中国の二大スター競演のスパイ・ノワール・サスペンス。
第二次世界大戦下の中国を舞台に暗躍した、名も無きスパイたちの運命。
映画「無名」
第二次世界大戦下、1940年代の中華民国・上海。
中国共産党、国民党、日本軍のスパイたちが繰り広げる諜報戦。
お互いの素性が分からない中で、一進一退の攻防劇が始まる。
スパイ同士がしのぎを削る、究極の心理戦の応酬を描く。
前半は、じりじりとした駆け引きと腹の探り合いが続く。
誰が敵で味方なのか、信じるものは何か翻弄されるばかり。
人物相関図が分からないと、関係性が分からず混乱する。
セリフが少なく、あまり説明されないので理解が難しい。
どうなるのか?!とハラハラした瞬間に突然場面転換する。
時系列も前後するので、ますます分かりにくい感じだった。
後半になり、あの場面の続きが明かされ、なるほど、となる。
真相が判明するまで、しばらくの辛抱が必要になる難解作。
1940年代の上海を再現した壮麗な街並みは、素晴らしかった。
豪華な衣装や時代の空気感など、こだわった映像美もお見事。
対比として日本軍の悪行や愚かさを盛り込んでおり、醜い。
着こなしが綺麗な中国スパイのオシャレさが、際立っていた。
トニー・レオンは渋くてかっこよく、さすがの存在感がある。
若手のワン・イーボーが、クールでかっこよくて素敵だった。
横顔のアップを長回しで映し出す場面は、美しさに見惚れた。
スーツ姿が似合っていて、スタイルが良く彼の魅力満載。
そんな二人がぶつかり合うクライマックスは、一番の見どころ。
互いにボロボロになるまで戦う肉弾戦は、痛々しくてリアル。
対決するアクションシーンは、迫力があり凄まじかった。
極秘任務にあたるそれぞれの思惑が交錯する中、戦況は激化。
信じるか、裏切るか、二重スパイは誰で、最後に笑うのは誰か。
日本軍は終始悪者に描いているので、日本人は強欲で非情。
渡部に忠義を尽くす姿に違和感を感じながら、衝撃のラスト。
最後に、真の関係性や正体が明かされる、カタルシスがある。
きっちり報復し再生した姿に、中国で評価されるのも納得。
地味な心理戦が続く、スリリングで美しいスパイ・ノワール。
内容より、新たなスター、ワン・イーボーの活躍を楽しめた。