悪を蹴散らす、シスター・ハードボイルド・アクション、爆誕!
スルーしようか、ずっと鑑賞を迷っていたけど、やっぱり気になって。
映画「ガンパウダー・ミルクシェイク」
ネオンきらめく、クライム・シティで暗躍するサムは腕利きの殺し屋。
ネイサンが率いる暗殺組織に属し、命令に従い殺戮を繰り返している。
15年前、ダイナーで母と一緒のところを襲われ、以来母は行方不明に。
母もかつては殺し屋で、サムはそのまま組織に雇われる事となった。
ある夜、組織の金を会計士が持ち逃げしたと、取り戻すよう指令を受けるサム。
その際に会計士ともみあいとなり、銃で瀕死の重傷を負わせてしまう。
実は会計士は娘を誘拐されて脅され、娘を救うために金を盗んだと分かる。
娘のエミリーを助けて欲しいと懇願され、会計士を病院に運んだ後に。
サムは組織の命令に背き、組織の金を手に取引現場に向かうことにした。
エミリーを救うが、敵は仲間割れして戦う間に、金と共に木っ端みじんに。
サムは組織を追われ、命を狙われる羽目になるが、さらに不運が重なる。
冒頭のミッションの最中に、敵対する組織の息子一味を殺してしまった。
ネイサンは組織同士の争いを避けるため、サムを差し出すことを提案。
こうして、サムは次々と組織が送り込む刺客に、襲われることとなる。
銃撃戦に肉弾戦など、ド派手で迫力がある激しいアクションがてんこ盛り。
あらゆる身近な物を武器に変えて戦うなど、戦法もユニークで面白い。
痛々しい生身のアクションと、濃厚なバイオレンスがたっぷり楽しめる。
サムを演じたカレン・ギレンの身のこなし、身体能力の高さが素晴らしい。
長身を生かし、体を張ったたくましい戦いぶりが、かっこよくて頼もしい。
たった一人で、集団で襲い来る屈強な男どもをバタバタとやっつけていく。
戦う強い女性というのが最近のトレンドなのか、やはり爽快感がある。
サムは幼いエミリーを連れて、壮絶で壮大な逃亡劇と戦いを繰り広げる。
エミリーの父を撃ってしまった張本人という、後ろめたさもあるのだが。
戦いの過程で、世代を超えた絆と信頼関係を構築していくのが微笑ましい。
腕が使えなくなったサムが、エミリーに運転させてのカーチェイス等。
戦闘能力の高さだけじゃなく、知恵と工夫を生かした戦いぶりが愉快。
シリアスの中にユーモアを盛り込み、随所でニヤリとさせるのが良かった。
「3バカ」がある効能でずっと笑っているのが、見てて可笑しくなった。
夜の街を駆け抜ける二人は、サムの母スカーレットと奇跡の再会を果たす。
そして、かつて殺し屋だった3人の女たちが仕切る図書館に飛び込んだ。
母のかつての仲間たちで、図書館には銃火器の数々を貯蔵していた。
女たちはタッグを組み、襲い掛かる敵を相手に壮烈な反撃を始める。
若い世代だけじゃなく、中年女性までもが武器を手に華麗な戦いを披露。
銃だけに限らない彼女たちの戦いぶりが、愉快痛快でワクワクさせる。
血しぶきが飛びまくり、豪快に人が死にまくるのだが、グロさを感じない。
バイオレンス描写が、しっかりエンターテインメントとして昇華している。
図書館でのバトルは色んな作品を彷彿させ、カルチャーも含めて楽しい。
仲間としての友情と絆、女たちの連帯と共闘が頼もしくてゾクゾクと興奮。
さらに、孤独な者同士、血の繋がらないエミリーとの疑似家族のような関係。
15年ぶりでも、決して切れる事のない親子の縁と、深い無償の愛が感動的。
ラスト、ダイナーでのスローな映像を生かしたワンカットの戦いがお見事。
着地点も、さらに皆で行動を共にしていく、その後に救いと希望が見えた。
組織に歯向かい、悪を蹴散らす、刺激的なハードボイルド・アクション。
ポップでカラフルな衣装や世界観、スタイリッシュな映像も見どころ。
子役のエミリーも可愛くて、きっちり仕事をする優秀さも良かったし。
リアリティを追求せずとも単純明快な娯楽作として、素直に楽しめた。