ぜったいに諦めない家族が挑んだ、23年間の愛の実話。
人工心臓の開発に挑んだ家族の、奇跡の物語。
映画「ディア・ファミリー」
小さな町工場を経営する宣政の次女、佳美には心臓に疾患がある。
先天的なもので、1970年代の日本人にとって致命的な病だった。
佳美が幼い頃に余命10年と言われ、絶望する宣政だったが。
娘の命を救うため、自分が人工心臓を作ると立ち上がる。
医者でもない、ズブの素人による医療器具開発の挑戦の物語。
それは限りなく不可能に近く、前途多難な道程だった。
そんな宣政を中心にした家族の挑戦の過程を、丁寧に描く。
いかにしてカテーテルが出来たのか、誕生秘話でもある。
両親は必死で勉強に励み、有識者に頭を下げて回るのだが。
あまりに果てしなく困難で、誰もが無理だと否定する。
諦めろと諭されるが、宣政は決して諦めず挑み続ける。
勇気と根性、へこたれない強さに驚くばかりで感動する。
その原動力は、ひとえに娘を救いたいという親の無償の愛。
宣政は自費を投げうってでも、開発に全力を注いでいく。
だが、承認されるまでには、様々な障壁が立ちはだかる。
常に宣政を支え、寄り添う妻の愛も、強く美しく感動的。
互いを想い合う、三姉妹の愛と絆も素晴らしく感動した。
ひとつの問題をクリアしても、さらに次の難関が待っている。
やがて研究は行き詰まり、長い年月を有することになる。
その間も、佳美の命のタイムリミットは刻一刻と迫ってくる。
成人式まで生きられたのも、すでに奇跡を起こしていた。
宣政の絶望と悔しさ、歯がゆさが分かり切なくてたまらない。
医療技術を取り巻く現状の厳しさ、難しさがよく分かる。
佳美のためにと得た宣政の心臓の知識は、すでに膨大なもの。
挫折する宣政に、今度は別の人に生かして欲しいという佳美。
今度はカテーテルの開発に挑むのが、二人の共通の夢になる。
自分と同じく、心臓の病に苦しむ人を救ってほしいと願う。
佳美の優しさと覚悟を思うと、健気でいじらしくて泣ける。
こうして、医療の世界と無縁だった男が大きな奇跡を起こす。
彼の熱意が多くの人を動かし、医療界を揺るがすことに。
かつて関わった人々が、時を越えて再び宣政と手を組む。
長年の苦労が無駄じゃなかった、報われた瞬間も感動した。
苦悩の連続の奇跡の実話で、ベタなのに涙が止まらなかった。
夫婦愛に親子愛、家族の愛と挑戦の素晴らしい感動作だった。