映画「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」 | champagne-bar-tritonのブログ 映画と観劇と浜田省吾

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福岡市にある、「シャンパンバー トリトン」のオーナーです

「サイドウェイ」の名タッグ再び!のヒューマンドラマ。
孤独な魂が寄り添い合い、思いがけない絆が生まれる。


映画「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」

 


1970年冬、ボストン近郊にある全寮制の名門バートン校。
生徒たち誰もが家に帰り、クリスマスと新年を家族と過ごす。


しかし、家庭の事情などで留まらざるを得ない者も数名いた。
その生徒たちの監督を務めることになった、古代史教師ハナム。


生真面目で融通が利かず、生徒からも教師からも嫌われている。
校長からあることへの罰を受けたのだと、渋々引き受ける。


偏屈な男を魅力たっぷりに演じる、名優ポール・ジアマッティ。
彼が抱える秘密が明かされるたびに、人間味が増し魅了される。


勉強は出来るが反抗的で、家族に問題を抱える生徒アンガス。
母が再婚相手との旅行を優先したため、急遽留まることになった。


最初の数日は、ぶつかり合いながらも共に過ごす生徒たちだが。
一人の父親が迎えに来て、アンガス1人が残されることになる。


料理長のメアリーも、ベトナム戦争で一人息子を失ったばかり。
雪に閉ざされた学校で、孤独な彼らの魂は寄り添いあっていく。


まだクソガキなアンガスの抵抗が、微笑ましくて可笑しかった。
強がっていても寂しく、まだ親の愛を求めているのが分かる。


ハナムは次第にアンガスを理解し、受け入れるよう変化を見せる。
互いの心情が変化していく過程が、愉快で楽しくて心が温まる。


斜視をいじられ、体臭を指摘されるハナムは女性とも縁遠い。
その理由が明かされると、切なくて悲しくてたまらなかった。


やがて、ハナムが抱える過去の秘密が判明し、衝撃的で驚く。
悔しさやコンプレックスが分かるほど、不器用過ぎて切なくなる。


また、アンガスが抱える秘密も明らかになり、これまた切ない。
いつしか二人は秘密を共有し、世代や立場を越えた絆を育む。


メアリーも含め、孤独な者同士が寄り添い、存在に救われる。
誰もが心に傷を抱えていることが分かり、愛おしくなってくる。


前半は笑っていたが、次第に随所で感動し涙が止まらなくなった。

愛すべき傷付いた人々も、激動の70年代を懸命に生きている。


この休暇中のある出来事がきっかけで、アンガスは退学の危機に。
次は陸軍士官学校に送られてしまうが、ハナムが出した選択は。


若者の未来を想い、自らが犠牲になる決意をした勇気に感動した。
優しく立派な教師に成長しているが、あまりにほろ苦い結末。


そして、最後までお酒への愛を感じさせ、酒好きにはたまらない。
笑って泣いて心に沁みる、素晴らしい感動作で終始楽しめた。
 

ここ最近で最も刺さった、年間ランキング入り間違いなしの大傑作!

「サイドウェイ」も大好きだが、期待を見事に上回る作品だった。