『別離』 | High Fidelity~ふわふわlife~

High Fidelity~ふわふわlife~

元下っ端経営コンサルタントの日々の日記




これも先月鑑賞した作品です。

アスガー・ファルハディ監督の『別離』を観てきました。


ストーリーは以下のとおりです。

テヘランで暮らす妻シミンは、11歳になる娘の将来のことを考えて、夫ナデルとともにイランを出る準備をしていた。
しかし夫はアルツハイマー病を抱える父を置き去りにはできないと反対したため、妻は家庭裁判所に離婚申請をする。
一方、ナデルは父の世話のためにラジエーという女性を雇うことにした。
ある日、ナデルが帰宅すると、父は意識不明でベッドから床に伏せていた。
ナデルはラジエーを問い詰め、勢いに任せてアパートから追い出してしまう。
その夜、ラジエーが入院したとの知らせを受ける。しかも、彼女は流産したというのだった・・・。
(『別離』 フライヤーより)



 今年のアカデミー賞で外国語映画賞を受賞した作品です。


感想ですが、
ストーリーの内容・構成もよく練られていますし、
そのストーリーを紡いでいく役者陣の演技も良かったように思えます。
イラン映画の奥の深さをあらためて感じました。

完成度高いです、この作品。


作品の中の登場人物がそれぞれが家族を想うがために小さな嘘をつくのですが、
結果その嘘が予想もつかないような結果を招いていってしまいます。


その嘘もきちんと物語の中で回収されていきますし、
BGMなどで煽ることは全くせずに登場人物の内面の苦悩を小出しにして、
淡々と進行させていく監督の力量には驚かされます。

剛速球やものすごい変化球で相手をねじ伏せるのではなく、
投球術で相手打線を翻弄するベテランピッチャーのような進行で観客を惹きつけています。


イランという日本とは異なる国の話ですが、
「離婚」「介護」など家族間で抱える悩みは同様に万国共通なのかなあと思いました。


あと宗教観が一つのテーマとなっていて、
信仰というものに対する温度差がこの作品では浮き彫りにされていて深いなあと感じました。

イスラム教シーア派が多数を占めていて、神権政治に近いような国家体制のため、
かなり信仰心が強い国民なのかなあと勝手に思っておりましたが、
人によって程度の差が激しい様子がわかって良かったです。
(ラジエー夫婦はあれだけ信仰心に違いがあるのに、よく結婚したなあと思います・・・)


一度観終わった後もあのシーンではどのような演技をしていたかなあと、
振り返ってもう一度観てみたいなあと感じた作品です。

結構重い話なので、疲労度は大きいと思いますが・・・


★・・・4.0/5.0