男女の性の不条理に切り込む衝撃作。
人の奥底に抱える醜さと美しさを抉る、センセーショナルな映画。
映画「先生の白い嘘」
高校教師の原美鈴は、女であることの不平等さを感じている。
教卓から生徒たちを見下ろし、密かに自尊心を満たしている。
ある日美鈴は、親友の美奈子から早藤と婚約したと告げられる。
次第に、3人の複雑に歪んだ人間関係が明らかになってくる。
6年前に遡り、美鈴は早藤から性的暴行を受けたことが分かる。
早藤を忌み嫌いながらも、呼び出しに応じては関係が続いていた。
すぐに声を上げることが出来なかった、美鈴の苦悩と葛藤。
一人で抱え込んでしまう弱さより、もっと厄介なことに気付く。
得体の知れない欲望や快楽に溺れ、応じてしまう歯がゆさ。
精神的、肉体的に支配され、抵抗出来ず従っている辛い現状。
愛のない性行為でも、自分の中に性の歓びがあると悶え苦しむ。
これを女性である性差の不条理というには、難しい気がした。
男女の性の格差は多少はあれど、個人差があるように感じた。
それに、地味で平凡な美鈴が、美奈子に優越感を感じるのは。
早藤のことがあるから、愚かだと見下すことが出来るのだろう。
教職に就きながら、実は腹黒く醜い内面とのアンバランス。
自信を嫌悪し、男に憎悪を抱き、ごまかしながら嘘で保つ。
脱いでいなくても、難役に挑戦した奈緒さんの熱演はお見事。
かなりの勇気と覚悟を持って挑んだと思うし、素晴らしかった。
早藤は凄まじいほどのクズ男で、女性蔑視ぶりに驚くし恐怖。
風間俊介さんも、最低の男になりきっていて迫真の演技だった。
そんな早藤を愛する美奈子だが、どこが良いのか理解出来ない。
私じゃないとダメだという執着も、ひとつの支配の形なのか。
共感出来ない部分も多く、簡単に割り切れないややこしさがある。
人間の本性と理性の対峙、狂気的な愛憎渦巻く人間模様が展開。
美鈴は、担当クラスの男子生徒・新妻の不倫の噂について問う。
そして彼から、衝撃的な真相と性の悩みを打ち明けられる。
女性の不平等さに耐えていた美鈴は、思わず本音を漏らす。
新妻は自分に本心をぶつけた美鈴が気になり、惹かれていく。
男女の違いはあれど、初めての時同じ経験をした痛みの共有。
美鈴を救いたいと思う新妻の存在に、変化を見せる美鈴。
教師と生徒という禁断の関係も危うくて、ハラハラさせる。
猪狩蒼弥さんも、残酷な純粋さと脆さがあって良かった。
性への矛盾と、自分の感情に向き合うようになった美鈴。
新妻から強さを得た美鈴は、ついに早藤と戦う決意をする。
暴力では返り討ちにあうが、気持ちでは自分に勝ったのかも。
早藤にズバズバと心をついていく姿が、痛々しくもすごかった。
その後の全て割り切ったような態度も、したたかでたくましい。
これも女性の本来の強さだと思うし、成長と変化に安堵した。
色んなものを突き付けられて、重く嫌な気分になってしまうが。
人間の業と欲望を焙り出しながら、最後には救いが見えた。
ただ、一概に男とは、女とは、と決めつけて語って欲しくない。
ジェンダーフリーのイマドキに、考えさせられる作品だった。
おまけ
追い山ならしが終わり、いよいよ本番が近付いてきました。
ちょうど連休中なので、盛り上がることでしょう。
・・・KBC、なんだね。(笑)