時代劇の、愛と感動のリベンジ・エンターテインメント。
ある冤罪事件に巻き込まれた男の、誇りをかけた復讐を描く。
映画「碁盤斬り」
浪人の柳田格之進は、娘の絹と江戸の貧乏長屋に暮らしている。
かねてから嗜む囲碁にも人柄が現れ、噓偽りない勝負を心がけている。
実直で真面目、常に清廉潔白であろうとする堅物な侍らしい男。
草彅剛さんが、ひたすらシリアスに誇り高く気高い武士を熱演。
そんな父を尊敬し、支え合って慎ましく生きる絹が可愛らしい。
清原果耶さんの儚い美しさと、凛とした雰囲気が似合っている。
やがて格之進はある罪を着せられ、故郷の藩を追われたと分かる。
妻も失い悔しい思いをしたが、落ちぶれても誇りを失っていない。
そんな格之進たちは、囲碁をきっかけに萬屋源兵衛と弥吉と出会う。
格之進の真っ直ぐな囲碁に感銘を受けた源兵衛は、心を入れ替える。
囲碁のルール等は分からないが、知らなくても充分楽しめる。
娯楽であり、賭け事でもあり、頭脳戦では武器にもなると分かる。
弥吉と絹が互いを意識し始める、囲碁を通した交流が微笑ましい。
だがある日、格之進は弥吉たちに窃盗の濡れ衣を着せられる。
冤罪ならば、堂々と無実を主張すれば良かったのに、と思った。
無理に工面して返済したら、やっぱり、と思うだけではないか。
そのために絹が自ら犠牲になる道を選ぶのは、父想いで切ないが。
そんな中、旧知の藩士よりかつての事件の真相を聞かされる。
格之進を陥れた柴田兵庫を探し出し、復讐することを決意。
絹のためにも、格之進の命と誇りをかけた戦いの旅が始まる。
過去の冤罪事件と萬屋との問題は別なのだが、同時進行する。
格之進はまたも疑いをかけられ、怒り心頭という感じだろうが。
正しくあろうとするばかり、不器用で融通が利かないというか。
柔軟性がない性格は、生き辛くて時に損をするのではと思った。
ようやく柴田を見つけた格之進は、囲碁で勝負を持ち掛ける。
柴田から、格之進を恨む理由が明かされ、単純に憎めなかった。
仇討ちの物語はよくあるが、敵にもそれなりの事情がある。
地味な囲碁が続く中、ついに激しい殺陣に発展しスリリング。
双方とも男らしい決着となり、迫力があり素晴らしかった。
さらに同じタイミングで、萬屋の方の誤解もとけることとなる。
格之進の怒りは収まるのかハラハラしたが、感動の決断だった。
そんな因縁ある相手に、嫁ぐ&嫁がせるか?と思ったが・・・。
「赦しの美学」も武士らしく、幸せのために必要なのだろう。
またお金に執着がなかった格之進が、最後に変化を見せる。
自分のせいで・・・という人々に対する、ラストの行動。
愛と感動の復讐劇で、囲碁が分かればもっと面白いと思う。
正義感の強い格之進の信念を貫く姿に、感動するのだろうが。
清濁併せ吞む生き方じゃないと、生き辛くなるだけと身に染みた。