなと思った。




山本君と会う機会を作ってくれて、何度も数人集まって遊んだ。





彼とベルの番号も交換し、次第に仲良くなっていった。

押し込めた気持ち

実を言うと、かなり強がりだった。



裏切られた事はわかっている。



でもまだわたしの心の中に残っている優しい彼は
まだ好きだ。



でもいつまでも、メソメソしてちゃだめ。


メイがせっかく元気を出せるように言いづらい事を言ってくれたんだ。



優しかった彼は偽りだったんだ。



仕方ない。



それにそんな人の事を思い続けてしまうような間抜けにもなりたくない。



つらいけど頑張ろう。






この後、誰にも本当はさみしいんだという気持ちを打ち明けなかった。



口に出したら言葉に自分がとらわれてしまいそうだから。



平気なふりをして、自分も騙してしまおうと思った。


そしてそれは、見事に成功した。





でもこの時押し込めた気持ちが、
漠然とした「人恋しい」という気持ちに変わっていったように思う。



そのために間違った恋愛に進んでいってしまう事に
まだこの時は気付かなかった。