妻を亡くし二人の幼い娘・老母と暮らす清兵衛は貧しく風采の上がらない小役人で、仕事仲間から「たそがれ殿」と嘲弄されていた。だが彼は実は剣の達人で、ひょんなことから幼なじみの朋江につきまとう元夫を木刀で叩きのめす。
その腕を見込まれて藩から受けた命令は、上意討ち、つまり殺人であった。
山田監督はそれまでの時代劇の背景が明る過ぎて不自然であることに不満を持っており、行燈や蝋燭しかなかった江戸時代を忠実に再現しようとしてわざと映像を暗くしているとのこと。それが奏功して、上意討ち相手の剣鬼・余吾善右衛門(田中泯)の不気味さが際立っている。
自分と似た境遇の善右衛門に共感し、闘いを避けようとする清兵衛。だが善右衛門の魔剣は容赦なく清兵衛に襲いかかる。
果たして清兵衛は生き残ることができるのか。迫力ある決闘シーンにハラハラさせられた。また朋江との愛の行方も気になりながら飽きることなくラストを迎えた。
さすがは山田洋次監督!
