笠智衆、佐田啓二、岸田今日子といった懐かしの名優と、まだ若い岩下志麻が出演している。
適齢期を迎えた娘、学生の息子と3人ぐらしの初老(といっても五十代)の主人公が、友人たちの勧めによって娘を嫁がせるまでを描いた作品。
娘は嫁ぐと男所帯になってしまう父と弟を気にしてか、縁談を渋っていたが、好感を持っていた兄の会社の後輩に振られてしまうと、父の説得でお見合いをしてすぐに結婚という運びとなる。

「秋刀魚の味」というタイトルにはなっているが、全く秋刀魚のエピソードは出てこない。小津安二郎特有の山場のない淡々とした描写が続く。大きな感動もないが、明治生まれで駆逐艦の艦長を務めた武骨な父親が、娘に出ていかれると生活に困るだろうに、娘の幸せを願って結婚を勧める辺りが見どころか。

レトロな昭和の街が懐かしい。


それにしても時々主人公の友人が、卑猥な話を度々するのが何となく残念だった。この時代の初老の男どものモラルの水準がわかるというものだ。