これまでは、
子犬が人を噛むパターンを見てきましたが、
今回からは成犬編。
子犬時代にいろんな経験をし、
なおかつ、飼い主さんがきちんと
しつけをしているにもかかわらず、
場合によっては犬が人に
噛み付くことは起こりえます。
今回ご紹介するシチュエーションは、
噛みを助長する叱り方
です。
皆さんは、
マズルコントロール
という言葉を聞いたことはありますか?
マズルとは、
犬の鼻から顎の付け根までの部位です。
犬種によって長短様々。
シェパードのようにスラッと細長い犬もいれば
ブルドッグやシーズーのようなペチャンとした犬も。
犬は、
コミュニケーションの一つとして
相手のマズルを口で咥えます。
また、母犬が子犬のイタズラを
たしなめるときに咥えたりもします。
このような行為がマズルコントロールです。
時と場合によりますが、
強く噛み付くように咥えるのではなく、
あくまで軽く咥える程度のことが
ほとんどです。
同じことを野生のオオカミもします。
昔の動物行動学の研究者は、
野生のオオカミの群れの中で行われる
上下関係を示すための
マズルコントロールを見て、
『人間と犬の間にも、この習性を
応用して上下関係を示せば
良いのではないか?』
という発想を得ました。
『どうやら上位のオオカミが
下位のオオカミのマズルを
咥えているようだ』
との結論に至った研究者達は、
オオカミのマズルコントロールをまねして
人が犬のマズルを手で掴んで
人の方が上位であることを
犬に示すという方法を
編み出しました。
さらに、
犬への懲罰の意味で
マズルコントロールをすることが
有効であると考えました。
その考えは、犬のしつけのスタンダードとして
確立されていきます。
昔の犬のしつけの本の多くは、
『犬を叱る時は、
犬の目を見つめながら
マズルコントロールをしましょう』
と推奨していました。中には、
『犬がキャンキャンと
悲鳴をあげるくらい
強く握りましょう』
と書いている本もありました。
犬にとって重要な部位であり、かつ
デリケートな部位であるマズルを
強く掴まれることは、心身共に辛いことです。
穏やかな性格の犬であれば、
萎縮してしまいおとなしくなるのですが、
問題は、気の強い犬や
逆に気の弱い犬の場合です。
そういった犬は、
次またマズルコントロールされそうになると、
『そうはさせるか!!』
『嫌だ、怖いよ~!』
と先制攻撃してくることがあります。
自分の身を守るための攻撃です。
マズルを掴もうとした人の手に
噛み付こうとするのです。
その犬の反応を見て、飼い主さんが
『ダメでしょ!』
と更にマズルコントロールしようとして、
火に油を注いでしまう
可能性があるんです。
マズルコントロールに関しては、
トレーナーの間でも賛否両論です。
今では否定派の方が多いように感じます。
私は、
罰や叱責が目的の
マズルコントロールは
使用しない方が良い
と考えます。
(もっと別の方法があると考えます)
ただし、マズル部分を触られることには
慣らしておく必要があると考えます。
例えば、歯磨きする為であったり、
動物病院で注射をうつときに
犬の体を保定するためにマズルを
持つ為であったり。
獣医師に口の中を診察してもらう為にも
必要でしょう。
そのためにも、
”力でねじ伏せる”のではなく、
”犬が人を信頼して
身体をゆだねてくれる”
といった感覚のマズルコントロールを
目指すと良いのではないでしょうか。
そのようなマズルコントロールを
教えてくれるトレーナーも
たくさんいますのでご安心を。
(ちなみに私もそのような
マズルコントロールをご指導出来ますので、
よろしければお声かけをw)
長くなってしまいましたが、
マズルコントロールで
犬を叱ろうとすると、
場合によっては
犬が噛み付いてくる
可能性がある
ことを知っておいてくださいね。