今も愛され続ける、もうひとつのハチの物語。
モスクワの空港で2年間、飼い主を待ち続けたパルマの実話が映画化。
ロシアと秋田が生んだ奇跡の感動作、地味そうだが鑑賞。
映画「ハチとパルマの物語」
冒頭、秋田の空港に降り立つ、ロシアの初老の男性と幼い少女。
秋田犬の里のオープンイベントにやって来たこの男性は、かつて・・・。
9歳の時にパルマと出会い、固い絆で結ばれたのだった。
早速、壇蜜を始め、秋田に所縁のある人物たちが登場する。
ザギトワ選手も大好きな秋田犬について語り、華を添えている。
過去に遡り、1977年のモスクワの空港で、搭乗を急ぎ焦る男性。
シェパードのパルマは検疫検査を通過出来ず、断られてしまう。
飼い主は仕方なく空港に放ち、置き去りにしたまま出発する。
どうしても行かなければ、と言うが、なんと身勝手で無責任な事か。
パルマは空港を彷徨い、何度も警備員に追い回される羽目に。
人間のエゴで、犬が酷い目に合うのが可愛そうで、腹立たしくなる。
そんな中、父親に引き取られることになった少年、コーリャがやって来る。
母を亡くし、頑なに心を閉ざし、親子関係は最悪なボロボロ状態だ。
パイロットの父親とは、これまでまったく交流がなかったことが分かってくる。
孤独で居場所を失った者同士、共感を覚え仲良くなるのも納得。
パルマは飼い主の帰りを信じ、いつも飛行機が到着すると待つように。
2年間待ち続けたというのは実話だろうが、コーリャも実在の人物?!
どこまでが実話で、どれが脚色なのか、よく分からなかったが。
動物と子供って、泣ける映画の鉄板、何度もウルウルきてしまった。
従順で健気で、賢いパルマが可愛くて、追い詰められるほどに切ない。
そんなパルマを救おうと、多くの人々の善意が集まるのも感動的。
飼い主が迎えに来るよう、パルマの存在をマスコミにアピール。
これがきっかけで評判を呼び、パルマは空港のシンボルとなる。
大人気となり、パルマ目当てに多くの人々が訪れるように変化。
この手の人気にあやかろうとする奴って、どこにも必ずいるんだな。
ただの美談だけじゃなく、人間の欲望や醜さ、傲慢さも盛り込んでいる。
コーリャはパルマを守る為、必死になって何度も大人たちに立ち向かう。
孤独なコーリャ自身の、成長と変化の人生再生物語でもある。
また、父は初めて父性が芽生え、親としての自覚を持つようになる。
パイロットの仕事に打ち込むあまり、コーリャと母を捨てた過去。
父はそんな過去と自分、コーリャと向き合い、成長と変化を遂げていく。
その過程で、次第にコーリャと打ち解け、親子の絆を構築していく。
こちらの親子愛のヒューマンドラマも、とても感動的で良かった。
そしてついに、パルマの飼い主が空港にやって来て、再会を果たす。
私はてっきり、感動の再会!となるのかと思いきや、ビックリの展開。
確かに、忠犬ハチ公と違うのは、飼い主は生きていて知っていた点。
事情があったとはいえ、所詮パルマを捨てた無情な奴に変わりはない。
待っている間に、すっかり次の飼い主コーリャに情が移ったって事か。
確かに、またいつ捨てるか分からないし、この着地点で良かった。
父親がクビを覚悟で、コーリャとパルマのために最良の行動をとった。
彼の勇気は感動的で、同僚たちのサポートも心が温まり素晴らしかった。
ラストは、冒頭に繋がり、日本でのエピソードが描かれるが。
無理にハチ公と絡める必要はなく、とても政治的な感じがした。
今作は完全に「コーリャとパルマの物語」なので、それだけで充分。
種の違いを超えた友情と絆、というのは、美しく感動的でホッコリ。
日本のハチ公の物語とは全くの別物と思うが、これはこれでアリ。
寂しそうだったり、嬉しそうな犬の表情がたまらなく、楽しめた。