意外と近くに幸せはあったりして -2ページ目

夜の外出

高校1年の終わり頃の、とある土曜日。



この日、わたしの横にいる男は琢磨。



わたしの友達、ナツに擦り寄っている男は勇次。



琢磨と勇次は仲のいい幼なじみのようだ。



始め勇次とナツが友達になったようで、
そのうちにナツが友達であるわたしを誘い、
勇次が幼なじみの琢磨を誘ってこの4人になったわけだ。



高校1年の終わり頃は、この4人でよく遊んでいた。


琢磨と勇次は3つ年が上だった。



だから車の免許を持っていた。



行動範囲がいっきに広がる。



自転車ではいけない遠い場所に楽に遊びに行けるのが、ナツとわたしは楽しかった。



だからわたし達はこの男2人と遊ぶ事が多かった。



勇次はナツが大変お気に入りの様子。



ナツとよく手を繋いでいた。



「明日みんな休みだし、今日は○○でも行こうよ!」
そう言い出したのは勇次だった。



○○とは恋人達のデートスポットとして有名で、一度は行ってみたい場所だった。



しかし、そこに行くには車で片道一時間半はかかる。


勇次がノリノリで言い出した時間は7時。



当時のわたしの門限は9時だったので、当然そこに行けば門限に間に合わない。


ハル「わたしは行きたいけど、門限に間に合わないから行けないや。ごめんね。」



しかし、3人はあきらめない。
特にナツ。



ナツ「あたしのうちに泊まるって電話しちゃいなよ!○○行きたいじゃん!」



わたしは誘惑に負け、家に電話した。



ハル「ママ?あのね、今日ナツのうちに泊まっちゃうね!」



母「わかったよ。夜遊びするんじゃないわよ。」



ハル「うん!わかった!」


夜に外でフラフラしている事は駄目だったが、外泊は許してくれるのだ。



母を騙してしまい、少し気が重くなる。



しかし、滅多に行けない○○へ、滅多に友達と過ごすことのない時間に夜の街をドライブしている。



そんな状況にワクワクして、
すぐに罪悪感を忘れてしまった。

高いプライド

わたしはプライドが高いのかもしれない。



男一人の為に、ボロボロになるのは恥ずかしい事のように思っていた。



みくをさらりと許せたのも、その気持ちが多少なりとも手伝った気がする。



男性にのめり込んで、傷ついて終わるならいっその事、
こっちが遊んでやっている気分になればいいのだ。



そうすれば絶対傷つかない。



そんな風に考えた。





それが逆に純粋な恋愛を遠ざけてしまうなんて、
傷つく事が怖くなっていたわたしにはわからなかった。




それから、たくさんの男性と出会いがあった。



自ら出会いを求めずとも、好奇心旺盛な年頃の女子達の周りには、そんな機会がゴロゴロしていた。



2人きりではなく数名でボーリングやカラオケなどによく遊びに行った。


男の子は信じないと思いつつも、ワイワイと男女が集まり遊んでいるうちはとても楽しかった。


でも決まって数回遊んで仲良くなると、
男の子はそれぞれ狙いを定め2人きりになりたがった。



中学の時と比べると、男の子は女の子に優しくするのがうまくなったように感じる。



「かわいいね」「ハルちゃんに毎日会いたくなる」などの甘い言葉をかけてくる。



思ってもいないくせに。



だって涼しい顔をしている。
優しく笑う顔はちっとも優しくない。


そんな顔でほめてくれても、
わたしにはただチャラチャラしているだけの男のように見える。



友達でいたいのに、やめてほしい。



わたしはこの時点で興ざめする。



しかし、友達が相手を気に入っている場合、
帰りたいとは言いづらい。


数名で遊ぶのは気楽だったが、こんな状況になると自分の意志だけで自由に帰れないのが難点だと思った。



仕方なくだか付き合うしかない。
しかし場を白けさせないように露骨に嫌な顔をするのも避けたい。



そんな事を繰り返していたら、
いつの間にか上手に男の子をあしらえるようになった。



男の子は真剣に向き合わなければとても単純で、簡単に思えた。



わたしは騙せない。



人を見下してしまう、愚かな自分になっているのにも気付かずに
バカなわたしは賢くなった気がしていた…。

友達か男か

わたしは数分だまっていたようだ。



みくが申し訳なさそうにわたしを見つめている。





わたしは数分のうちにたくさんの事を考えた。




みくと山本はたぶん関係した。



でも日頃の二人を見ていると、おそらくお互い遊びだろう。



好奇心旺盛な年頃。
みくもさばけた子で、十分遊びでそういう事をするのも考えられるし、
山本もみくだけという様子は伺えない。



わたしは意外と冷静だった。



大事な人を一度に二人を失うのは辛い。



山本か、みくか。



山本はこういう男だ。



黒崎となんら変わらない。さらに、わたしの友達に手を出しているところが、黒崎より達が悪い。




わたしの恋心は一瞬で醒めた。
悲しみよりも先にあきれた気持ちが強い。



男はこんなものだ。
気付いていたけれど、やっと本当に目を醒ますことができてかえって良かったとも思った。





みくは応援してくれたのに…。


でも応援してたのは山本の事好きではないからだろう。



根は悪い子ではない。
友情より一瞬の好奇心が勝っただけだろう。




きっとこれで懲りてくれるだろう。



わたしはみくを選んだ。



ハル「みく、わたしもう山本はいいや。あんな男のためにみくを無くすのはもったいないと思う。気にしないで。」



みくは小さな声で
「ごめんね。」と言った。



わたしは下らない恋愛で友達を失わずにすんだ。



彼女はこれ以降、同じ過ちを繰り返すことはなく、
今でも大切な友達だ。



この後、山本に連絡を一度もしなかった。
彼からも連絡はなかった。


わたしの判断は間違っていなかったと思う反面、
「男を信用したらバカをみる」と強く思うようになった。