デビット・ボウイが先月亡くなってしまい、追悼の気持ちを込めて観ることにした。


公開時は大島渚がボウイを始め、たけし、坂本龍一を起用した異色の戦争映画を製作したと、マスコミが相当取り上げたが、それらの出演者は当初予定していたキャストの都合がことごとくつかず、お鉢が回ってきたという、いわば偶然の産物だったようだ。

しかしこれが結果的に奏効した。



日本人と欧米人の捕虜観、死生観、武士道、神道とキリスト教の宗教観の比較、などの多くの観点があり、そのためかシーンが数多く切り替わった。


だから、いい意味でも悪い意味でも突っ込みどころが多数あった。
すべてをここに記さないが、たとえばー。


戦争映画だが戦闘シーンはまったくない。
戦闘よりも戦争という異常状況下に置かれた人間ドラマの作品であろう。


女性が一切出てこないため、坂本龍一演じる女形のようなヨノイ大尉が、ボウイ演じるジャック・セリアス少尉に不思議な魅力を感じてしまう点、またヨノイがセリアスにキスをされて卒倒してしまうシーンなどは、ホモセクショナルへの静かな賛美が感じられる。
(しかし、ヨノイって、どんな漢字を書くのだ!)


ジャック・セリアス少佐が、気弱な弟との関係を回想して悔恨するシーンもあるが、ストーリーにどんな影響を与えているのか…。


収容所の事実上のNo.2となって暴虐を尽くす、たけし演じるハラ軍曹は17歳で軍に志願したそうだが、当時の叩き上げの下士官がそうであったから、恐らく百姓の次男坊以下の出身だろう。
しかしいくら収容所とはいえ、軍曹程度の身分の下士官が、あんなに権力を持てるものだろうか。


そして、収容所で酔っぱらって上機嫌にローレンスに対し、クリスマスには自分がサンタクロースを演じると何度もいうハラ。
しかし標題になっている、クリスマスを祝うハラのシーンはなかった。


ラストシーンで立場が逆転した、ハラとローレンス面会のシーンがある。
明朝処刑が決定しているハラが、ローレンスに涙ぐんでかけた言葉ー
「めりいくりすます、ミスター・ローレンス」

これが助命を懇願する暗喩だと解釈する人もいるのだが、拙者はそうは思えぬ。



………。



結局主人公が誰だったのか、なにを一番描きたかったのか、よく理解できなかった作品である。



けれども、大ヒットした主題歌と、すでに鬼籍に入ってしまった大島渚、デビット・ボウイ、ついでに言って悪いが、朝鮮人軍属を演じた元キャロルのジョニー大倉へのオマージュと鎮魂を込めよう。


評価3.5。